スタートはアンオフィシャル!?
―― そもそもこの製品の企画は、どのように始まったのでしょう?
臼井 「UltraLite」シリーズは、軽量でモバイル性を指向したノートPCですが、特にこの製品は軽量、長時間駆動、堅牢性といったことを特徴としています。
ご存じの通りこの機種は、NECのホームサーバー・クライアントソリューション「Lui」で使われている“PCリモーターノートタイプ”「Lui RN」の筐体を利用しています。こちらはOSにWindows CEを使い、CPUもPC(本製品)とは違ったものです。Lui RNはそもそもPCではないため、小さなマザーボードを入れることを前提として作られたシステムですが、結果的に軽さをぎりぎりまで追求したマシンになっています。
実は、「この筐体にPCのマザーボードを入れられないか?」という検討は、設計担当者が、アンオフィシャルな仕事として行なったのが始まりです。
―― 設計時の目標はどんなものだったのでしょう?
臼井 UltraLiteシリーズはタイプVCですでに800g台を実現していたので、なんとか800gを切り、700g台を目標としました。そうなると、「どこを割り切るか」が一番の課題です。さまざまな検討を重ねてユーザーの利用状況などを調べた結果、最終的には「拡張性」を諦めることにしました。たとえば、最近は必ずしも付いているとは限りませんが、多くのノートがPCカードやExpressカードによる機能拡張が可能です。ですが、今はUSBも普及しており、必ずしも利用率は高くはありません。
そのほか、メモリー増設やHDD交換といった要素も諦めました。メモリーは、交換可能にするとソケットを使う必要があり、その分マザーボードが高く(厚く)なってしまいます。また、筐体側にも増設のための穴(カバー部分)を開ける必要があります。ストレージには汎用品のSSDを利用していますが、これも交換可能にすると、やはり交換用のフタなどを付けなければなりません。するとどうしても筐体自体に厚みが必要になってしまいます。
原型となるLui RNは、PCアーキテクチャーではないため、筐体にそれらの部分が最初からなくて、ここに部品交換の穴を開けると、まったく違ったものになってしまいます。そのままの大きさを維持するのが困難になるわけです。具体的には、メモリーは1GB固定としマザーボード上に直接乗せています。SSDは64GBの汎用品を利用しています。
拡張性を諦めたといってもUSB端子があるので、たとえば通信アダプターや光学ドライブも接続可能ですし、通常の利用で困ることはないと思います。
日比野 ビジネスで利用できるスペックを維持したまま、いつでもショルダーバッグに入れて持ち歩ける――というのがこの製品のコンセプトになります。満員電車での持ち歩きを考えて、150kgfの面耐圧試験をクリアするように作ってあります。
コンパクトながら使いやすさも追求
―― 内部的にはどうなっているのでしょうか?
臼井 マザーボードを薄く小さくするために、基板を2段ビルドアップで10層にしてあります。こうすることで配線を重ねられるため、部品の間に(配線のための)スペースを取らずに済み、基板を小型化できたのです。実際、キーボードの下は何もありません。キーボードと液晶ヒンジの間にすべてが入っています。
CPUはインテルの「Atom Z540」を使い、クロック周波数は1.86GHzです。チップセットは「SU15W」で、ここにグラフィックスアクセラレーターも入っています。この部分も割り切りのひとつです。今、小型マシンを作ろうとすれば、Atom Zシリーズしか選択肢がないとも言えますが。
また放熱のために、基板やSSDはカーボングラファイトのシートで包んであります。これが熱を効率よく筐体へ伝えます。それで放熱ファンを付けずに済んでいるのです。放熱ファンはCPUなどに比較すると大きな部品で、その分筐体が大きくなってしまうからです。
―― SSDにはメリットもありますが、容量や価格では、たとえば1.8インチタイプのHDDより不利な面もあります。なぜ、あえてSSDを選択したのでしょうか?
臼井 やはり軽さを追求するという点。また、信頼性やバッテリー駆動時間を延ばすという点で、SSDを選択しました。この機種はファンレスなので、SSDにすれば回転するメカ的な機構はまったくありません。持ち歩くときにも、HDDの故障を心配しなくていいというメリットもあります。
―― 設計時に工夫した点はどこでしょう?
臼井 USBを左右に配置した点でしょうか。片側1ヵ所にまとめたほうが、設計も製造的にも楽なのですが、そうなると使うときにケーブルが邪魔に感じる場合があります。なお、光学ドライブで使われる二又のUSBケーブルを考慮して、左側面と後部のUSBコネクターを近い位置にしています。
また、キーボードも縦横17mmピッチのスクエアなものにして、カーソルキーも一段下げた扱いやすいものにしています。ファンクションキーも4つごとに分離してあるタイプで、パッと見たときに、キーの位置がわかりやすいものにしました。
ビジネスノートなのでキーボードの利用頻度は高く、打ちにくいものでは仕事になりませんから。
この連載の記事
-
第4回
ビジネス
文書を効率的に扱うならPDFを活用すべし! Tips編 -
第3回
ビジネス
ビジネス利用への工夫が随所に 富士通「FMV-BIBLO MG」 -
第2回
ビジネス
ソニー「VAIO type Z」に見る「ビジネスPC」の真髄 -
第1回
ビジネス
「ネットブック」でなく「ビジネスPC」を選ぶべき5の理由 - この連載の一覧へ