前回は、サーバー/デスクトップ向けCPUについて解説した。AMD最新ロードマップの3回目はモバイル向けCPUについて解説する。
Phenom? Turion? Athlon?
悩ましいモバイル向けハイエンドCPUのブランディング
11月に開催された「2010 AMD Financial Analyst Day」で示されたロードマップを見ると、モバイル向けCPUの方向性がわかってくる。
基本的にモバイル向けについては、パフォーマンスからタブレットまでの全セグメントにおいて、完全にFusion製品で固める方針となっている。もちろんPCベンダーによっては、ディスクリート(独立)GPUをオプションで提供するところもあるだろうが、こうした用途に向けた「APUを内蔵しない」ハイエンドCPU※1も、すべてをAPUに置き換える、という方針のようだ。
※1 現在販売中のモバイル向けCPUで言えば、「Phenom II X920 Black Edition」や「Phenom II X620 Black Edition」などが相当する。
これを置き換えるのは「Llano」コアだ。K10ベースの「Stars」コア2~4個に、DirectX 11世代のGPUを組み合わせた製品で、2011年後半には量産に入る予定になっている。となると、パフォーマンス~メインストリーム向けの製品、つまりPhenom IIとおそらくAthlon IIは、引き続き現在の製品ラインナップのまま、2011年前半を迎えることになる。
もっともAMDのモバイルの場合、Phenom IIとTurion II、Athlon IIのどれも、原則は同じコアである。デスクトップ向けの場合は、3次キャッシュの有無でPhenom IIとAthlon IIが分かれているが、モバイルではどちらも3次キャッシュは搭載されず、実のところコアの数(3コア以上は無条件でPhenom II)や動作周波数※2で分けているに過ぎない。それならば、今後も原則は変わらないと考えてもよさそうだ。
※2 デュアルコアで2.8GHzがPhenom II、2.3~2.6GHzがTurion II、それ以下がAthlon II。
ただし、CPUのブランディングは難しいことになるだろう。デスクトップ向けの場合、ほぼ同じ時期に新設計の「Bulldozer」コアが投入されるが、LlanoはまだStarsコアベースだ。もし、デスクトップ側がBulldozerコアを差別化する意味で「Phenom III」ブランドとし、Llanoに「Athlon III」ブランドを充てた場合、モバイル側でLlanoにPhenom IIIブランドを充てるのは難しいように思われる。
一番素直なのは、これにTurionブランドを持ってきて、「Turion III Quad-Core/Tri-Core/Dual-Core」とすることだ。しかし、すでにTurionは「Phenomの1段下」的な扱いになっているので、あるいはまったくの新ブランドを付ける可能性もないとは言えない。
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