DothanとMeromのつなぎで登場したYonah
しかし、Pentium Mにも性能改善のニーズは当然ある。ところが動作周波数を上げると消費電力が増える。そのため、Pentium Mもデュアルコアの方向に舵を切ることになった。それが2006年1月にリリースされた「Core Duo」(Yonah)である。
構造的にはPentium Mを2つ搭載し、2次キャッシュを共有構造にしたものになる。機能面ではVTのみ追加されたが、EM64Tに関しては次のCore 2まで見送りとなってしまった。このYonahを1コア構造※1にしたのが「Yonah-1P」で、「Core Solo」として発売される。当然これらをベースとしたLV/ULV製品もリリースされたほか、Celeron Mもリリースされた。
※1 1コアのみの新ダイを製造するか、同じダイで2コアの片側を無効化するかは揉めたようだ。すぐ後にCore 2が控えていることもあって、1コアと2コアの2種類のダイを製造する余力もなかったし、新規にダイを起こすコストに見合うほどのマーケットもないと判断されたようで、結局2コアダイの片方を殺す形になっている。
さらに、Core Duoをベースにした「Sossaman」コアがXeon向けに投入され、低消費電力が必要とされるブレードサーバーとかバリュー向けサーバーなどに利用された。
後から見ればCore Duoの投入は、「なんでこの時期に」という疑問が当然湧く。半年後の2006年7月にはCore 2 Duoが発表されたわけで、もう半年待てば一気に製品を入れ替えられたからだ。しかし、DothanからCore 2 Duoの「Merom」コア登場までは、2年余りの時間がかかっている。技術的には、まずデュアルコア化に加えて、大幅な内部構造の拡張(実行ユニットの拡張やEM64Tの対応、いくつかのパイプライン構造の変更など)が行なわれており、これを1年で済ますのは無理だったということになる。
ただそうなると、Pentium Mを使ったノートPCのメーカーには「2年間待て」ということになってしまい、これは当然反発を受けることになる。2006年1月というのはアメリカで家電の総合展示会「CES」が開催される時期であり、ここに各メーカーは新製品を投入したい。だから、これに間に合うように「何でもいいから新製品もってこい」という圧力がかかるのも当然だっただろう。
そこでインテルは、Meromのチームとは別に、Pentium Mの内部構造はそのままにしてデュアルコア化だけを行なった、いわばMeromの習作とでも言うべきYonahを先行してリリースする形で、ギャップを埋めたものと思われる。
Pentium M系列の最後の製品は、Dothan-512KベースのULV Celeron Mを、さらに低消費電力化した「Stealey」である。LPIA(Low Power IntelArchitecture)シリーズの先鞭をつけたこの製品は、動作時のTDPが3W、待機時は0.4Wと消費電力を低く抑えたものだが、中身はDothanそのものである。
また、アーキテクチャーそのものということであれば、「Tolapai」と呼ばれた通信向けSoCである「EP80579」とか、テレビ向けSOCの「Intel CE3100」がある。これらはいずれも90nmプロセスで製造されたが、Dothanコアがほぼそのまま流用されている。その意味では、Baniasのアーキテクチャーもなかなか長く使われ続けたことになる。
2000年~2006年にかけてのインテルのCPU動向を一口で言い表すと、「オレゴンのチームが開発したNetburst Architectureで傾きかけたインテルを、イスラエルチームのBanias/Dothanが救った」になるのではないかと思う。
今回のまとめ
・Pentium 4に使われていたNetburst Architectureは、発熱の大きさからモバイル向けには向かないことが以前からわかっていた。それを解決すべく開発されたのが、モバイル専用の「Pentium M」である。
・2003年3月に登場したPentium Mは、瞬く間にヒット商品となる。性能を強化した第2世代の「Dothan」も2004年に登場。モバイルから省スペースデスクトップまで幅広く採用される。
・さらなる性能向上のために、Dothanを1ダイでデュアルコア化した「Core Duo」が2006年1月に登場する。半年後にはアーキテクチャーを大きく改良した「Core 2 Duo」が登場するが、Core Duoはその間のリリーフとして投入された。
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