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【最新パーツ性能チェック(Vol.29)】最後のクロックアップ!Pentium 4-570J(3.8GHz)のパフォーマンスと省電力機能を探る

2004年12月01日 22時29分更新

文● アスキープラス編集部 野口岳郎

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C1Eの省電力機能の効果は?

 Pentium 4-570Jは、3DではPentium 4 Extreme Edition-3.46GHzにあと一歩まで迫り、従来から非常に高速だった動画エンコード系ではさらに差を広げた。パフォーマンス面では予想どおりだ。それよりも注目したいのは、“E0”コアの新機能、C1Eによるアイドル時の消費電力削減効果のほうだ。
 そこで今回は、エンジニアリングサンプルのPentium 4-570J(“E0”コア、3.8GHz動作)、同じくESの550(“D0”コア、3.4GHz動作)、および、Pentium 4-570Jの倍率を17倍にセットして最高3.4GHz動作にしたもの(これはES品のみ可能で、製品版のPentium 4-570Jでは不可能)とで、アイドル時、および高負荷時の消費電力を測定してみた。最高動作周波数を揃えることで、“D0”と“E0”の消費電力の違いをできるだけ精密に測定しようという試みである。
 なお、CPU単体の電力は測定困難なので、以下に示す値はシステム全体(1GB DDR2メモリ、80GB HDD、RADEON X700Proビデオカード、CPUファン)の消費電力である。また、比較用にNewcastleコア(130nm)のAthlon 64-3500+システム(周辺機器は同じ、メモリのみDDR400)の消費電力も計測してみた。

消費電力の比較
システム全体の消費電力の比較(棒が短い方が低消費電力)。

 注目のアイドル時消費電力は、Pentium 4-550の115Wに対し、Pentium 4-570Jは108Wと、CPU自身のクロックは高いにもかかわらずPentium 4-570Jのほうが小さくなっている。また、上限クロックを3.4GHzに設定した場合でもアイドル時の電力は変わらない。このCPUに設定された、アイドル時用のある一定の周波数に引き下げられていることがわかる。

 115Wと108Wでは大した差ではないようにも見えるが、決してそうではない。
 まず、すでに述べたように、グラフの数値はシステム全体の消費電力で、CPU単体のものではない。今回使った“i925XE”マザー「D925XECV2」はCPUを抜いた状態では電源が入らないためCPU以外のシステムの電力参考値を得ることができなかったが、比較用のAthlon 64マザーでは、CPUを抜いた状態での消費電力は62Wだった。“i925XE”マザーでもだいたい同じくらいだとすると、CPU単体の電力消費はアイドル時にPentium 4-570Jが46W、Pentium 4-550は53Wということになり、消費電力は13%減ったことになる。

 さらに考慮すべき問題としては、今回の比較が“3.8GHz動作を保証されている”Pentium 4-570Jと、“3.4GHzが最高保証周波数である”Pentium 4-550との間でなされていることだ。一般に、高速動作が可能なトランジスタはスレッショルド電圧(Vt)が低く、Vtが低いトランジスタはリーク電流が多い。要するに、Pentium 4-570Jは3.8GHz動作を確実にするために、リーク電流がそれにともなって増えるのに目をつぶらなければならないという事情がある。いっぽうPentium 4-550は3.4GHzで動ければいいので、Vtはもう少し高くてもよく、その分、リーク電流は抑えられる。したがって、C1Eの効果を純粋に計測するためには、同じVt特性を持ったシリコンで、C1E装備、非装備のものを比べなくてはならない。まったく同じというのは無理でも、せめてPentium 4-570JとPentium 4-570、あるいはPentium 4-550JとPentium 4-550とで比べなければならない。
 残念ながらPentium 4-570は登場しないようであるし、Pentium 4-550Jも現状では入手できないため、今回はPentium 4-570JとPentium 4-550で比較したわけだが、仮に“J”でないPentium 4-570があれば、アイドル時システム電力は115Wではすまないし、仮にPentium 4-550Jがあればアイドル時電力は108Wより下になると考えられる。要するに、C1Eの効果は7Wよりは大きいはずなのである。

 Superπ(ほぼCPUのみに高負荷)、Unreal Tournament(ビデオカードにも高負荷)の最高消費電力はさすがにPentium 4-570Jが一番高い。それはまあいいのだが、Pentium 4-570Jを3.4GHz設定にした“仮想Pentium 4-550J”は、“D0”ステップのPentium 4-550よりも高負荷時の消費電力が高くなっているのは奇妙だ。“E0”ステップによってPentium 4-550JはTDPを115Wから84Wに下げた、という話と矛盾するからだ。
 この原因もおそらく、仮想Pentium 4-550JのシリコンがPentium 4-570Jであるため、リーク電流が多いためと考えられる。3.4GHzまでしか動けない「本物のPentium 4-550J」であれば、Vtはもっと高くてすむのでリーク電流は減るからだ。
 なお、Athlon 64-3500+との比較では、Pentium 4-570J@3.4GHzを用いた場合で、アイドル時、高負荷時ともにシステムレベルで35%も高い。3.8GHz動作のシリコンを使っていることによるリーク電流増加分を差し引くにしても、挽回できる差ではないだろう。しかも、データシートによれば、最近出回ってきた90nm SOIのAthlon 64コア“Winchester”では、TDPがさらに20Wほども低くなっている。“クールさ”の競争では、C1E登場後も、依然Athlon 64のリードが続きそうだ。

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