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塩田紳二の3年戦える「ビジネスPC」選び 第5回

究極モバイルを追求した「VersaPro J UltraLite タイプVS」

2009年12月11日 13時00分更新

文● 塩田紳二

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スタートはアンオフィシャル!?

―― そもそもこの製品の企画は、どのように始まったのでしょう?

臼井裕司氏

NECパーソナルプロダクツのPC事業本部商品企画本部コマーシャルPC商品部マネージャーの臼井裕司氏

臼井 「UltraLite」シリーズは、軽量でモバイル性を指向したノートPCですが、特にこの製品は軽量、長時間駆動、堅牢性といったことを特徴としています。

 ご存じの通りこの機種は、NECのホームサーバー・クライアントソリューション「Lui」で使われている“PCリモーターノートタイプ”「Lui RN」の筐体を利用しています。こちらはOSにWindows CEを使い、CPUもPC(本製品)とは違ったものです。Lui RNはそもそもPCではないため、小さなマザーボードを入れることを前提として作られたシステムですが、結果的に軽さをぎりぎりまで追求したマシンになっています。

 実は、「この筐体にPCのマザーボードを入れられないか?」という検討は、設計担当者が、アンオフィシャルな仕事として行なったのが始まりです。

―― 設計時の目標はどんなものだったのでしょう?

臼井 UltraLiteシリーズはタイプVCですでに800g台を実現していたので、なんとか800gを切り、700g台を目標としました。そうなると、「どこを割り切るか」が一番の課題です。さまざまな検討を重ねてユーザーの利用状況などを調べた結果、最終的には「拡張性」を諦めることにしました。たとえば、最近は必ずしも付いているとは限りませんが、多くのノートがPCカードやExpressカードによる機能拡張が可能です。ですが、今はUSBも普及しており、必ずしも利用率は高くはありません。

 そのほか、メモリー増設やHDD交換といった要素も諦めました。メモリーは、交換可能にするとソケットを使う必要があり、その分マザーボードが高く(厚く)なってしまいます。また、筐体側にも増設のための穴(カバー部分)を開ける必要があります。ストレージには汎用品のSSDを利用していますが、これも交換可能にすると、やはり交換用のフタなどを付けなければなりません。するとどうしても筐体自体に厚みが必要になってしまいます。

UltraLiteの底面

UltraLiteの底面。メモリースロットなどのカバーもなく、シンプルなデザイン

 原型となるLui RNは、PCアーキテクチャーではないため、筐体にそれらの部分が最初からなくて、ここに部品交換の穴を開けると、まったく違ったものになってしまいます。そのままの大きさを維持するのが困難になるわけです。具体的には、メモリーは1GB固定としマザーボード上に直接乗せています。SSDは64GBの汎用品を利用しています。

 拡張性を諦めたといってもUSB端子があるので、たとえば通信アダプターや光学ドライブも接続可能ですし、通常の利用で困ることはないと思います。

日比野 ビジネスで利用できるスペックを維持したまま、いつでもショルダーバッグに入れて持ち歩ける――というのがこの製品のコンセプトになります。満員電車での持ち歩きを考えて、150kgfの面耐圧試験をクリアするように作ってあります。


コンパクトながら使いやすさも追求

―― 内部的にはどうなっているのでしょうか?

臼井 マザーボードを薄く小さくするために、基板を2段ビルドアップで10層にしてあります。こうすることで配線を重ねられるため、部品の間に(配線のための)スペースを取らずに済み、基板を小型化できたのです。実際、キーボードの下は何もありません。キーボードと液晶ヒンジの間にすべてが入っています。

 CPUはインテルの「Atom Z540」を使い、クロック周波数は1.86GHzです。チップセットは「SU15W」で、ここにグラフィックスアクセラレーターも入っています。この部分も割り切りのひとつです。今、小型マシンを作ろうとすれば、Atom Zシリーズしか選択肢がないとも言えますが。

 また放熱のために、基板やSSDはカーボングラファイトのシートで包んであります。これが熱を効率よく筐体へ伝えます。それで放熱ファンを付けずに済んでいるのです。放熱ファンはCPUなどに比較すると大きな部品で、その分筐体が大きくなってしまうからです。

―― SSDにはメリットもありますが、容量や価格では、たとえば1.8インチタイプのHDDより不利な面もあります。なぜ、あえてSSDを選択したのでしょうか?

臼井 やはり軽さを追求するという点。また、信頼性やバッテリー駆動時間を延ばすという点で、SSDを選択しました。この機種はファンレスなので、SSDにすれば回転するメカ的な機構はまったくありません。持ち歩くときにも、HDDの故障を心配しなくていいというメリットもあります。

UltraLiteのキーボード

UltraLiteのキーボード。中央にポインティングデバイス、スペースバーの手前に左右ボタンが並ぶ

―― 設計時に工夫した点はどこでしょう?

臼井 USBを左右に配置した点でしょうか。片側1ヵ所にまとめたほうが、設計も製造的にも楽なのですが、そうなると使うときにケーブルが邪魔に感じる場合があります。なお、光学ドライブで使われる二又のUSBケーブルを考慮して、左側面と後部のUSBコネクターを近い位置にしています。

 また、キーボードも縦横17mmピッチのスクエアなものにして、カーソルキーも一段下げた扱いやすいものにしています。ファンクションキーも4つごとに分離してあるタイプで、パッと見たときに、キーの位置がわかりやすいものにしました。

 ビジネスノートなのでキーボードの利用頻度は高く、打ちにくいものでは仕事になりませんから。

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