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賢い企業PCの選び方

Vostro V13はスマッシュヒット、SMBに注力するデル (1/3)

2010年01月21日 09時00分更新

文● ASCII.jp編集部、写真●篠原孝志、曾根田 元

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景気が悪いから経費は削減、投資も控える。そんな短絡的な思考では、目の前にあるビジネスのチャンスをみすみす棒に振ることにもなりかねない。IT投資は守りであり、攻撃だ。うまく使えば、事業の効率化にも生産性の向上にも大きく寄与する。ここでは、デルの事例を中心に、主にSMB市場でのIT投資の勘所をPC・サーバーの両面から捉える。賢いIT投資と製品リプレースの方法は何だろうか?(全3回)

デルのSMB向けノートPC、Vostroシリーズに昨年末加わった「Vostro V13」。薄型のスタイリッシュなフォルムにULVを搭載。5万円前後の高いコストパフォーマンスを誇る

 デルのビジネスノートを知る上で、まず最初に注目したいポイントに「Latitude」「Vostro」という2つのラインアップが用意されている点が挙げられる。

 多くのPCメーカーが、企業向けと個人向けのブランドを分け、異なるチャネルで販売をしている。例えば、直販サイトでは法人向けと個人向けの入り口が異なるのが普通だし、仕様も区別されている。しかし、デルはさらに法人を大企業向け(従業員500人以上)と中堅・中小企業向け(SMB:従業員499名以下)に分け、異なるブランドの製品を投入しているのだ。

 特に、SMB市場向けに独自のブランドVostroを展開している点は異色だ。個人向けの製品(または企業向けのローエンド機)でフォローするメーカーが多い中、同社がSMB市場を重視し、積極的に働きかけていることがうかがえる。

 ともすれば、Latitudeはビジネスノートの上級機、Vostroはエントリー機という切り分けで見られがちだが、実際はそうではない。そこに異なるニーズがあると、デルは認識しているのである。ここでは「総所有コスト」をキーワードに、効率的なビジネスノートの導入方法について考えていこう。


初期導入コストと総所有コスト

 「PCを導入するためのコスト」と聞いて、多くの読者が最初に思い浮かべるのは、ハードウェアの購入金額だろう。

 確かにそれは間違いではないが、それだけではない。企業がPCを導入し、管理・運用していくためには、こういった目に見えるコストとは別に、目に見えにくいコストも発生している。

【PC導入のライフサイクル】企業においては、ハードウェアを購入すれば、それで終わりというわけではない。導入からリプレースまでを考慮に入れた計画が必要だ

 例えば、「導入したPCがうまく使えない」「故障してしまった」など、運用管理に関わるトラブルが発生すれば、サポートのために会社の情報システム部門が動く。そこには人件費という見えないコストが発生する。

 また、新品で導入したPCでも一定期間が経てば、必ずリプレースの時期が訪れる。使い終えたPCのデータは確実に消去し、決められた方法で廃棄しなければならない。エコが叫ばれる昨今、廃棄にも相応の配慮と経費が必要である。そのためのコストも当然考慮に入れなければならない。

 分かりやすい「初期導入コスト」に加え、運用・管理・廃棄(リプレース)のためのさまざまなコストが積み重なって、PCの総所有コストが決まる。効率的な投資を行うためには、その全体像(ライフサイクル)を把握し、具体的な対策を取ることが必要だ。総所有コストは、Total Cost of Ownershipの訳語で、TCOなどとも略される。


同じようで違う、企業向けPC

 TCOを効率化していくためのアプローチは大企業とSMBでは異なるというのがデルの主張だ。話を分かりやすくするため、1000台のPCを所有する大企業が4年に1度の頻度でリプレースするケースを考えてみよう。

 4年に1度のリプレースと言っても、従業員全員のPCを短期間で1度に入れ替えることはまずない。1000台のPCを一度に買うにはそれこそ億単位の予算が必要だし、仮にその予算が捻出できたとしても、購入した機材を一度に搬入し、日常の業務を止めずに設置/設定することは非常に困難だ。新規導入したPCすべてが不良なく動くことは考えにくいし、環境が変わったことによる問い合わせが殺到することも考えられる。これでは情報システム担当者の手がいくらあっても足りない。

【台数が増えればさまざまな問題が】多くのPCが稼働する大企業では、さまざまな課題が発生する。問題解決ができるPCのラインアップが用意されていることが求められる

 大企業では段階を追ってPCを入れ替えていくのが通常だ。1000台を4年スパンでリプレースするなら毎年250台ずつ。きちんと計画を立てて入れ替えていく。

 コンプライアンスの強化が叫ばれる昨今では、セキュリティー対策の実施も徹底されている。従業員が利用するPCのソフトウェアも厳しく管理される。サポートや教育の負荷を低減するためにも、社内のPC環境はできるだけ統一されていなければならない。これもTCOの効率化に直結するポイントとなる。

 ここで重要になってくるのが、クライアントPCのモデルチェンジがどのぐらいの頻度で行われるかだ。なるべく長期に渡ってラインアップが維持されるのが望ましい。個人向け製品のように3ヵ月ごとに、ハードウェアや操作感が変わってしまうのでは、サポート担当者がその都度、調査と学習を続けなければならず管理にムダが生じる。

 企業向けPCは、個人向けPCに比べてコンサバな仕様になっているケースが多いが、その背景にはこういった事情がある。これ以外にも、セキュリティー機能や安定性を重視したパーツ選定、廃棄のしやすさといった要素も管理負荷の低減にとって重要だ。

 大企業においては、決められた事業を止めずに継続していくことも重視されるので、最先端のスペックを備えた高性能なPCよりも、しっかりとした導入計画を立てられたほうが何かと都合がいい。明確なロードマップが提示されているか、長期間に渡って使えるかが重要になる。

【SMBと大企業の異なるニーズ】企業規模が異なれば、PCの導入数はもちろん、IT投資の目的も異なる

 それでは、1/10あるいは1/100の規模のPCが動作する中堅・中小企業ではどうだろうか? 稼働するPCの数は一気に減り、管理負荷も減る。情報システムの担当者も専任ではおかず、通常業務と兼任させたり、そもそも存在しないケースもあるだろう。PCの管理はユーザーに任せる、あるいは最小限しかできないといった企業も出てくるはずだ。

 PC導入の動機についても、管理運用面の利便性よりも、個人の生産性をいかに高められるかが重視されるはずだ。本業のビジネスに対する投資を圧迫しては本末転倒なので、初期導入コストは絞りたいが、成長途上にある企業であれば、従業員数の増加やビジネスの成長に応じて、適時機材を買い足す形になるだろう。

 自然と予算の許す範囲内で、性能の高いPCを必要なときに必要なだけ買い足すという購買形態が主流になる。求めるハードウェアも必要なスペックは持ちつつもシンプルでムダを省いたミニマムな構成となる。長期の運用よりは、初期導入コストを最低限に抑えつつ、短いスパンで買い換えていったほうが、TCOの観点でも有効に働くケースが多い。いわばビジネスのスピード感を生かすハードウェアが求められるはずだ。

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