●いよいよ乗艦
霧雨が降る中、横須賀基地の門をくぐった我々は、プレス受付で確認と手荷物検査を済ませ、桟橋に横付けされている「ちょうかい」へ向かった。「ちょうかい」は戦前の巡洋艦クラスの艦艇で、それほど大きな艦ではない。筆者は以前に米空母「キティホーク」に乗艦したことがあるが、さすが満載排水量8万トンの大型艦艇は一つの都市のように巨大だった。また、昨年期間限定で公開されていた尾道の戦艦「大和」映画セットも訪問したが、艦の一部のみ再現されたとはいえ、やはり巨大な存在だった。それらに比べれば9000t余りの「ちょうかい」はかなり小振りである。それでも軍艦ならでは殺気というか緊張感を持っていることには変わりはない。
これから乗艦するイージス艦「ちょうかい」。約9000tとはいえ、海上自衛隊の護衛艦の中では最大の排水量を誇る | 対艦ミサイルのハープーン4連装発射筒を見ると、これが軍艦であることを意識させられる |
撮影場所は、艦前部のブリッジのすぐ下の外側甲板ということで、そこに案内された。なかなか見晴らしは良い。あとは晴れてくれれば、というところだ。早速他社の記者共々撮影準備に取りかかる。我々の頭上には、イージス艦の命とも言えるフェイズドアレイレーダーとCIWS機関砲がドンと陣取っている。
イージスシステムを運用する上で重要な“フェイズドアレイレーダー”。板状の形状をしていて可動部分がない | 撮影エリアに鎮座する6連装のチャフ(電波かく乱用金属箔)発射装置。レーダー探知の妨害や、レーダー誘導ミサイルの回避などに使用する |
取材エリアと主砲の間にはMk41VLS(ミサイル垂直発射装置)が配置されている。全部で29ものミサイル発射口がある | 模型によると、甲板のミサイル発射口の下は写真のようになっているようだ |
●気分は「亡国のイージス」!いや「タイタニック」か?
時刻は9時、出航ラッパの演奏と共にいよいよ出航となる。取材班を乗せた「ちょうかい」は、速力15ノットで浦賀水道を抜けて、一路相模灘へ。ただし、あいにくの曇天で視界も悪い。我々はこの時間を利用して艦内の設備を見学することにしたが、「ちょうかい」は防衛庁招待客の乗艦ということで、プレスはほとんどのエリアに立ち入ることができず、撮影も不可とのことだ。さらに艦内構造が複雑なため、勝手に歩き回ることは困難だ。しょうがないので立ち入りが許された一部のエリアであるトイレと売店を見学することにした。トイレはバルブをひねると海水が流れ出して便器を洗浄する仕組みで、「バルブ詰まりを防ぐため常に流し続けること」という指示プレートが表示されていたのが印象的だった。
艦内の売店で販売していた「横須賀海軍カレーパン」。船型のボックスにカレーパンが4個入っている | こちらはピットロード製「ちょうかい」のプラモデル。観艦式記念パッケージの限定品となっており、おみやげに最適だ! |
そして取材場所に戻った我々に残念な知らせが……!「視界不良のため、航空機による観艦式の展示は中止となった」と広報担当Yさんから連絡が入った。つまり観艦式は、我々の周りを航行している艦艇だけで行われることになった、とのことだ。なんとも皮肉なことにその頃から海上の天候は回復を始め、日さえ差すようになってきていた。(次ページへ続く)
航空部隊展示飛行の中止が決定。諦めきれずに飛行機のポーズを取って飛行の決行を自衛官にアピールする同行の編集者。後で知ったのだが、彼はただ「タイタニック」の真似をしているだけだった。よく恥ずかし気もなく出来るものだ |