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統合パブリッシング環境の最新版『Adobe Creative Suite 2 日本語版』で、メディア制作の現場はどう変わるのか?

2005年06月20日 23時04分更新

文● 千葉英寿

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[――] ACS2は既存の編集/制作/印刷のワークフロー、そしてそれぞれの業界に対してどのようにコミット(協調、浸透)していくのでしょうか?
クリエイティブプロフェッショナル部部長の森脇明夫氏
クリエイティブプロフェッショナル部部長の森脇明夫氏
[森脇] まず、『Adobe InCopy CS2』という新しいアプリケーションの追加と、『Adobe InDesign CS2』の強化という2点が挙げられます。特にセグメント別に見ると、出版分野でかなり目が出てきています。例えば、(株)角川書店の導入例や、(株)日経ビーピー(日経BP社)では複数誌で導入を進めていただいています。このほかの出版社からもご興味をいただいており、出版分野は今後もかなり見込めると予測しています。

では、出版セグメントを取り込む上で何が重要なのか? ワークフローを改善する個々の機能を考えれば、ほかのDTPソフトなどと比較してもACS2の優位性は明らかです。しかし、そこにはACS2で本当の意味でのワークフローの改善が可能なのか、という疑問が生じます。それには上流工程での“ライティング(原稿執筆)”や編集作業を改善するInDesign CS2とInCopy CS2とのコラボレーションでのワークフローが必須だろうし、下流工程では“PDF/X”(印刷用途向けのPDF規格)で入稿して、リモート校正からCTP(Computer To Plate、製版フィルムを使わない)出力という流れや工程管理、コストダウンといった話を交え、総合的に提案していくことが必要になります。
[――] 具体的にどういった働きかけを考えていますか?
[森脇] 弊社としては、出版社とその傘下の編集プロダクションに対して丸ごとワークフローを変える、といった事例をどんどん実現していくことで、より大規模な導入を促したり、市場全体をドライブ(牽引)していくことができるのではないかと考えています。そして、まさにようやくそうしたことを総合的に提案できるフェーズになったということです。

また、雑協((社)日本雑誌協会)を含めた形で電子送稿の協議会ができ、PDF/Xの検証が進んでいるとのお話をいただいています。仮にこの検証のある段階で“PDF/Xで標準化”にOKがでれば、広告から始まって編集とのコラボレーションによるワークフローが実現し、最終的にはPDF/Xで出力という、欧米並みの工程管理が実現できるということになります。まさに大きなウェーブになってきているわけです。
[――] (海外で先行して登場していた)InCopy CS2の存在は日本のユーザーにも知られていましたが、なぜ今リリースされたのでしょうか? また、InDesign CS2とInCopy CS2によるワークフローが日本の出版にどれだけ合致するのでしょうか?
[西山] これまでInCopyに関してヒアリングを続けていたのですが、その中で印象に残ったのが、「デジタルパブリッシングにおける“原稿用紙”のメタファー(代替)になるものがない」というご意見をいただいたことです。確かに、現在のワークフローで原稿用紙のような共通の書式ルールを持つテキストエディタに該当するものは存在していません。そういう意味では、InDesgin CS2とInCopy CS2はこれにピタっとはまると思います。
[森脇] InCopyの導入は、欧米では3年ほど前から始まっております。前述のようにInDesign、PDF/Xでのワークフロー導入の機運が日本でも高くなってきており、ようやく提供できる足並みが揃ったということです。しかし、日本と欧米では出版業界の構造が違います。米国の例を挙げれば、Time誌では社内にプリプレスのセクションを持っていて内製化しています。こうしたところは、一旦、会社の方針が決まれば、全社的にスピーディーに対応されますが、日本の伝統的な出版社では、実際は編集プロダクションなど外注に頼っているケースが多く、単純に導入が進むわけではありません。

こうした微妙な環境の中での正攻法としては、出版社の中に記者がいて、制作部門があるような出版社にアプローチしてワークフローの事例を作り、それをきちんと日本型のモデルケースとしていかなければならないと考えています。とはいえ、これは弊社だけで考えることではなくて、お客様といろいろとディスカッションしながら考えるものだと認識しています。そうして日本独特のワークフローに合うものを作り上げることができれば日本でもうまくいくと考えています。

それでも、欧米の出版と日本の出版では産業構造がかなり違いますので、どうしたら合わせていけるか、トライ&エラーがある程度必要だとは思います。
[――] InCopy CS2が印刷・出版に役立つことは理解できますが、今は紙だけではなくウェブサイトにも原稿は展開されています。執筆者が印刷とウェブでライティングツールを使い分けるのは難しいと思いますが?
[西山] InCopy CS2のウェブへの展開という壁については、おっしゃるとおりだと思います。将来的には印刷物のデジタル原稿用紙からウェブも含め、さまざまなパブリッシングのデジタル原稿用紙へとシフトしていける可能性があると考えています。
[――] ACS2の具体的な販売ターゲットとするユーザー層をお聞かせください。また、どのようにターゲットにアピールしていきますか?
[森脇] ご説明したように出版、印刷についてはかなりご理解が進んでいると考えています。これまでInDesignならびにACSは、生産性や効率性の向上がメインだったのですが、今後はよりクリエイティブなところの話で攻めることができればと考えています。

チャレンジとしてはデザインの領域です。具体的に言えば、Adobe Illustratorをお使いいただいているイラストレーターなどの方々です。そうした方たちに、いかにACS2に乗り換えていただけるか。そこはAdobe Bridgeやカラーマネージメントなどの総合力がポイントになると考えています。また、営業的な視点で言いますと、よりコアな、高い影響力を持ったクリエイター、アートディレクターのような方々に対して、デザイン・プロジェクトの中でのACS2の位置づけ、役割というものをキチンとアピールしたいと考えています。

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