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ゼロからはじめるストレージ入門 第2回

データを保護する技術とは?

ハードディスクとRAIDの基礎を学ぼう

2009年09月04日 09時00分更新

文● 吉田尚壮/EMCジャパン株式会社 グローバル・サービス統括本部 テクノロジー・ソリューションズ本部 技術部 テクノロジー・コンサルタント

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ストレージを構成する重要な要素がHDDだ。ストレージ全体について解説する前に、まずはこのHDDの構造や種類、さらにHDDの安全性を高める技術の1つであるRAIDについて見てみよう。

HDDとストレージ技術の進化

 ハードディスクドライブは、1957年に世界で初めてコンピュータの外部記憶装置として開発された。当時は「磁気ディスク装置」と位置づけられており、大型の筐体に磁気ディスク(磁性体円盤)を装備し、専用の駆動装置(ドライブ)で回転させる仕組みとなっていた。また、磁気ディスク自体も直径50~60cm程度の大きさで、装置内に固定され取り外しができない仕様となっていた。

 その後、磁気ディスクは数~数十枚まとめてカートリッジに収められ「ディスクパック」と呼ばれる形態でディスク装置に装備されるようになり、取り外しも可能となった。さらに技術開発が進むと、磁気ディスクは大容量化・小型化され、ディスクパックとドライブが一体型となった小型の「固定式磁気ディスク装置」が実用化された。これが現在のHDDの原型となっている。

 この頃から、ディスクパックを搭載する磁気ディスク装置は影を潜め、固定式が主流となり、オフィスコンピュータに内蔵される形で採用され始めた。また、80年代には3.5インチのまで小型化され、HDDとしてパソコンでも利用されるようになった。

HDDの構造と種類

 現在、一般的に利用されているHDDは、DVDなどの記憶メディアと比較すると、アクセスが速く記録容量も大きい。ストレージ装置が、HDDを採用している理由がこの点にある。

図1 ハードディスクの内部構造

 なお、HDDはインターフェイス規格や仕様によって種類がわかれている。現在主流となっているインターフェイス規格は、「SATA(Serial Advanced Technology Attachment)」「SAS(Serial Attached SCSI)」「FC(Fibre Channel)」の3種類である。以下にそれぞれの特徴を解説しよう。

SATAディスクドライブ

 1990年代、SCSIよりも安価であるという理由から、ATAがパソコンで広く利用されていた。当時のATAは、「パラレルATA」と呼ばれ、1つのコントローラからフラットケーブルでHDDに接続し、複数の信号線を使ってデータを同時並行で送受信する「パラレル転送方式」を採用していた。

 しかし、パラレルATAは仕様上の問題により性能向上に限界があった。データ転送速度を高めるにつれて、電磁波ノイズによるフラットケーブル内の信号線への悪影響や、ケーブルを通過する信号の遅延から生じるエラーが顕著化してしまうのだ。

 その後、パラレルATAよりも転送速度を向上させる規格としてSATA(シリアルATA)が開発され、パラレルATAに代わって実用化された。シリアルATAは、シンプルなケーブルでデータを連続して転送する「シリアル転送方式」を採用し、信号線間の干渉を抑え、高い周波数を利用することで高速な転送速度を実現している。

 なお、現在はSATAの後継であるSATAⅡが主流となっている。この規格は、NCQ(Native Command Queuing)という技術を採用し、もっとも効率のよい順序でコマンドを処理し、更なる性能の向上を実現している。

SASディスクドライブ

 ATAは、おもにパソコンで広く利用されていたが、企業のサーバ環境では、SCSIが性能や信頼性、下位互換性の評価が高いなどの理由から、20年以上に渡って広く利用され続けてきた。その後、パラレル転送方式を採用していたSCSIを改良して、SATAと同様にシリアル転送方式を採用して高速化を実現させた規格がSASである。

 SASは、SATAと互換性のあるコネクタを採用しており、同じストレージ装置内でSASとSATAの両方が利用することも可能となっている。また、SASはSCSIの持つ遅延や減衰など信号の整合性に与える影響を最小限に抑える技術や、コマンド処理方式の優位性などから、SATAよりも性能と信頼性に優れているといわれている

FCディスクドライブ

 FCは、1988年に規格化が開始され、おもにストレージ向けのネットワークに使用されているプロトコルで、SCSIの問題点を解決すべく開発された技術である。FCは、シリアル伝送方式を採用しており、接続できるデバイス数や転送速度および距離の制限においてSCSIより優れている。なお、FCはSATAやSASよりも高価であるが、高い性能と信頼性、および拡張性や実績の面からも評価が高く、企業のストレージ環境で幅広く利用されている。

図2 ハードディスクの比較

用途に合わせたHDDの選択を

 一般的に、性能と信頼性が求められるアプリケーションや大規模な環境には、FCまたはSASのHDDが選択されることが多い。一方、コストパフォーマンス重視で高い性能が求められないアプリケーション環境では、比較的安価に大容量のシステムを構築できるSATAのHDDが利用されている。

 また、最近では構造が異なるがHDDと同様にストレージアレイに搭載できるSSD(Solid State Disk)が実用化された。SSDは、不揮発性の半導体メモリが内蔵されており、他のHDDよりも高い性能を発揮することなどから注目を浴びている。また、モーターなどの駆動装置は搭載されていないため低消費電力で放熱も少なく、今後急速に普及して行くと予想されている。SSDについては、連載の後半で詳しく解説したい。

JBODによるシンプルなHDDの利用形態

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(次ページ、「ディスクアレイのデータを保護する技術」に続く)


 

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