今回採り上げるキヤノンの「iVIS HF M41」(実売価格7万5000円前後、関連記事)は、ミドルクラスながら、同社のプロ用ビデオカメラと同じ撮像素子「HD CMOS PRO」を採用する注目モデル。
その撮影画質も魅力ではあるが、撮る楽しみを広げるため、独自のアイデアを盛り込んできた部分も見逃せないポイント。最大の魅力は「シナリオモード」を始めとする、「作品づくりの楽しみ」を手軽に楽しめる数々の機能だ。
「HD CMOS PRO」はそんなにそんなにすごいのか!?
HD CMOS PROは同社の「XF305」(実売価格71万円前後)や「XF105」(同40万円前後)といった業務向けビデオカメラに採用されているセンサーだ。サイズは1/3型で、総画素数は約237万画素。動画、静止画とも有効約207万画素となる。
ちなみに、従来の「iVIS HF M32」は約389万画素の1/4型CMOSセンサーを採用し、有効画素数は動画で最大約299万画素、静止画で最大約331万画素となっていたので、センサーサイズは大きいが、解像度は逆に低くなっている。
しかし、動画撮影に関しては解像度が低いからと言って必ずしも画質が低下するわけではない。なぜかと言えば、動画の解像度はフルHDで1920×1080ドット、つまり約200万画素であり、基本的にはそれ以上の解像度を持つ撮像素子なら問題ない。
それでも解像度の高い撮像素子を用いるビデオカメラが多いのは、画像処理で解像感をアップするためであり、それはそれでひとつのアプローチである。
本機の場合は解像度を抑えることで画質を向上させるという、別のアプローチを取っている。解像度を抑える分、1画素あたりの受光サイズを従来モデル比で約2.6倍大きくし、その結果多くの光を受け取ることができる。
さらに、センサーを覆う膜構造を薄くすることで、画素に入る光の量を増やすといった工夫もしており、最低撮影照度約1.5ルクスという高感度を達成している。
これと「キヤノンHDビデオレンズ」の組み合わせで解像感の高いハイビジョン撮影を実現。キヤノンHDビデオレンズは開放F値が1.8と明るいことに加え、非球面レンズを採用することで球面収差を抑えている。6角形虹彩絞りも採用し、ぼけ味を生かした撮影にも対応している。
撮影サンプル
上の写真はフルHDの最高画質(MXPモード、24Mbps)で撮影した動画から静止画を抜き出したものだ(クリックでオリジナルサイズに拡大)。画質をチェックして見ると、精細感の高さに加え、色鮮やかでくっきりとした映像になっていることが分かる。プログラムオートでの撮影画質は、見た目のきれいさやくっきりとしたコントラスト感を重視した傾向となっているが、ギラギラと派手すぎる映像にならないのがいい。
サイズの大きい撮像素子の効果か、メリハリの効いたコントラストの高さがとても素直で、不自然さを感じないのだ。
驚いたのが夜景や低照度での撮影で、暗部のノイズが極めて少ない。夜景やろうそくの火を写すような映像はもちろんだが、案外明るさが不足しがちな室内での撮影でも、感度アップによるノイズが目立つようなことが少なく、明るさに関してはあまり気を使わなくても良好な撮影ができるのはありがたかった。