死角の少ないカメラだが、EVFはぜひ改善してほしい
EVFは0.33インチ/約11.5万画素。このEVFは輝度/解像度ともに充分とは言えない。EVFの明るさは、背面の液晶ディスプレーと同様に、メニュー設定で調整できるが、日差しの強い屋外では見づらくなる。特に眼鏡を使用していると、目とファインダーの間に隙間ができるので周囲からの光が入り込みやすい。解像度に関しても、細かなピントの確認は難しい。あくまでも構図の確認用と割り切ったほうが無難である。
サンプルを640×480ドットにリサイズしたもの。 | 等倍の画像を800×600ドットに切り抜いたもの。枝と空の境界線に色にじみがある。 |
画質に関しては、まずレンズの色収差が多く出ている点が気になった。色収差とは、コントラストの強い被写体を撮影する際に起きる色ずれのことで、空をバックにした建築物の輪郭部分(エッジ)などに生じやすい。
サンプルを640×480ドットにリサイズしたもの。 | 等倍の画像を800×600ドットに切り抜いたもの。光の当たっている部分の階調が完全に失われてしまっている。 |
また、ハイライト部分がすぐに白トビしてしまうなど、ダイナミックレンジの狭さを感じる部分もあった。光が画面内に均等に当たっている状態では、色再現もコントラストもいいので、薄曇りや日陰での撮影には強く、ピーカンの日中はあまり得意ではない、という印象である。日中での撮影時は、サンプル撮影でも基本的に若干アンダーの露出補正をかけるようにしていた。
サンプルを640×480ドットにリサイズしたもの。発色は鮮やかで、最近のキヤノンらしさを感じる。 | 等倍の画像を800×600ドットに切り抜いたもの。 |
似たような被写体だが、ややアンダー気味の左の写真のほうが色味が濃く出て好印象である。 |
色作りに関しては、一眼レフの「EOS Kiss Digital N」の印象に近く、若干コントラストが高めである。しかし、ファンクション設定内の“マイカラー”機能で、別のカラーモードに変更することもできる(デフォルトは“オフ”)。設定は“くっきりカラー”や“セピアカラー”“色白肌”“褐色肌”など10種類あり、さらに印象の違った色味に変更できる。“カスタムカラー”として自分好みの色味を作ることも可能である。
マクロ撮影を行なった作例(左)と薄曇の風景を撮影した作例(右)。右の写真のように全体にフラットに光が当たっている場合のほうが、画面に破綻が少ない |
高倍率ズームEVF搭載機は他社からもいくつか発売されている。これらと比較して突出したカタログスペックと言えるのはスーパーマクロ程度だが、逆に他社より大きく劣った部分はあまり見あたらない。その意味で、全体のバランスがとれたオールマイティーなカメラだと言える。光学12倍ズームの望遠効果や、バリアングル液晶ディスプレーを利用した超ローアングル/ハイアングル撮影などは、通常とは異なる視点をユーザーに提供してくれる。この価格帯の製品でバリアングル液晶ディスプレーを搭載する機種は少ないので、“変わった視点を撮るスナップ機”としても楽しめそうだ。
PowerShot S3 ISの主なスペック | |
製品名 | PowerShot S3 IS |
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撮像素子 | 有効約600万(総620万)画素 1/2.5インチCCD |
レンズ | 光学12 倍ズーム、f=6.0~72.0mm(35mmフィルムカメラ換算時:36~432mm)、F2.7~3.5 |
静止画撮影 | 最大2816×2112ドット |
ISO感度 | オート、高感度オート、ISO 80/100/200/400/800相当 |
動画撮影 | 640×480ドット/30fps、AVI(MotionJPEG圧縮) |
液晶ディスプレー | 2.0インチ低温ポリシリコンTFT液晶パネル(約11万5000画素) |
液晶ビューファインダー (EVF) |
0.33インチTFT(約11万5000画素) |
記録メディア | SDメモリーカード/MMC(SDメモリーカード16MB付属) |
インターフェース | USB 2.0(Hi-Speed対応)、AV出力、DC入力(ACアダプターはオプション) |
電源 | 単3アルカリ乾電池、単3ニッケル水素充電池×4本 |
撮影可能枚数 | 約570枚(EVF使用時、CIPA測定法準拠)、約550枚(液晶ディスプレー使用時、CIPA測定法準拠)、ニッケル水素充電池使用時 |
本体サイズ | 幅113.4×奥行き78×高さ75.5mm |
重量 | 約410g(本体のみ) |