ついにGoogleマップで配信が決まる
チャンスは突然訪れた。地図サイト大手・マピオンが初年度のスポンサーに名乗りを上げた。決め手は、オフィスや施設内のトイレだ。
ゼンリンなど、いわゆる住宅地図では建物の中に入ったデータまでは取れない。それにハンディーキャップのある人たちの目線で調べたデータがあるというのは面白い。マピオンの担当者もこのアイデアに乗り気になり、協力してケータイサイトを作ることになった。
スポンサーを得た金子さんは、片っ端から自治体に連絡を取り、掲載する情報数を伸ばし続けた。1万件を超えたとき、モバイル系のソフトウェア会社・ACCESSから連絡が入った。「Windows Mobile用にウィジェットを出しませんか」と。
ウィジェットを出すことでサイトの認知度は上がった。だが、マピオンとの契約も切れてしまう。二年目もスポンサーになってもらうのは難しいだろう……そう感じていたある日、「データを買わいたい」という企業が見つかった。グーグルだ。
すぐに申し出を受けた金子さんは、データベースを2ヵ月かけてGoogleマップ用に作り直した。その数は実に2万5000件。作業は地獄のようだったが、やりがいはあった。2009年11月、ついにGoogleマップで、数ヵ月後にはナビタイムでも配信を開始した。
それにしてもなぜビジネスモデルが必要なのだろう。普通のNPO法人であれば、そこまでビジネスにこだわらずにやれるのではないか――金子さんの答えは明快だった。
「助成金を受け取っていなかったからです」
何度申請しても、審査は通らなかった。ITとは縁遠い福祉業界で、インターネットの地図サイトにデータを埋め込むAPI提供型サービスといった説明をしても、誰ひとり理解してくれなかった。それなら、ビジネスとして維持継続を考えられる道を作るしかない。
「だってこんなこと、副業しながら片手間でやるわけにはいかないでしょう?」
金子さんはそう話す。