有線LANを規定するIEEE802.3
本記事のメインテーマであるEthernetに割り当てられた番号は「802.3」である(表3)。最初は単に数字のみだが、次からはさらにアルファベットが付く。a~zまで順番に使い、一巡するとaa、ab、acと2桁になる。
また、それとは別に概要がわかるように「10BASE5」といった別名が付く(図2)。
さて、DIXからEthernetを引き継いだIEEE802委員会だが、1983年にEthernet IIに相当するIEEE802.3「10BASE5」を標準化したのを皮切りに、時代の流れに合わせて次々と新しいEthernet規格を策定した。
特に、Ethernet普及の決定打となったのが、UTP(Unshielded Twisted Pair)ケーブルを採用したIEEE802.3i「10BASE-T」だ。UTPケーブルは、米国のオフィスでは電話線として使われており、どこにでもあるありふれたケーブルだった。これがそのままLANに利用できることは、Ethernet導入の敷居を下げるのに貢献した。
参考までに触れておくが、ケーブル規格はIEEEとは異なる別の団体が規格化している。たとえば、初期のEthernetで使われた同軸ケーブルは、軍事用無線通信規格RG(Radio Guide)を流用した。現在主流のUTPケーブルは、ANSIやTIA、EIAといった団体が規格化している。なぜなら、前述の通りEthernetはすでに存在していたケーブルを流用していた経緯があるからだ。もっとも、EthernetがLANの主流となってからは、その影響は無視できなくなった。実際のところ、カテゴリ5eやカテゴリ6aはEthernetのための規格である。
Ethernetの階層構造
それでは、OSI参照モデルと対比しながら、Ethernetの階層構造を解説する(図3)。
実は、Ethernetは第2層と第1層にまたがっている。特に、第2層はLLC(Logical Link Control)副層とMAC(Media Access Control)副層に分離しており、LLC副層がEthernetとは関係ない独立した存在になっている。これは、「抽象化」と呼ばれる手法であり、論理的な部分(LLC副層)と物理的な部分(MAC副層)を切り離したのだ。
このLLC副層は、IEEE802.2の担当だ。TCPとUDPのように、コネクション型とコネクションレス型の両方を扱えるよう、エラー制御やフロー制御などを規定している。一方、MAC副層は上位層が下位層の影響を受けることなく、どのようなメディア(ケーブルや電波など)や伝送速度であっても共通の通信手順を規定している。それが、後述するCSMA/CDだ。
最下位層であるPHY層では、現在普及しているUTPケーブル以外に、同軸ケーブルや光ファイバも規格化された。また、無線LAN(IEEE802.11)では、電波以外に赤外線(光)が規格化されている。
ネットワーク管理を行なうIEEE802.1
IEEE802.1はEthernetに限らず、ネットワーク管理全般を担当する規格である(表4)。おもにOSI参照モデル第3層以上のHILI(Higher Level Interface)ならびに複数層にまたがる、あるいはどの層にも属さないことすべてを何でも扱う。
たとえば、IEEE802.1DのスパニングツリーやIEEE802.1QのVLAN(Virtual LAN)は、いまどきのLANには欠かせない技術である。また、無線LAN(IEEE802.11)のセキュリティとして注目されているのが、IEEE802.1Xのポートベースのネットワークアクセス制御だ。このように、必ずしもEthernetとは関係ないが、LAN全般にかかわっている。
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