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【特別企画】韓国市民記者ビジネスを追うVol.2――SBSソウル放送

2006年01月30日 16時45分更新

文● 編集部 伊藤咲子

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媒体は複数あるのにコンテンツが足りない

[編集部] 2005年6月30日に始まったUポーター制度は、発足してまだ半年足らずということもあり、日本語の情報がほとんどありません。初めにどのような制度か教えてください。
報道局 インターネット部部長 キム・ヨンファン氏
報道局 インターネット部部長 キム・ヨンファン氏
[キム・ヨンファン氏] Uポーターはユビキタスレポーター(Ubiquitous Reporter)の略で、SBSが考える市民記者のモデルです。市民記者制度はオーマイニュース社のものが一番有名ですが、SBSはテレビ局としての市民記者制度を考えています。

現在メディアを取り巻く環境はめまぐるしく変化していますが、SBSは“ユビキタス(※1)”に向かうのではないかと考えています。SBSはテレビ局ですが、ラジオ、ケーブルテレビ、インターネット(情報配信/コンテンツ販売など)、地上デジタル放送、モバイル衛星放送――と、続々と登場する新しい媒体に対応する総合的なメディアを目指しています。それで、媒体が増えれば当然、コンテンツが必要になります。しかし、SBSが現在抱えている記者やプロデューサーだけで、すべてのメディアに向けてコンテンツを作っていくのは困難です。そこで市民が番組作りに参加できるような制度を導入したわけです。SBSは、テレビ、インターネット、モバイル衛星放送……と、市民が投稿した記事を公開する媒体をハンドリングできますから。
※1 “Ubiquitous”自体は“遍在する”という意味。ここではキム氏が言うように、続々と登場する新しい媒体に対応する総合的なメディア、どんな環境でも、どこでも視聴できるメディアという意味だろう



ワンセグ対応携帯電話
[ソウルの風景2]政府機関の情報通信部が運営する“ユビキタスドリーム館”に展示されていたモバイル衛星放送対応携帯電話機。端末を見ると“TU”と書いてあるボタンがあるが、TUはモバイル衛星放送のサービス名
[編集部] 新しいプラットフォームや新しいデバイスはどんどん登場している一方で、一番肝心なコンテンツの制作が追いついていないということでしょうか。
[キム氏] 媒体はいろいろな種類があるのに、うまい具合にそこに当てはまるコンテンツがないんです。SBSは、できるだけ外部のコンテンツ制作会社に発注してコンテンツを用意しようと考えているのですが、そういった意味では市民記者制度も“外部”の1つではないかと考えます。市民記者に対する社内的な期待感は高いですよ。
[編集部] なぜ内部でなく、外部の制作会社に頼る必要があるのでしょうか。
[キム氏] 外からコンテンツを買ってくるほうが、リスクが少ないです。すでに多数のスタッフを抱えているのに、これ以上採用するのかという経営的判断もあります。また韓国政府が、小規模なプロダクションを生かすために、マスコミに対して外注を使うことを奨励しているという背景もあります。


ニュース番組に市民記者のコーナーを常設

[編集部] オーマイニュースなど、先行する市民記者制度が多数あります。それでも、一般市民がSBSに投稿したくなるようなモチベーションというのは、どこにあると考えていますか。
[キム氏] それは“なぜ市民記者になりたいのか”という問いから考えるべきです。市民記者になりたいという気持ちを支えているのは、自分が知っている情報を世間に広く知らしめたいという、多くの人が潜在的に持っている欲求です。Uポーター制度の場合は、地上アナログ放送、インターネット放送、モバイル衛星放送……と、さまざまなプラットフォームの番組で使用されることが特色です。このことが、市民記者の満足度を高めているのではないでしょうか。

また、市民記者制度を導入している韓国やアメリカのメディアの多くは、市民からの投稿を取り上げることに対して実は消極的です。投稿を紹介するコーナーを常設していないのです。一方SBSのUポーター制度の場合は、地上アナログ放送やモバイル衛星放送の報道番組に、Uポーターからの投稿を紹介する固定コーナー“Uポーターからの便り”を設けています。地上アナログ放送の場合は1週間に1度、深夜と早朝の報道番組でそれを紹介しています。モバイル衛星放送の場合は、毎日の14時と16時のニュースの1コーナーで、それを紹介しています。1コーナーの長さは、だいたい2分程度です。

このようにSBSには、市民記者が送ってきたニュースを最大限紹介しているという自負があります。
[編集部] Uポーターとして登録されるには、どのような手順を踏む必要がありますか。またどのようなフローで各媒体に掲載されるのでしょうか。
[キム氏] 希望者は専用のウェブサイトで、倫理規約などに承諾の上で個人情報を登録し、さらに取材活動に関する計画書を作り提出します。それが完了すると、個人のウェブログが作られます。ブログで記事や意見などを日々書き綴り、「これはニュースになるな」と思ったら、「送信」ボタンをクリックして編集部に投稿します。

一方、我々編集部は届いた記事を検証し、ニュースになると判断したらUポーターの公式ウェブサイトで取り上げます。さらに、放送向けの内容だと判断した場合には、テレビで取り上げます。直接動画を送ってくれるUポーターもいますが、視点が素晴らしいのに動画がないという場合は、編集部が直接取材に行って動画を撮ってきます。
Uポーター発のニュース Uポーター発のニュース
[Uポーター発のニュース1a]テレビ番組のキャプチャー。「犬年なのに捨てられる犬がどんどん増えている。一度ペットとして受け入れた犬は最後まで面倒みましょう」というニュース[Uポーター発のニュース1b]捨て犬のニュースは、Uporter BLOGに掲載された投稿が元となっている。写真は、Uporter NEWS(SBSの公式情報サイト)のキャプチャー。SBSの編集者が追加取材を行なっている

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