オーバークロック特集もいよいよ今回で最終回となる。今回は、ビデオカードのオーバークロックについて解説することにしたい。ビデオカードは、PCのグラフィック性能を左右する重要なパーツだが、比較的簡単にオーバークロックが可能で、その効果も大きい。
コアクロックとメモリクロック、シェーダクロックとは?
ビデオカードには、GPUとビデオメモリが実装されており、GPUがCPUから描画命令を受けとり、それに応じてGPUがビデオメモリからテクスチャデータなどを読み出して、3D描画に必要な演算処理を行ない、その結果をビデオメモリに出力することで、画像を出力する。最近のGPUは、描画だけでなく、動画のエンコードやデコードなどの処理も行なえるように設計されており、浮動小数点演算性能はCPUよりも遙かに高い。
ビデオカードをオーバークロックするには、GPUやメモリのクロックを上げればいいわけだ。通常、GPUのクロックはコアクロックと呼ばれている。GPUの場合、ベースクロックという概念はなく、コアクロックとメモリクロックは独立して設定できる。
GPU内部には、シェーダと呼ばれる演算ユニットがあり、頂点情報の制御やテクスチャの貼り付けなどを行なっている。NVIDIA製GPUでは、シェーダ以外の固定回路の動作クロック(コアクロック)と、シェーダの動作クロック(シェーダクロック)が独立していることが特徴で、コアクロックよりもシェーダクロックのほうが2倍以上高い。それに対して、AMD製GPUでは、シェーダクロックとコアクロックは同じである。
つまり、NVIDIA製GPU搭載ビデオカードの場合、コアクロック、メモリクロック、シェーダクロックという3種類のクロックが存在し、それぞれがオーバークロックの対象となるわけだ(AMD製GPU搭載ビデオカードでは、コアクロックとメモリクロックのみ)。
オーバークロックモデルとは?
ビデオカードは、各社から非常に多くの製品が発売されているが、その中には、オーバークロックモデルと呼ばれる製品がある。通常、GPUは、GPUメーカーによって、定格コアクロックやメモリクロック、シェーダクロックが規定されているが、CPUと同様に、GPUにはマージンがあるため、定格よりも多少クロックを上げても動作することが多い。そこで、ビデオカードベンダーの中には、通常モデルとは別に、コアクロックやメモリクロック、シェーダクロックを定格よりも上げたオーバークロックモデルをリリースしているところがある。
オーバークロックモデルでは、安定性を高めるために冷却機構を強化したり、高速なメモリチップを採用しているものも多い。通常モデルを手動でオーバークロックした場合、当然グラフィックカードベンダーの保証外となるが、オーバークロックモデルは、そのクロックでの動作が保証されているので安心だ。また、オーバークロックモデルでは、ビデオカード上のビデオBIOSに動作クロックに関する情報が格納されているため、電源オンの状態から、常にオーバークロック状態で動作する。それに対し、通常モデルをオーバークロックした場合は、Windows起動後にオーバークロックユーティリティが有効になってから、クロックが上がるという違いがある。
なお、オーバークロックモデルとは逆に、定格クロックよりもコアクロックやメモリクロックが低く設定されている製品もあるので、注意が必要だ。
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