2012年後半には大きなラインナップ変更が?
問題は登場時期である。連載79回3ページ目の最後のスライドでは、台湾TSMCおよび米GLOBALFOUNDRIESを使ってのAPUのロードマップが示されている。
28nm世代に関して、AMDはディスクリートGPUをTSMCに、APUをGLOBALFOUNDRIESで製造するという、もっぱらの噂である。どちらにしても量産に入るのは2012年中旬(スライドどおりなら第2四半期以降)で、製品が出てくるのは早くても2012年後半ということになる。したがってそこまでの1年半は、Zacate/Ontarioでなんとか賄わなければいけなくなるようだ。そうなると、2012年後半にモバイル向けCPUは、大きくラインナップ変更があるだろう、というのが筆者の予測である。
余談ながら、上のプロセスロードマップを見ると、32nmを唯一の例外として、あとは皆ハーフノードのプロセスばかりになっている。というよりも、最近はフルノード/ハーフノードがぐちゃぐちゃと混在している。本来ならプロセス縮小のロードマップは以下のようになるはずだった。
プロセス縮小の進化 右に行くほど微細化 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
フルノード | 90nm | 65nm | 45nm | 32nm | 22nm | 16nm |
ハーフノード | 80nm | 55nm | 40nm | 28nm | 20nm | 14nm |
CPUは伝統的にフルノードのみだが、GPUはこの両方を使ってきた。ところが、TSMCが32nmプロセスの立ち上げに失敗して中止し、28nmに注力したあたりからぐちゃぐちゃになってしまい、28nm以後はハーフノードのみがメインとなりつつある。ちなみにインテルは依然としてフルノードだし、GLOBALFOUNDRIESもCPU向けのSOIはフルノードである。
問題は22nmと16nmという、本来ならCPU向けに予定されていたプロセスでAPUを作るという話が、上のロードマップから消えていることだ。2012年のTrinityは、32nmプロセスを使うという話なので問題ない。しかし、Trinityの後継製品がどのプロセスになるのかが、非常に興味深い。Krishna/Wichitaの後継製品と同じく20nmを使うとすると、量産開始が2013年後半だから、かろうじて2013年の年末商戦に間に合うかどうかという時期になる。これではTrinityの発表から1年半も開いてしまい、ちょっと厳しい。あるいは28nmを使った、「次世代BulldozerベースのAPU」なんてものが登場してくるのかもしれない。
またも方針を変更する
AMDの組み込み向けプロセッサー
さて、最後に組み込み向けプロセッサーの今後についてまとめよう。AMDの組み込み向けプロセッサーについては、一言で言って「ころころ方針を変えすぎて商売になっていない」という状況である。シェアベースで言えば、もはやVIA Technologiesの方がはるかに大きいという状況で、会社規模の大小よりも方針を堅持することの方が、組み込み向けでは重要と言える。
さてその組み込み向けであるが、今回また方針を変えた。AMDは2003年に、米National Semiconductorから「Geode」シリーズを買収した(関連記事)。ところが途中で方針が変わり、Geodeの資産(とGeodeの顧客)をどんどん手放す方向で動いていたのだが、ついにGeodeの名前自体もやめるそうだ。
2011年からは、「AMD G-Series」「R-Series」という名称に変わる。話としては単純で、Llano/Zacate/Ontarioをベースとした組み込み向け製品を投入するということだ。これにともない、現在モバイル向けのTurion II/Athlon II/Sempronや、一部低消費電力タイプのOpteron、およびおそらくはGeodeシリーズ中唯一AMDで開発された「Geode LX」も含めて、すべて販売終了に向かうと思われる。
組み込み向けに一番大事なことは継続性であるということを、まだAMDは学習できていないようだ。
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