Android+シャープのこだわりで
「究極のウェブブラウズ体験」を
シャープが考える「Androidに足りないもの」は、なにもOS側だけの話ではない。むしろアプリケーションでできることも少なくない。そのひとつが「コンテンツマネージャ」というアプリだ。
本田「多くのスマートフォンは『アプリ』からの誘導ですが、ほとんどの携帯電話はそうではありません。写真や動画などが『データフォルダ』に入っていて、そこからデータを選んで使う、という形式を採っています」
「コンテンツマネージャはこのような使い勝手を実現するものです。Android上の既存技術を組み合わせて実現しているのですが、本体内にある写真やPDF、動画などをまとめてみせて、データフォルダ的な使い勝手を実現しました」
「今後8~9月に予定しているLISMOや携帯メールへの対応についても、携帯電話ユーザーが満足する形で実現させていきたいと考えています」
また、同様にシャープがこだわったのが「フォント」だ。同社は液晶パネル上での表示が美しくなる独自の「LCフォント」を携帯電話などで利用しているが、IS01ではそれに加え、モリサワの新ゴシックを搭載した。
本田「『究極のウェブブラウズ体験』をしていただきたい、という狙いからフォントを追加しました。LCフォントには使い慣れた安心感がありますし、モリサワフォントは本当に美しい。フォントを選んで使っていただけるよう、設定項目も追加しています」
「ほとんどないとは思うのですが、万がいちAndroidの標準フォントと異なることで動作上の問題が出た場合にも、標準フォントに変更できます」
確かに独自にフォントを用意した結果、IS01の表示はかなり美しい。表示の美しさではiPhone 4も評判だが、あちらも美しさの秘密は「液晶パネル+表示用ソフトウエア+フォント」の力にある。IS01もそれらの3要素を持ち合わせているので、ブラウズ体験はかなり快適なものになっている。ウェブブラウザーを重視して選んでも満足できるだろう。
本田「直感的に操作していただくために、トラックボールも搭載しました。考えられるさまざまなデバイスはテストしているのですが、やはりトラックボールが最もいいだろうと。単に搭載しただけでは、ボールをクリックした際に、ポイントがずれてしまいやすいので、細かく調整して違和感が出ないようにしています」
IS01はマルチタッチを搭載しない「Android 1.6」ベースで開発されているが、マルチタッチを独自に実装しており、操作感もいい。通常の操作はタッチ、片手操作にはトラックボール、というのがお勧めだ。
気になるAndroidのアップデート対応は?
最後に気になる点を聞いてみた。それは「OSのアップグレード」だ。Androidは開発速度が速く、すでに最新OSである「2.2」(開発コードネーム「Froyo」、フローズンヨーグルトの意味)も発表されている。IS01はFroyoに対応するのだろうか?
本田「我々としても、第1号機を作ってみて『何をやり、何はやらない方がいいのか』がわかってきました。現状では、急速にキャッチアップするためにどのようにすればいいのか、戦略を立てているところ、としかご返答できません。Froyoはものすごくインパクトがあるものなので、どう対応するかも企業戦略の一環になると思っています」
「ただIS01については、元々Androidありきでスタートした製品ではないので、それ以上に『体験』が重要だと考えています」
IS01はキーボード内蔵の携帯端末として、過去の名機と比較してもかなり高いレベルにあると感じる。もちろん画面の縦横比の違いもあるので、既存のスマートフォン向けAndroid用アプリがすべて動くわけではない。Windows PCほどの汎用性は元々ないのだ。しかし、ブラウズ体験と入力の快適さでは、同価格帯・同サイズ帯のライバルより上と言っていい。
シャープによる改善点も、決して「無駄」とは思えない。問題は「アプリ」だが、こちらは今後改善する可能性も高い。特に、日本でのテキスト作成やネット利用の形態など、「日本でのルール」に合わせたアプリの登場に期待したい。この点は、ライバルであるiPhoneなどでもまだまだ足りないところだ。
Androidと日本らしいこだわりの両立は、今後も難しい課題となるだろう。だがそれがない限り、スピード感を武器にする海外メーカーと戦えない。IS01は少なくとも、「今」は戦える商品になっている。そう筆者は思うのだが。
IS01 の主な仕様 | |
---|---|
ディスプレー | 5型ワイド 960×480ドット |
無線通信機能 | CDMA 1X EV-DO Rev.A(CDMA 1X WIN)、IEEE 802.11b/g、Bluetooth 2.1 |
インターフェース | microSD/SDHCメモリーカードスロット、microUSB 平型イヤホンなど |
サイズ | 幅149×奥行き83×高さ17.9~20mm |
質量 | 約227g |
バッテリー駆動時間 | 連続待受時間 約200時間 |
OS | AndroidOS 1.6 |
筆者紹介─西田 宗千佳
1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)、「クラウド・コンピューティング仕事術」「iPhone仕事術!」(朝日新聞出版)、「iPad vs.キンドル」(エンターブレイン)。
この連載の記事
-
第116回
PC
「VAIO Duo 13」—革新は形だけじゃない! 変形ハイエンドモバイルに込めた思い -
第115回
PC
ソニーの本気—Haswell世代でVAIOはどう変わったか? -
第114回
PC
渾身の「dynabook KIRA V832」はどう生まれたのか? -
第113回
PC
HPの合体タブレット「ENVY x2」は、大容量プロモデルで真価を発揮! -
第112回
PC
ソニー“3度目の正直”、「Xperia Tablet Z」の完成度を探る -
第111回
PC
15インチでモバイル! 「LaVie X」の薄さに秘められた魅力 -
第110回
PC
フルHD版「XPS 13」はお買い得ウルトラブック!? -
第109回
デジタル
ThinkPad Tablet 2は「Windows 8タブレット」の決定打か? -
第108回
デジタル
今後のPCは?成長市場はどこ? レノボ2013年の戦略を聞く -
第107回
PC
Windows 8とiPadがもたらす変化 2012年のモバイルPC総集編 -
第106回
PC
Clover Trailの実力は? Windows 8版ARROWS Tabをチェック - この連載の一覧へ