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20代は相手にしない――激安ピアス店の1人勝ち戦略 (2/2)

2010年01月19日 11時00分更新

文●三浦たまみ

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商品写真や包装にもオトナのこだわり

 商品撮影時も、ピアスの背景に上質な布などを敷くなどして、落ち着いた雰囲気を演出するように工夫しています。もうひとつ、30代の女性に向けて片岡さんがこだわったのは、ピアス1つひとつに英文字で名前をつけること。次の商品を見てください。

商品写真

Snow Flake

Scale


 SnowFlakeは雪、Scaleは鱗という意味ですが、

「Snowをスノウ、Scaleをウロコなどとカタカナ表記したら、安っぽいイメージになっちゃうと思ったんですよね。30代の女性に向けてネーミングをつけるわけですから、英文字にした方が上品さが際立つと思いました。ただし、長いのは禁物。なるべく短く、分かりやすい単語をつけるように心がけています」

 また、商品を送付する際は以下のような袋に入れて発送しています。

「白い紙を台紙として敷き、店名ロゴシールを貼っただけのものですが、ただビニールの袋に入れるよりも上品さはグンと増します。安かろう悪かろうではなく、店主が気持ちを込めてデザインして制作しているんだということも一緒に伝えることができれば、と思っているんです」

 こうして販売する3ペア1000円のピアスは、片岡さんの予想通り30代前後の女性に好評、売上もグンと伸びました。「安くても、質がいい」と感じられる商品アピールで、着実にリピーター増加にも結びついています。次回は、新規顧客獲得対策やリピーターを逃さぬ対策についてお伝えしましょう。


――ネットショップのエキスパートが斬る!――

株式会社ドリームエナジーコンサルティング代表の水上浩一さんに、「安さ」をポイントにショップ展開をしていく際のポイント、特に客単価をアップするためのコツについてお話を伺いました。



ターゲット絞り込みで販売戦略が広がる!

 ネットショップを経営する中で、「コンセプト決め」とターゲット設定は非常に重要な要素です。コンセプト決めとは、何をウリにしていくべきかを明確にすること。片岡さんの場合、価格で勝負しなくとも、デザイン性に優れた部分、キャリアが長い部分など、アピールポイントはたくさんあります。こうしたポイントを明確にし、いかに前面に打ち出していくべきか考えていくことを指します。

 一方、ターゲット設定とは、その名の通りアピールすべき年代を確定していくことを意味します。片岡さんの場合、「30代の女性で子供のいる主婦」をターゲットにし、さまざまな工夫をしていますが、それでもまだ弱い部分があると思います。

 というのも、漠然と「30代」と一言で言っても、30歳と39歳では、女性の価値観はまったく異なってくるからです。20歳と29歳も違ってきますが、30歳と39歳では、もっと変わると言っていいでしょう。こうした層をひとくくりにしてしまっている問題はあるかと思います。

 また、仮に世帯所得が比較的高い家庭の主婦であれば、商品を選ぶ際に3ペア1000円という価格の安さではなく、自分自身の価値観を基準にして選ぶはず。その意味でも、細かなペルソナの設定は必要になります。片岡さんのショップを例にしたペルソナなら、「31歳、子供が1人、家の近くのカフェでランチタイムだけアルバイトをしている、世帯年収○○万円、自分のお金は少しは使えるが家計をしっかりとやりくりしないといけない主婦……」などが考えられます。このように、できる限り細かく設定すれば、メルマガを発行するにしても、商品紹介以外に、「お母さんの耳より情報」「賢い節約術」「あまりものをおいしい御馳走に変えるレシピ」など、ターゲットを引きつける、よりピンポイントな情報を打ち出すことができます。

 また、サイト上でも、30代前半の女性がピアスを身につけている写真、30代前半の女性にピアスをプレゼントしている写真など、ターゲットと同世代のモデルを登場させ、より購買意欲を高める演出も随所で見せることができるはずです。


「顔のみえる」店づくりで信頼感アップ

 ところで、安っぽく見せないように包装などでも上品に見える工夫をしているという片岡さんですが、欲を言えばサイト上でも、その状態の写真などは積極的に見せていくべきです。安いけど、丁寧なモノ作りをしていることが顧客に伝われば、より信頼感を増すことにつながるからです。

 信頼感を増すという意味では、サイト上に店主の写真を掲載する、というのも大事なポイントです。特にハンドメイドのショップでは、店主の写真を掲載しないというお店が多く、その理由のほとんどが「自分の顔を出すのは抵抗がある」「恥ずかしい」というものなのですが、それは大きな誤り。自分の顔を載せないということは、例えは悪いですが、顔が見えない、パチンコの景品交換所と一緒になってしまうんですよ。実店舗で覆面して営業ができないのと同様、ネットショップも店主の顔はしっかりと出して営業する。それは、商売をやる以上、必須のことだと思います。


水上 浩一株式会社ドリームエナジーコンサルティング代表取締役・戦略的eコマース導入コンサルタント。 1964年8月5日 東京生まれ、神奈川鎌倉育ち。オープン80日で月商1100万円等、ジャンルを問わず短期間で劇的なネットショップの売上アップ実績多数、大手企業から地域活性化まで「戦略的eコマース導入→成果」を得意とする他、複数のIT系上場企業にて人材育成研修を担当、CS向上と業績向上を実現。2005年3月よりオールアバウト「IT業界トレンドウォッチ」ガイドとして数多くの著名人、経営者にインタビューを行う他、テレビ・ラジオ・雑誌等各種メディアや全国各地での講演・セミナーなどで積極的に情報発信している。


協力:佐川フィナンシャル株式会社(http://www.sagawa-fin.co.jp/

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