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アナログ・デバイセズ、マクニカと連携して車載エレクトロニクス市場へ本格参入――安全性向上分野を軸に2008年で100億円の売り上げを目指す

2005年01月17日 23時07分更新

文● 編集部 小西利明

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現在の自動車に求められている電子機器は、こんなにも多い。アナログ・デバイセズは得意のMEMS技術やDSP技術を武器に日本の自動車会社での採用を狙う(同社のプレゼンテーション資料より引用。以下同)
現在の自動車に求められている電子機器は、こんなにも多い。アナログ・デバイセズは得意のMEMS技術やDSP技術を武器に日本の自動車会社での採用を狙う(同社のプレゼンテーション資料より引用。以下同)

半導体製造大手である米アナログ・デバイセズ社の日本法人アナログ・デバイセズ(株)は17日、自動車用のエレクトロニクス機器市場(オートモーティブ市場)への本格参入に向けて、2月1日よりオートモーティブ・セグメント・マーケティング部門の設立を発表。同社の正規販売代理店である(株)マクニカとの連携により、日本の自動車メーカー各社に向けた車載用のセンサー、DSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)などを拡販していく。

現代の自動車は、各種マイクロプロセッサーやDSP、センサー群を搭載することによって、急速にエレクトロニクス化されつつある。これは単にカーナビゲーションシステムや車載エンターテイメントシステムだけに止まらず、以下の5分野に及んでいる。半導体技術の進化によって、未来の車の機能とされていた高度なエンジン・車体制御や安全性技術が実現されつつあるのだ。

パワードレイン
エンジンやトランスミッションといった、動力伝達系制御。
車両制御(Body&Chassis)
サスペンション、ステアリング、ブレーキ制御。照明。運転席の各種モニター制御など。
車体制御(Comfort/Convenience)
ドライバーを補佐するクルーズコントロールや後方障害物検出装置。エアバッグ制御。カーエアコンやワイパーの制御など。
セイフティー
横滑り・横転防止。車線維持。車間距離制御。タイヤ空気圧警報など。
情報通信
カーナビゲーション。GPS。カーAV。高度道路情報システムなど。

従来同社では、同社の基盤技術の1つである“iMEMS”(integrated Micro Electro Mechanical System、集積マイクロエレクトロメカニカルシステム)により開発された加速度センサーを、エアバッグシステム向けに販売していた(この技術を元にした加速度センサーは、HDDの落下時衝撃検知にも使われている)。しかしヨーロッパを中心にセイフティー分野での自動車のエレクトロニクス化が急速に進んでいるのに対して、日本の自動車メーカー各社は取り組みが遅れ気味であり、また同社も日本メーカーに対する販売活動が十分ではなかったとしている。これは過去には同社が提供する半導体が、車載機器用半導体としてはオーバースペック気味で、価格も割高であったことも理由という。しかし2002年には自動車1台で256ドル(約2万6110円)程度だった車載機器用半導体も、2006年には324ドル(約3万3050円)程度に需要が増えるという試算(米Strategy Analytics社)もあるなど、需要自体が大きな伸びを期待できるうえ、高性能な半導体が必要とされる用途も増えている。

そこで同社では、車載機器市場を手がけるオートモーティブ・セグメント・マーケティング部門を設立し、米国本社との整合や戦略立案を行なう。それとともに、カーオーディオやカーナビゲーション分野での半導体販売の実績のある同社正規販売代理店であるマクニカの社内カンパニー“テクスターカンパニー”と連携して、国内の自動車メーカー各社にアナログ・デバイセズ製センサーやDSPを販売していく。マクニカでは車載機器市場に向けたアナログ・デバイセズ製品の販売のために、専任営業チームを2月1日より新設し、マーケティングから技術サポート、品質サポートまで、幅広く展開していくという。マクニカの専任営業チームは当初人員7名で始めるが、マクニカ/テクスターカンパニー プレジデントの北尚一氏は、「(市場の拡大を考慮すれば)3倍の人数は必要となる」とした。

日本法人で車載機器市場専門の部門を設立した理由について、同社オートモーティブ・セグメント・マーケティング部門ディレクターの片野豊氏は、2003年の世界でのメーカー別自動車生産台数で、トヨタ自動車(株)グループが世界第2位を記録するなど非常に好調に推移しており、日本の自動車メーカーや電装品メーカーなどで、車載機器向け半導体の重要度が増しているためとした。また日本車メーカーが欧州車メーカーに比べて、特に安全性向上のための車載電子機器の分野で立ち後れており、日本車メーカーが焦燥感を感じている点も挙げた。

世界半導体市場統計(WSTS)調べによる、地域別自動車生産台数推移の現在および将来。日米欧はほぼ横ばいだが、アジア/太平洋地域での伸びが顕著であり、自動車生産全体はまだ拡大を続けるとしている
世界半導体市場統計(WSTS)調べによる、地域別自動車生産台数推移の現在および将来。日米欧はほぼ横ばいだが、アジア/太平洋地域での伸びが顕著であり、自動車生産全体はまだ拡大を続けるとしている

同社がまず手がける分野は、既存のiMEMS技術ベースのエアバッグ用加速度センサーを基盤とした、車載用ジャイロセンサーなど。これらを用いて、エアバッグのような事故後の安全を確保する“パッシブ・セイフティー”から、事故自体を予防する“アクティブ・セイフティー”のためのシステムを実現する。アクティブ・セイフティーで実現される機能としては、車体の横滑り防止システムや、先進的アンチロックブレーキシステム、車線逸脱警報システム、座席に座っている人の重量を検知した最適なエアバッグコントロールなどが例として挙げられている。

車載電子機器による安全性の確保は、パッシブ・セイフティーからアクティブ・セイフティーへと進化している 同社が予測する将来の自動車で車載電子機器が活用されるセイフティーシステムの例。パッシブ・セイフティーに属する衝突検知システム、アクティブ・セイフティーの車両制御/動的車体制御システム、安全な運転をしやすくするドライバー向け情報システムなどで構成される
車載電子機器による安全性の確保は、パッシブ・セイフティーからアクティブ・セイフティーへと進化している同社が予測する将来の自動車で車載電子機器が活用されるセイフティーシステムの例。パッシブ・セイフティーに属する衝突検知システム、アクティブ・セイフティーの車両制御/動的車体制御システム、安全な運転をしやすくするドライバー向け情報システムなどで構成される

また車載情報・マルチメディア機器向けに、“Blackfin(ブラックフィン)プロセッサ”ファミリーを、またカーオーディオ向けに32bit 浮動小数点DSP“SHARC(シャーク)プロセッサ”を提供していく。

これらの販売施策により、同社では日本法人での車載機器向け半導体の売り上げを、2008年で100億円、ワールドワイドのアナログ・デバイセズ全体では、2008年に24億ドル(約2448億円)を目標とするとした。

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