前回は、オーバークロックとは何か、オーバークロックの基礎知識について解説したが、今回からは、最新パーツを用いて、オーバークロックを実際に試していくことにしたい。まずは、Intelの最新CPU「Core i5」のオーバークロックについて解説したい。なお、ここで説明していることは、基本的にはLGA1156版のCore i7でも同じだ。
※オーバークロックはメーカー保証の対象外となります。試される場合は自己責任にてお願いします。 レビューに掲載されている内容で作業を行なって、万一故障した場合でも当方は一切責任を負いかねます。
Core i5/i7のオーバークロックのポイント
LGA1156版のCore i5/i7は、開発コードネームLynnfieldと呼ばれていた最新CPUであり、従来のCore2シリーズに代わる、メインストリーム向けの製品だ。Core i5/i7ともにクアッドコアCPUであるが、Core i7ではHyper-Threadingテクノロジーが有効になっているので、OS上からは8コアとして認識される(Core i5はそのままクアッドコア)。Core i5/i7は、Core2シリーズとは、アーキテクチャが大きく変わっており、メモリコントローラを内蔵していることが特徴だ。そのため、チップセットとのやりとりの仕方が変わり、FSBという概念はなくなったが、外部から供給されるベースクロック(BCLKと表記される)を内部で何倍かに逓倍し、CPUクロックにしていることには変わりはない。
ただし、Core i5/i7の中身は、演算ユニットであるコア部分と、それ以外(メモリコントローラなど)のアンコア部分に大別できる。そのため、CPUに供給する電圧も従来は1種類であったが、Core i5/i7ではコア部分に供給するVcoreとアンコア部分に供給するQPI Voltage(QPI V)の2種類が存在し、それぞれ独立して電圧を変更できる。今回の特集では、初心者向けということもあり、供給電圧を定格以上にする喝入れは基本的に行なわないが、電圧を上げてより高いクロックでの動作に挑戦する場合は、VcoreだけでなくQPI Vも高めてやると、安定性が高まる。
クロック倍率も、従来からのコア部分だけでなく、アンコア部分にも設定されている。コア部分の倍率は従来のCPUでいうクロック倍率であり、Core i5/i7では倍率がロックされていないため、クロック倍率変更によるオーバークロックも可能だ。ただし、Core i5/i7には、CPU負荷が高く、TDPや温度に余裕がある場合、自動的にクロック倍率を上げてCPUクロックを高めるTurbo Boostテクノロジと、反対にCPU負荷が低いときに自動的にクロック倍率を下げて、消費電力と発熱を抑えるSpeedStepテクノロジが実装されている。Turbo BoostやSpeedStepをBIOS設定で無効にすれば、クロック倍率が固定されるが、消費電力を抑えつつ、性能をフルに発揮するには、Turbo BoostとSpeedStepは有効にしておくことが望ましい。Turbo Boostを無効にしたほうがベースクロックを高くできるが、実際のパフォーマンスは、ベースクロックを下げてもTurbo Boostを有効にしたほうが高くなる可能性もある。そのあたりは、実際に試してパフォーマンスが高くなるほうを選ぶべきであろう。また、Core i7では、1つのコアで2スレッドを同時に実行するHyper-Threadingテクノロジが実装されているが、こちらも有効にしておいたほうが、マルチスレッド対応アプリケーションのパフォーマンスは向上することが多い。
アンコア部分については、QPI Link倍率とアンコア倍率の2種類の倍率が存在し、前者は内部のメモリコントローラとの通信を行うバス(QPI)の動作速度を、後者はメモリコントローラやL3キャッシュの動作速度を決める。
このように、Core i5/i7では、変更可能な動作電圧やクロック倍率の種類が増えており、かなりややこしくなっているのだが、初めてオーバークロックに挑戦する人は、供給電圧やクロック倍率は変更せず、ベースクロックのみを変更することをお勧めする。ベースクロックのみの変更なら、CPUを壊してしまう可能性は低いからだ。
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