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【SEMICON Japan 2003 Vol.2】ASML、業界初となる“液浸”技術採用のリソグラフィースキャナーシステムを発表

2003年12月04日 19時20分更新

文● 編集部 内田泰仁

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オランダのASMLホールディングNV社(以下ASML)は3日、業界初となる“液浸”技術を採用したリソグラフィースキャナーシステム『TWINSCAN(ツインスキャン)XT:1250i』を発表した。出荷予定は2004年第3四半期。日本総代理店は(株)日立ハイテクノロジーズ。

『TWINSCAN XT:1250i』

従来の方式(左)と液浸技術を利用した場合(右)とのDOF(焦点深度)の違い。同じ開口数のレンズを利用しているが、DOFは液浸技術を利用した場合のほうが優れているという
『TWINSCAN XT:1250i』は、レンズ開口数0.85NA、露光波長193nmのリソグラフィースキャナーシステム。すでに発表されている『TWINSCAN XT:1250』の液浸技術搭載版という位置付けで、いずれも65nmノード、70nmハーフピッチレゾリューションのプロセスに対応する。液浸技術とは、従来のリソグラフィースキャナーではウエハーと露光レンズの間に空気が入っていたところに“浸水液”を入れ、この浸水液を通して露光処理を行なうという技術。この技術を採用することにより、従来とほぼ同じ露光レンズを使用しながらも、DOF(焦点深度)を深くして向上させ、チップの歩留まりの向上と利益向上を実現するという。

『TWINSCAN XT:1250』が先端量産対応を目的にしているのに対し、今回発表された『TWINSCAN XT:1250i』は、導入メーカー自身が液浸プロセスを実験、検証することを可能とするものだとしている。2004年第3四半期に出荷予定の第1号機は、台湾のTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Comapny)社に納品される予定。



『TWINSCAN XT:1250i』の“デュアルステージ設計技術”。左が“計測ステーション”右が“露出ステーション”で、露出ステーションに液浸技術が用いられている

ASMLのリソグラフィースキャナーシステムは、フォーカスと重ね合わせを含むウエハーの計測を行なう工程と、露光処理を行なう工程を、“計測ステーション”と“露出ステーション”という2つのステージに分けて並行して進める“デュアルステージ設計技術”を採用する。計測ステーションであらかじめウエハーの計測などを行なうことにより、露光処理を行なう際の高さやピントなどを事前に精密に設定することが可能なため、通常のシングルステージタイプのシステムよりさらに高精度な露光処理ができるとしている。液浸技術対応の『TWINSCAN XT:1250i』では、計測ステーションは“ドライステージ”、露出ステーションは浸水液を使用するため“ウェットステージ”と呼ぶという。

オランダASLM社、営業担当執行副社長のデイヴ・シャヴスティ氏同じくオランダASML社、マーケティングおよび技術担当上級副社長のポール・アッテカム氏

“SEMICON Japan 2003”会場に隣接するホテルで行なわれた記者発表会には、同社営業担当執行副社長のデイヴ・シャヴスティ(Dave Chavoustie)氏と、マーケティングおよび技術担当上級副社長のポール・アッテカム(Paul van Attekum)氏が出席、それぞれ、リソグラフィーシステム市場の現状と見通し、新製品の技術説明を行なった。

リソグラフィーシステム市場の売上額と売上台数の変遷リソグラフィーシステム市場における、ASMLおよび競合2社(ニコンおとびキヤノン)のシェア変遷

シャヴスティ氏の説明によると、セミコン市場全体の低迷に伴い「(リソグラフィーシステム業界は)過去3年は非常に苦しい」状態だったといい、売上台数、売上額ともに2000年をピークとして、2001~2003年は大きな落ち込みを見せたという。しかし、「リソグラフィー分野での技術の前進を背景に、2003年はこの数週間で好転傾向を見せている」として、2003年見込みは2002年と同水準ながら、2004年以降は再び上昇に転じ、2005年には売上ベースで再びピークを迎えるだろうと述べている。インストールベースで108台の“TWINSCAN”シリーズを出荷し(うち50台はアジア向けに出荷)、最新モデル『TWWINSCAN XT:1250』を出荷するなど技術的な向上も手伝って、リソグラフィースキャナーシステム市場におけるASMLの世界シェアは、2003年も50%前後となる見込みも明らかにした。また、日本市場については、東京エレクトロン(株)や大日本スクリーン製造(株)との協業などを通じて、引き続き力を入れていくと述べた。

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