いかにユーザーに負担なくビジネスに乗せていくか
[編集部]
企画を練っていく過程で、事業化できると確信できたターニングポイントはどこでしょうか?
[杉本氏]
一昨年の冬頃からプロトタイプを作りつつ面白さや便利さを評価して、サービスで出せるんじゃないかという確信を持てたのが昨年の春の中盤ですね。実用的な情報のやりとりを実装した頃です。
[編集部]
広告による収入モデルの話が出てきたのも、この頃でしょうか?
[杉本氏]
春の終わり頃だったと記憶しています。じゃあどうやって収入を得ようかと。メールなので、ユーザーからどうのこうのとやると、そのぶんハードルが高くなってしまうじゃないですか? フリーで開放しようという案もあったのですが、実際そういうわけにもいかないですよね。
[編集部]
面白さを追求して作ったシステムに、収入モデルを後付けするのは難しかったのでは?
[杉本氏]
そうですね。基本的には、m@niwanogo.jpにメールを送り、その返信メールに広告が付帯するわけですが、基本的にはユーザーから広告を取りに行くような形になりますよね。ですから、自分が取った行動の結果として広告が送られてきたことをいかにユーザーに意識させるか、いかに違和感のない広告を載せていくかが問題です。文章的な問題であったりとか、メールを送るタイミング的な問題であったりとか、メールの中に広告が掲載されている位置であったりとか……現在でもまだまだ検討を加えています。
[編集部]
ドワンゴのコンテンツビジネスは、これまで広告事業を柱としていなかったと思いますが、組織的に新設ないし補強するのですか?
[杉本氏]
社内にも広告のレップ(インターネット上の広告代理店、もしくは業務)的機能をもともと持っているし、代理店とも話し合っています。
やりたいのは単なるバナー広告じゃない
[編集部]
ニワンゴを法人として独立させたのはなぜでしょう?
[杉本氏]
そのあたりは“こだわり”です。メールを使った新しいサービスの機軸をひとつ作るということで、今までのドワンゴのサービスモデルと違います。また、今回ニワンゴを先行して発表していますが、“勝手サイト”(※1)系のサービスをリリースしていく準備もあります。勝手系のサービスをすべてニワンゴでやるということではありませんが、今回ニワンゴを足がかりにして勝手系のサービスを踏み出すということで、財務的にどうとか、グループ的にどうとかいうわけではなく、ひとつ腹を括って括ってやりましょうということなのです。
※1
携帯電話向けコンテンツの分野で、通信キャリアーが運営するポータルサイトのメニューに載らないサイトの俗称。メニューに載るサイトは“公式サイト”と呼ばれる
[編集部]
ドワンゴはiモードの黎明期から公式サイトビジネスを手がけていますが、ニワンゴはなぜ、勝手のサービスなのでしょう?
[杉本氏]
雰囲気として勝手サイトのほうがいいのかなと。
まず、パケット通信料定額制の導入によってウェブ全体のアクセスが伸びているという背景があります。我々は今まで公式のフィールドのみでビジネスをしてきたのですが、片や、あまり注目していなかった勝手市場がすごく伸びている。これはニワンゴの事業化を考えて初めて気付いた点ではあるんですけれども。もちろん、公式市場も依然伸びてはいるんですよ。ただ絶対数として、パケット通信料定額制の導入で伸びているアクセスの多くが勝手に向かっているというのは事実です。
ドワンゴは“ケータイのビジネス”を総じて手がけたいし、サービスをあらゆる方に提供したい。公式サイトを使わない携帯電話ユーザーにも、ちゃんとしたサービスをデリバリーしなきゃいけない。
まず、パケット通信料定額制の導入によってウェブ全体のアクセスが伸びているという背景があります。我々は今まで公式のフィールドのみでビジネスをしてきたのですが、片や、あまり注目していなかった勝手市場がすごく伸びている。これはニワンゴの事業化を考えて初めて気付いた点ではあるんですけれども。もちろん、公式市場も依然伸びてはいるんですよ。ただ絶対数として、パケット通信料定額制の導入で伸びているアクセスの多くが勝手に向かっているというのは事実です。
ドワンゴは“ケータイのビジネス”を総じて手がけたいし、サービスをあらゆる方に提供したい。公式サイトを使わない携帯電話ユーザーにも、ちゃんとしたサービスをデリバリーしなきゃいけない。
[編集部]
公式サイトのほうが、ユーザーからの情報料と広告のどちらか一方もしくは両方を組み合わせて収入源にできますし、単純に、コンテンツ事業者にとってはビジネスとして成り立たせやすい気がします。
[杉本氏]
公式サイトの広告モデルは、バナーが中心だったりするじゃないですか。ドワンゴが現在運営している公式サイトでは、ユーザーに情報料をお支払いいただいて場の提供をしていただいていますが、そこでさらにバナーを貼るというのはユーザーからすれば“ありがたくない話”ですよね。現在稼動中のドワンゴの公式サイトでは、タイアップは実施していますが、コンテンツ的な付加価値があるものしかやっていません。
それで、今回のニワンゴでもバナーなどによる単なるインプレッションの広告モデル(※2)は考えていなくて、ユーザーの挙動に対してセグメント(分類)してユーザーフレンドリーな機能を提供するとか……そういうことをやっていこうとしたときに、公式サイトの広告モデルだとちょっと制限が多いと感じたんです。
※2
ウェブサイトに広告バナーを掲載し、それを目にする人の数を基に広告料金を決めるモデル
それで、今回のニワンゴでもバナーなどによる単なるインプレッションの広告モデル(※2)は考えていなくて、ユーザーの挙動に対してセグメント(分類)してユーザーフレンドリーな機能を提供するとか……そういうことをやっていこうとしたときに、公式サイトの広告モデルだとちょっと制限が多いと感じたんです。
ニワンゴからの返事の文例。アスキーアートのミ(゜θ゜)彡はニワンゴ自身 | ニワンゴからの返事の文例。こちらはおみくじ | |
写真は開発中のもので、本サービスでは変更される可能性があるという |