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インフラ&ネット技術の今と未来 第4回

インターネットの名前はどうなるのか?

ICANNの動向から見たドメイン名とDNS

2009年09月17日 09時00分更新

文● 渡瀬圭市

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トップレベルドメイン名は不変ではない

 現在のトップレベルドメイン名は、gTLDとccTLDを合わせると270以上もの数になる。しかし、ICANNは2008年6月のパリ会合でさらなるgTLDの新設に向けた勧告を理事会で承認した。この発表は、複数のメディアにより「トップレベルドメイン名の自由化」というニュアンスで報道されたため、記憶にある方もいらっしゃるものと思う。このことだけでも、今後ともgTLDは増えていくことが決まっていることがわかる。

 では、ccTLDについてはどうだろうか。ccTLDは国や地域に対して割り当てられるため、今後とも増減を繰り返すことになるはずだ。

 たとえば、1991年末に崩壊した旧ソビエト連邦に割り当てられていた国コード“SU”は、翌年の1992年にISOのリストから外され、代わりに“RU”(ロシア)や“UA”(ウクライナ)、“BY”(ベラルーシ)といったコードが割り当てられた。また、ユーゴスラビア“YU”は紆余曲折のあと最終的にセルビア“RS”とモンテネグロ“ME”が割り当てられている。世界情勢的には、既存の国が分裂することのほうが多いと考えられるため、全体としては、こちらも増える方向にあるのかもしれない。

 また一方では、「ドメイン名が消える」という事態も予想される。詳細は別の機会に譲るが、たとえば旧ソビエト連邦の.suやユーゴスラビアの.yuなどはルートゾーンに対する登録がいずれは解除されるはずだからだ。読者の中には「既存のドメイン名には利用者がいるのだから残してもよいのでは?」と考える人もいるかと思う。しかし、よく考えると仮に“SU”のコードが他の国や地域に再割り当てされたとき、インターネット上で古いコードが取り消されずに残っていたら、その新しい国や地域にとっての利益が奪われてしまうことになる。それは避けなければならないのは自明だろう。そのため、IANAのルートゾーンデータベースを見ると、.suや.yuは“being phased out”という状態になっているのが見て取れる(画面2)。これは、段階的廃止が宣言されていると考えることができる。

画面2 “being phased out”が宣言されている.suドメイン名

多くの課題を抱えるようになったDNS

 従来、トップレベルドメイン名の数が抑えられてきたのは、ルートサーバに過度の負荷がかかるのを避ける意味合いがあったものと推測される。実際、一時期のルートサーバには大きな負荷がかかっていたことがあり、その安全の確保はインターネットにとって重要な意味を持っていたからだ。

 しかし、その後の状況の変化がトップレベルドメイン名の増加を許容できるようになってきた。具体的には、物理的に世界で13サイトしかなかったルートサーバが、IPエニーキャストなどの技術により、百台以上のルートサーバで負荷分散できるようになっていることなどが理由として挙げられる。

 DNSにとっての課題は、むしろ増え続けるDNSクエリや広がる利用範囲だろう。図1は2007年のInternet Weekの「DNS Day」でJPRSから発表された資料だが、ドメイン名の登録数の伸びよりもDNSクエリの伸びのほうがはるかに大きい。今後は、迷惑メール対策のためのSPF(Sender Policy Framwork)やDKIM(DomainKeys Identified Mail)などの仕組みも活用が見込まれるため、クエリの増加はさらに大きくなると考えられる。

図1 増え続けるDNSクエリを示したグラフ

 また、「IPv4アドレス在庫枯渇問題」により、今後はIPv6アドレスの利用状況が大幅に増えることも考えなくてはならない。特に注意する必要があるのは、IPv6アドレスやSPF、DKIMのための情報を格納するには、現在の512バイトというUDPパケットサイズでは大きさが不足する可能性が高いことだ。必然的に、EDNS0(DNS用拡張メカニズム )への対応や、TCPフォールバックを考える必要が出てくるだろう。

(次ページ、「DNSの今後はどうなる?」に続く)


 

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