シナリオモードで旅行“風”の
動画作品づくりに挑戦してみる
本機の機能面での目玉が「シナリオモード」である。これは、さまざまなシチュエーションに合わせた作品づくりをガイドしてくれる実にユニークなモードだ。
ビデオカメラを使った人なら一度は動画編集に挑戦したいと思うものだが、案外作業は面倒だし、事前の準備が足りずに撮影した映像のバラエティーが少なく、結局のところ同じようなシーンが延々と続く単調な作品になりがちだ。
これは、撮影する人が「その場で起こったおもしろい場面や出会った美しい風景などを撮ろう」と考える一方、事前に「どんなストーリーにするか」を考えておかないという準備不足に起因する。ただ、準備といっても状況説明のためのカットや、どんなシーンがあると楽しい作品になるか、といったコツやノウハウを初心者がすぐに思い付くものでもない。
そこで有効なのがシナリオモードである。液晶モニターの内側にある「シナリオモード」ボタンを押すと専用のメニューに切り替わるので、初めての場合は「新規作成」でこれから撮影を行なうシチュエーションに合ったシナリオを選択する。
シナリオには、旅行や子供の成長記録、学校行事のようなシチュエーションから、メッセージやブログ、自己紹介なども用意されており、それらのそれぞれにどんなシーンを撮影しておくといいかのリストが表示される。
そのリストには作品のストーリー順にシナリオシーンが並んでいるので、順番に該当する撮影を行なっていけばいい。今回は地元の街を散策しながら、旅行風の動画作品づくりに挑戦してみた。
シナリオから「旅行」を選んでシナリオシーンを見ていくと、まず最初に「タイトルを作ろう!」とある。案外忘れがちなのがタイトル用の動画。タイトル画面は、別にどんなものでも構わないのだが、タイトル用の画面と意識して撮影することで、不用意に画面を動かさないほうがいいだろうとか、文字を重ねるのだからあまりごちゃごちゃと被写体が入った写真よりも、パノラマ的な景色とか青空のような映像の方が使いやすいかも? といった想像力が働く。なんとなくではなく、目的を定めて撮影することがかなり重要といった基本を思い出す。
このほかに、「旅の仲間を紹介!」や「出発に向けての意気込みを一言」など、あると作品の彩りになるシナリオシーンがきちんと盛り込まれている。また、「移動中の風景あれこれ」、「現在地は? コメントや看板を撮ろう」など、状況を説明するためのシーン撮影のリストが入っており、他人に見せても状況がよくわかる作品に仕上がるようにできている。
実際のところ、すべてのシナリオシーンを埋め尽くす義務感にかられて窮屈な撮影をする必要はないし、それ以外のシーンを撮ってはいけないわけでもない。だが、撮影のための参考になるアイデアがたっぷり詰まっていることもあり、実際にシナリオモードで撮影しなくても、これらのシナリオを見ておくだけでいい作品づくりの参考になることは多いと感じた。
そして、シナリオシーンを選ぶと、液晶モニターは通常の撮影画面に切り替わるのだが、そこに適切なカットの秒数が表示されていることにも感心した。いずれも2秒から長くても8秒程度とかなり短いと感じる。だが、実際に楽しめる作品を作る場合はだらだらと同じシーンを撮り続けるよりも短いシーンをたくさん重ねる方がテンポは良くなる。このあたりも貴重なノウハウであり、撮影時間を意識することでムダのないカットになる効果もあるだろう。