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サーバ仮想化製品とは
最初に、現在サーバ仮想化に使われている主要製品について現在の状況と今後についてまとめておこう(表1)。
製品は大別してホストOS型とハイパーバイザ型に大別されるが、現在注目されているのは性能の高いハイパーバイザ型である(図1)。
現在、企業のサーバ仮想化で最初に候補に挙がるのはヴイエムウェアの製品だろう(画面1)。WindowsやLinuxにインストールして使用するホストOS型の「VMware Server」と、より大規模なシステムで利用できるハイパーバイザ型の「VMware ESX」がサーバ仮想化に対応した製品となっている。前者は無償で利用できるので比較的小規模なシステムで利用されており、後者はブレードサーバと組み合わせて企業のシステムインフラで利用されるようになった。また、無償で利用できるXenやHyper-Vに対抗する意味合いもあって、VMware ESXのハイパーバイザ部分のみを無償化した「VMware ESXi」も提供されている。
VMwareの次期バージョンである「vSphere 4」も2009年4月中にリリースされるが(本稿執筆時点では未リリース)、仮想マシンのスペック向上や仮想ネットワークの改良などが中心でサーバ仮想化そのものでの大きな変更はなく、製品としてはある程度まとまった感がある。
一方、Xenはオープンソースで提供されているハイパーバイザ型のソフトウェアだ。サーバ仮想化ソフトウェア本体のコストを考えることなく、本格的なサーバ仮想化環境を構築できるところに強みがある。そのため、Webサービスの企業や大学などを中心に、ある程度自前でシステム構築が行なえるユーザーや、VMware ESXのコストが高すぎると感じるユーザーの間で利用が広がりつつある。
XenはLinuxディストリビューションに組み込まれているもののほか、「Oracle VM」や「Sun xVM」などにも組み込まれて利用されている。また、Xenの開発元であるシトリックス・システムズが開発している「Citrix XenServer」はこれまで有償で販売されていたが、2009年3月から基本的に無償で利用できるように変更された。
先行しているVMwareと比較すると、Xenはハイパーバイザとしての機能面で大きく劣るところはない。そして、Linuxなどと組み合わせてシステムの作り込みがしやすいのが大きなメリットだろう。反面、突っ込んだシステム開発の必要がない、あるいはシステム開発ができないユーザーからすると、Xenは取っつきにくいというイメージがあるようだ。また、Xenを組み込んでいる製品が多岐に渡ってしまっているのもわかりにくい理由の1つかもしれない。今のところ、誰にでも勧められる仮想化サーバ環境には至っていないと思われる。
3つめに紹介するのは、マイクロソフトが2008年夏にリリースしたサーバ仮想化環境「Hyper-V」だ。前の2つの製品に比べると、機能面でやや見劣りする部分もあり、いまのところ大きな規模で利用されているケースは出ていないようだ。後発製品だけに、まだ評価段階にあるともいえる。次期バージョンとなるHyper-V 2.0(Windows Server 2008 R2に搭載)ではライブマイグレーションが装備される。これにより、仮想マシンのホスト間移動時のダウンタイムがかなり短くなり、VMwareにある「VMotion」やXenの「Live Migration」とほぼ同等になるようだ。このあたりからが本格的な採用検討が可能になる時期ではないだろうか。
そのほかの製品で今後の動向が注目されているのは「KVM」(Kernel Virtual Machine)だろう。Linuxのカーネルに標準で組み込まれた仮想化の仕組みであり、現在でもFedora(レッドハットが支援しているオープンソースのLinuxディストリビューション)などで先行して利用できるようになっている。商用製品としては、Red Hat Enterprise Linux 6からサポートされることを表明している。Linux系のシステムではXenとKVMの両方を選択できるようになるが、これがどのような影響をもたらすかが注目される。
(次ページ、「サーバ仮想化はどう使われる?」に続く)
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