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クランチロール ビンセント・ショーティノ社長に聞く

日本アニメ違法アップロードへの最善策は海外での有料配信

2009年10月16日 18時00分更新

文● アスキー総合研究所/聞き手●遠藤 諭

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ライツホルダーとは
視聴率に比例したレベニューシェア

Crunchyroll

―― 一番人気のあるアニメは『NARTO』だと。

ショーティノ ランキングは公開していませんが、『NARTO』は一番人気です。ジャンルとしては、『NARTO』のようなボーイズアクション系が多く、女性向けのコンテンツが続きます。年齢層としては、14歳から25歳がメインです。高校生・大学生が多いですね。

―― 現在のユーザー数は全世界で450万人とのことですが、やはりアメリカが主でしょうか?

ショーティノ 50%はアメリカで、25%は東南アジアです。英国や北欧でも人気があります。現在は英語の字幕のみなので、東南アジアでも、シンガポールやフィリピンといった英語圏が主になります。フランスは市場が特別で、日本アニメがテレビで放送されていたり、DVDが売れたりするので、ライツホルダーからはフランスには配信しないように指示されることが多いのです。

―― そのライツホルダーとの関わりなのですが、利益の分配はどういう仕組みになっているのでしょう?

ショーティノ モデルとしては、レベニューシェアになります。月額利用料は、半分は弊社、残りの半分はライツホルダーに視聴率に合わせて分配します。広告収入も、弊社とライツホルダーで折半します。

―― 字幕もライツホルダーが用意するわけではないんですよね?

ショーティノ エンコードと、翻訳や字幕の作成は弊社で行います。日本での放送と同日に配信するために、字幕作成の時間がかかりますので、放送日の4~8日前には、ライツホルダーから映像と台本をもらっています。

―― 『銀河鉄道999』のような、古いアニメもアップされていますが、新作と旧作のどっちがよく見られるのでしょう。

ショーティノ 7対3で新作です。ユーザーは新作を早く見たがっていて、わたしたちも古いタイトルよりも、より見られる可能性がある新しいタイトルにフォーカスしています。この秋に向けては、約20タイトルは確保しようとしています。あまりに日本向け過ぎるタイトルや、子ども向けのものなどを除くと、わたしたちのユーザーが好むアニメタイトルは、だいたいそれくらいの数になります。


日本アニメの配信だけでなく
音楽やコミックにも拡大したい

―― 御社は、どういった経緯で設立されたのですか?

ショーティノ 創設者の3名はみんな中国系で、彼らはカリフォルニア大学バークレー校でコンピュータを専攻していて、卒業後にいったん就職したのですが、自分たちので事業をやりたいと思ってクランチロールを始めました。なぜアニメが主かというと、マニアというほどではないのですが、高校のときからみんなでアニメを見るなどしていたアニメファンだったからです。

クランチロールのビジネスモデル
クランチロール日本法人のオフィスの入り口には、表札代わりのように、同社のビジネスモデルを説明するカンバンがかかっている。

 アニメ動画共有SNSのようなサービスとしてスタートして、どんどんユーザーが増えてきたので、ベンチャーキャピタルに出資してもらって、会社を作ろうということになりました。ただし、そのときまでは、ユーザーによってサイトにアップされていたのは、ほぼすべて違法な動画でした。

 でも、これをビジネスにしなければならない。そこで、違法なコンテンツをすべて排除し、テレビ東京をはじめとするライツホルダーと協力して、合法的なストリーミング配信を始めたのです。切り替えのタイミングで20%くらいユーザーは減りましたが、その後は順調に増加しています。

―― ライバルはどういったところになりますか? Huluとかでしょうか。

※Hulu:ABCやNBC、FOXといったテレビネットワークがコンテンツを提供する、米国の動画ストリーミングサービス。毎月3851万人のユーザーが、コンテンツを4億8826万回視聴している(comScore Video Metrixより)。

ショーティノ Huluはわたしたちよりもっと規模が大きく、またビジネスモデルも異なるので、比較しづらいです。

―― 海外、特にアメリカでも、日本のアニメは定着しているのでしょうか?

ショーティノ 知り合いの高校教師によると、生徒にスピーチをさせれば、日本のアニメに関するスピーチがいっぱい出てくるんだそうです。カリフォルニアの4年制高校だと、半分くらいはアニメを見ているかもしれません。

 かつては、多くのアメリカ人は『マッハGoGoGo』(米国では『Speed Racer』というタイトルで放送)をアメリカのテレビ番組だと思っていました。でも、最近の若い子供たちには、アニメはごく普通のジャンルになっています。カートゥーンと日本のアニメの違いは、ちゃんとわかっていると思います。

―― そういったユーザーがいるので、日本アニメのストリーミング配信は、有料でもちゃんとやっていけるということですね。

 ポイントは、日本での放送と同日に配信することです。今後手がけたいマンガ・コミックについても、日本で出版されるのと同日配信でなければダメです。

 マンガも、勝手にスキャンして、翻訳してアップしている違法なサイトが、無数にあります。これらと対抗するためには、たとえば日本で『週刊少年ジャンプ』が発売されたその日に、翻訳されたものが配信されるようでなければダメです。

 アニメと同様に、コミックや音楽といった他のジャンルの拡充も、今後目指していきます。iPhoneやSTBといったマルチプラットフォーム対応のほか、英語以外のマルチランゲージ対応も進めていきます。

―― クランチロールは現在、日本からは視聴できません。7ドル、つまり700円弱でアニメが見放題だと、日本でも十分流行る可能性があると思います。日本での展開の可能性はあるのでしょうか?

ショーティノ 残念ながら、日本での展開は考えていません。日本のインターネットはクローズな印象があり、海外とはビジネスが全然違います。わたしたちの動画配信+SNSのようなサービスを、そのまま展開できるとは思えないのです。

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