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林信行が語る「2010 知っておくべき10のトレンド」【中編】

2010年01月20日 18時30分更新

文● 林信行

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6位 拡張現実

 2009年は、「セカイカメラ」(関連記事iTS)などに代表される拡張現実系アプリ(ARアプリ)が一世を風靡した。この分野は日本が進んでおり、東急が開発した渋谷の街限定の「pin@clip」(ピナクリ、iTS)といった面白い試みも始まっている。

 さまざまな位置情報付きデータを選んで表示できる「Layar」(関連記事)を使えば、例えば街中の建築情報や美容サロンの検索などもできてしまう。

iPhoneアプリの「セカイカメラ」。セカイカメラを起動してiPhoneの画面をのぞくと、カメラで撮影した現実世界の上に「エアタグ」と呼ばれるタグ情報が表示される

 今年はそんな拡張現実アプリのバリエーションが広がって、さまざまなショップやイベント会場で利用されるようになるだろう。

三井アウトレットパーク仙台港で使われたiPhoheアプリの画面

 実際、昨年も「三井アウトレットパーク仙台港」における店舗案内や「相田みつを美術館」での企画展の誘導にiPhoneと拡張現実アプリが使われている。現在の拡張現実アプリは、カメラを通して見渡すシースルー型が多いが、両施設で使われたアプリは、位置情報を検出して、現在地に関する情報を好きな姿勢で読むことができるというものだった。

 カメラを使った拡張現実系アプリにしても、リアルタイムで情報を重ねるのではなく、その場所に情報を残して、後から来た人が、その場所に残された情報を捕まえられるようにする「Memory Tree」(iTS)型のアプローチもある。

 MemoryTreeは撮影した写真を、思い出として撮影したその場所に残しておく、というコンセプトのアプリだ。それに近い、特定の場所に書き置きを公開して残せる「BlockChalk」(iTS)というアプリも出ていて、米国で注目を集めている。

MemoryTree

MemoryTree。価格は無料

BlockChalk

BlockChalk。価格は無料

 この他、商品を撮影して認識させて詳細情報を表示する、といったアプリも登場してくるだろう。カメラに写ったQRコードのようなコードを認識し、その上に仮想の3Dオブジェクトを重ね合わせ表示する「In-Place AR」と呼ばれる技術も、もっと積極的に使われるようになるかも知れない。その開発に必要な「ARtoolkit」というライブラリーも、すでにiPhoneに対応している。

 もちろん、より確実な方法として、バーコードスキャンのような手段で、商品の詳細情報を獲得するアプリも増えてくるはずだ。


ゲームの新ジャンル「ARG」

 拡張現実が注目されるのは、ビジネスへの利用だけではない。最近、リアル空間をうまく絡めた拡張現実ゲーム(ARG)も急速に増えつつある。

 わかりやすい事例は、iPhoneアプリの「Parallel Kingdom」(iTS)や「DragonSword」(iTS)だ。

 これらはGPSで現在地を測位してGoogle Mapとして表示し、画面に映っている範囲でコインを集めたり、敵を倒したり、陣地を構えたりするというゲームだ。もし、他の場所にいるドラゴンを倒したり、ほかの場所に陣地を広げるには、実際に歩くか、乗り物に乗るなりして、現実世界でも移動しないといけない。

Parallel Kingdom

Parallel Kingdom。価格は無料

DragonSword

DragonSword。価格は115円

 実はこうしたARGをもう少しライトにしたアプリが、米国で流行の兆しを見せている。

 注目株は「FourSquare」だ(iTS)。「Gowalla」(iTS)や「Rummble」(iTS)といったライバルアプリもあるが、昨年末135万ドルの投資を受けて、国際展開を強めたFourSquareが一歩リードしている。

 「FourSquare」は、どこかのレストランやお店、駅などを通る度に、その場所にチェックインをするというアプリだ。チェックインした際に、「どこそこに来た」ということを自動でTwitterにつぶやくこともできる。

 訪問回数が多いと、その場所の市長に格上げされたり、よくいろいろな場所を訪問していると冒険家のバッジがもらえたりする。「今度、〜〜に行って、◯◯をしたい」といった要望をTo Doリストとして書いておき、達成するとポイントがもらえる、といった内容だ。ゲーム性は低いが、現実の活動とリンクをしているために、友達との位置情報交換が楽しくなる、といった効果も期待できる。

FourSquare

FourSquare

Gowalla

Gowalla

Rummble

Rummble


Androidが現実拡張アプリを加速させる?

 拡張現実関係でもうひとつ知っておきたい動きは、今年に入ってから急速に端末が増えそうなAndroidだ。AndroidはiPhoneと異なり、ほかのアプリを利用していてもバックグラウンドで別のプログラムを実行可能だ。これにより、拡張現実アプリを起動していなくても、何か重要な情報がある場所に近づくとそれを教えてくれるというアプリも使いやすくなる。

 7位のWi-Fiでも触れたParrot AR.Droneも、その名が示す通り拡張現実系の技術と言えるだろう。ヘリコプターに搭載されたカメラの映像をiPhoneから確認することもできる。実は同様のことは日本でもベンチャー企業の「JokerRacer」がラジコンカーで行なっている。このようなアプリも、広義での拡張現実には含まれていくだろう。

JokerRacer



 iPhone登場前は、SecondLifeなどメタバース型の机でパソコンに向かいながら、現実世界と切り離された仮想現実の世界に人々が入り込んでいくようなソフトが盛んに開発されてきた。

 しかし、iPhoneやAndroidといった、ポケットから取り出せるインターネット常時接続コンピューターが登場したことで、「拡張現実」という、より現実の世界や社会との関わりが深いITの利用が急拡大している。

 2010年は、こうしたさまざまなオプションの中から、どういったシチュエーションにどの拡張現実が合っているのかを見極めた上で盛り上げていくことが大事になりそうだ。同時に、今はバラバラに開発しているこれらの技術について、何らかの形で連携を取るための議論を始めるべきだろう。

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