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【特別企画】これが自衛隊の艦船だ! ミリタリーマニアの“平成18年度自衛隊観艦式”取材レポート

2006年11月04日 23時22分更新

文● A社戦車部長

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●観艦式始まる

 観音崎をまわり、浦賀水道から相模灘へ入った頃、いよいよ内閣総理大臣が「くらま」へ乗艦との運びとなった。海上自衛隊のヘリで首相官邸から飛来した安部晋三内閣総理大臣は、無事艦上の人となったようだ。ちなみに観閲艦となった「くらま」は「しらね」型の護衛艦で、艦前部に砲塔を二基装備している。また、艦後部には飛行甲板があり、ヘリコプターの運用が可能だ。旧日本海軍で言えば「伊勢」級航空戦艦、あるいは「最上」級航空巡洋艦を彷彿とさせる艦容で、砲力と航空機の二刀流の印象が強そうに見えるらしく、国内外で意外と人気があるらしい。

「くらま」
「くらま」要目:DDH「しらね」型/艦番号DD144/満載排水量6800t/全長159m/最高速力32kt/乗員360名/武装は127mm単装速射砲×2、20mm多銃身機関銃×2、短魚雷発射管×2、ミサイル発射器など、その他ヘリコプター×3/艦名の由来は京都の鞍馬山から

 首相乗艦後、観閲部隊は陣形を整え、いよいよ観艦式の始まりだ。海面付近の視界は悪いものの、青空が見え始めた相模湾に、先導艦「いかづち」、次に観閲艦「くらま」、そして我々の乗艦している「ちょうかい」、その後ろに「ひえい」というように一列縦隊で進入していく。そして相対するように前方から一列に連なった艦列が見えてきた。これが受閲艦艇部隊だ。

整然と進んでくる受閲艦艇部隊第一群
整然と進んでくる受閲艦艇部隊第一群

●受閲艦艇部隊が観閲部隊とすれ違う

 受閲艦艇部隊の旗艦「たちかぜ」を先頭に7隻の艦列が進んでくる。「たちかぜ」は対空誘導弾搭載護衛艦として1976年に就役したベテランの艦艇だ。「くらま」や「ちょうかい」に比べればやや小型の艦だが、艦隊のワークホースとしての存在感を感じさせる。そして舷側に並んだ隊員の登舷礼がビシっと決まっている。続いて「たかなみ」「おおなみ」「むらさめ」など6隻の護衛艦が進んでくる。

「たちかぜ」
「たちかぜ」要目:DDG「たちかぜ」型/艦番号DD168/満載排水量4800t/全長143m/最高速力32kt/乗員250名/武装は127mm単装速射砲×1、20mm多銃身機関銃×2、アスロック発射機×1、短魚雷発射管×2、対空ミサイル発射器など/艦名の由来は太刀をふるった際に発生する風の様子から

 続いての受閲艦艇部隊は潜水艦部隊だ。「やえしお」を先頭に4隻が進んでくる。黒く塗られた艦の姿はまさに“鉄鯨”だ。セイルの潜舵には隊員が3名立ち、登舷礼を行なっている。ちなみに「やえしお」は海上自衛隊の潜水艦としては最新鋭の潜水艦だ。形状は葉巻型で、ソナーによる探知能力などが従来の潜水艦に比べて向上している。なお、写真で艦の後方から出ている白煙は、ディーゼル機関の排気煙だ。

「やえしお」
「やえしお」要目:SS「おやしお」型/艦番号SS598/水中排水量3600t/全長82m/最高水中速力20kt/乗員70名/武装は魚雷発射管×6/艦名の由来は八重に重なる潮の様子から

 次は掃海艇部隊だ。掃海母艦「ぶんご」を先頭に、掃海艇「つしま」「すがしま」が進んでくる。掃海母艦とは掃海艇の補給や乗員の休養などを行う艦のことで、掃海艇は海中の機雷を除去するための艦だ。掃海艇は磁気機雷が反応することを防ぐために、艦は木造となっている。

「ぶんご/つしま/すがしま/しもきた」
左から掃海母艦「ぶんご」、続いて掃海艇「つしま」、「すがしま」だ。その右側は続航する輸送艦「しもきた」

 その次は輸送艦「しもきた」の登場だ。艦上には陸上自衛隊隊員も並び、観閲官に見事な敬礼を送っている。「しもきた」は一昨年のインド洋大津波救援でスマトラ島に派遣されて活躍した「おおすみ」型輸送艦「くにさき」と同型艦だ。艦内にはエアクッション型揚陸艇「LCAC」の発進設備を備え、港がないエリアにでも物資や人員を輸送できる。この「おおすみ」型の見た目はなんとなく航空母艦に似ているが、ヘリコプターを整備する設備を備えていないため、ヘリコプターの離発着そのものは可能だが、長期にわたって運用する能力は持っていない。そのため、「くにさき」がスマトラ島に派遣された際には、大型ヘリをきちんと整備出来ず、現場では大変に苦労したとのことだ。

「しもきた」
「しもきた」要目:LST「おおすみ」型/艦番号LST4002/満載排水量14700t/全長178m/最高速力22kt/乗員135名/武装は20mm多銃身機関銃×2、LCAC×2/艦名の由来は下北半島から。艦上には陸上自衛隊隊員と高機動車やトラックなどの車輌が並んでいる

 その後ろからエアクッション艇「LCAC」が水煙を上げながら現れた。“エアクッション艇”とは聞き慣れないかもしれないが、要はホバークラフトだ。ただし、ホバークラフトという単語は、英国企業の商標なので、一般名詞として“エアクッション艇”と呼ばれている。最高速力は40ktで、海上はもちろん、比較的平坦な陸地であればそのまま上陸して人員や物資を乗降させることが可能だ。

「LCAC」
「LCAC」要目:満載排水量181t/全長26.8m/最高速力40kt/乗員5名/中央部に積載スペースがあり、90式戦車なら一両が積載可能。「LCAC」とは“Landing Craft Air Cushion”の略となる

 そしてミサイル艇「おおたか」、「くまたか」が続く。最高速力44ktで、不審船対策の切り札として導入された新鋭艦艇だ。ウォータージェット推進で、操縦する際にはシートベルト着用必須との話だ。

「おおたか」
「おおたか」要目:PG「はやぶさ」型/艦番号PG826/満載排水量200t/全長50m/最高速力44kt /乗員18名/武装は76mm速射砲×1/艦名の由来は鳥の名称から

 最後は海上保安庁巡視船「やしま」の登場だ。以前は観艦式に海上保安庁の船艇は参加していなかったが、ここ数回は参加するようになった。しかしこうやってそばで見ると護衛艦と巡視船の構造や装備の違いがよく分かって面白いものだ。

「やしま」
横浜海上保安部所属の巡視船「やしま」。搭載しているヘリコプターはベル212型だ

 さて、いつもの観艦式ではこのあと航空機による展示があるのだが、残念ながら今回は中止となったため、飛行艇の着水や哨戒機からの対潜爆弾の投下などは見ることが出来なかった。(次ページへ続く)

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