脳の相転移はコンピュータの進化に相似!?
これって、コンピュータ業界に少し長い人なら、なんとなく連想することがあると思います。コンピュータは、1940年代には、ネットワークというものはなく、1台で動いていました(スタンドアローン)。ですが、コンピュータのハードもソフトも進化していって、巨大化していきます。やがて、テレコミュニケーション技術が生まれ、ホストコンピュータに端末がぶらさがるようになりました。
銀行システムでいえば、本社にメインフレームの大型機がドンとあり、それに支社のシステムがぶら下がるという、きれいな中央コントロール構造になっていました。もちろん、後にインターネットに発展するUNIXのネットワークなどはありましたし、1980年代にも公衆パケット網なんかがありました。しかし、世の中全体では、情報システムというのは中央コントロール的に管理するという考えが一般的だったのです(いまもそうだというべきなのですが)。
ところが、1990年代にかけて、世界中でパソコンやワークステーションが、毎年何千万台と作られていくようになりました。そして、IP(インターネットプロトコル)がそれらをつないでいって、ついには中央コントロール的な世界を脱するかもしれないというようなところまで来ています。人間の脳の中で大脳皮質が起こした革命(相転移)のようなことが、あってもおかしくないと思います。
それが、いまのネットなのでしょうか? あるいは、いまのネットは相転移のギリギリのところまでは来ているけれど、まだ起きていないのでしょうか(記事ではこっちだろうという話でした)。
『プラニバース』(A・K・デュードニー著、工作舎刊)という本があります。二次元宇宙があったらこんなふうに動いているだろうと、ビジュアルも使ってあれこれ考察した本です。その二次元宇宙に住んでいる二次元生物には、三次元の世界で起きていることがわかりません。三次元という概念すらも理解できないでしょう。BASIC言語の世界にいては、FlashのAction Scriptの世界はわからないみたいなお話でもあります。
■Amazon.co.jpで購入
プラニバース―二次元生物との遭遇A.K. デュードニー(著)工作舎
つまり、もし仮にネットですでに相転移が起きているのだとしても、二次元生物のように、相転移のこちら側にいるわたしたちには、それをうかがい知ることはできないのではないでしょうか。動物が人間になったようなことが起きていたとしても、わたしたちにはわからないのです。
我々の想像もつかないところで、インターネットに想念のようなものが生まれていたりするのかもしれません。
脳の進化とコンピュータの進化が、少しばかり似ていると思うわけです。ならば、コンピュータの世界で相転移が起こることだってあるだろうというお話です。このほかにも、ザリガニの脳を2つつないで新しい計算理論を求めようという話とか、ヒューマノイド型ロボットを作ることが実は重大な意味を持っていることなど、興味深いお話をいくつもお聞きしています。週刊アスキー増刊『別冊アスキー ウィンドウズ7 今日から使います!』、ぜひ『複雑な脳、単純な「私」』もあわせてご覧アレ。
■Amazon.co.jpで購入
単純な脳、複雑な「私」池谷裕二(著)朝日出版社
週刊アスキー増刊 別冊アスキー ウィンドウズ7今日から使います! 2010年 3/9号 [雑誌]アスキー・メディアワークス