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マイクロソフト、日本の中小企業・自治体・教育機関のIT支援施策“全国IT推進計画 II”を開始

2003年11月19日 00時00分更新

文● 編集部 内田泰仁

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マイクロソフト(株)は19日、日本政府が推進する“e-Japan戦略II”に対応した、日本の中小企業、自治体、教育機関に対するIT支援施策“全国IT推進計画 II”を11月下旬より展開すると発表した。この発表に併せ、同社は都内にて記者説明会を開催、来日中の米マイクロソフト社CEOのスティーブ・バルマー(Steve Ballmer)氏も出席してスピーチを行なったほか、関係自治体、協力団体・企業の代表者も参加した。

新計画の説明を行なったマイクロソフト(株)ゼネラルビジネス統括本部・東日本・西日本営業本部担当の常務執行役、眞柄泰利氏

“e-Japan戦略”は、IT革命により日本経済の活性化と国際競争力の強化を図り、日本を世界最先端のIT国家にする、という日本政府が推進するIT化構想。2001年に公開された最初の構想に引き続き、現在は“e-Japan戦略II”と呼ばれる第2フェーズに移行しており、電子政府構築計画などを含む、より具体的な構想が盛り込まれている。同社は、第1フェーズの“e-Japan戦略”に賛同し、IT化を目指す行政、中小企業、教育機関に対して、実践的な講座や体験を通したITの訴求活動などを行なう“全国IT推進計画”を2001年10月より展開してきたが、“e-Japan戦略II”の発表に伴って、この日発表された“全国IT推進計画II”によって従来の行動計画をさらに強化し、従来の計画で重点を置いていた啓発を中心としたインフラ整備から、ITを活用したより具体的な施策へと活動を広げていくという。

従来の“全国IT推進計画”によるここまでの成果を示したスライド“全国IT推進計画 II”におけるマイクロソフトと各パートナーとの連携モデル図

説明会では、マイクロソフトのゼネラルビジネス統括本部・東日本・西日本営業本部担当常務執行役である眞柄泰利氏は、“全国IT推進計画 II”の概要を説明。今回発表された新しい施策は、

中小規模事業所向けコンサルタントの育成、認定、活用
経済産業省によるITコーディネーター、オープンコンサルティングプロジェクトの資格者を対象に、“マイクロソフト認定システムコーディネータ(MCSC)”資格を制定
中堅・中小規模事業所IT化事例映像データベース“IT実践チャンネル”の新規構築
ブロードバンド環境を活用した事例データベースを公開、従来計画で展開していた“経革広場”“ブロードバンドスクール”“IT実践塾”といった啓発コンテンツに活用
IT導入を推進する金融面での環境整備
オリックス(株)、ダイヤモンドリース(株)との協力により、新たに中小規模事業所を対象としたファイナンシング・サービスの枠組みを提供。顧客企業から資金に関する相談を受けた際、同社認定パートナーを通じてオリックス、デイヤモンドリースと連携して、MSCSによるアドバイス、推薦を与信審査に活用(2004年1月提供開始予定)

の3つで、いずれも従来計画に基づいた過去2年間の活動を踏まえたものだとしている。また、従来の施策の強化計画も示し、

  • 地方自治体向け啓発コンテンツ“経革広場”を金融、医療、建設の各業界や公的団体も対象として、業種を越えたマーケットプレイス連携を実現し、オンラインビジネスコミュニティーを強化する
  • 地方自治体職員向けのスキルアップセミナーの開催や、教育機関向けの“ブロードバンドスクール”のカリキュラムの充実を図り、文教・自治体向け支援活動を強化する
  • 従来は建設業にフォーカスして取り組んできた業種別ソリューション提案を、医療・福祉関連業に拡大する
  • 中小企業向けコンテンツ“IT実践塾”のコンテンツを、業種・対象・IT導入成熟度別にそれぞれ拡充し、中小企業への啓発活動を強化する

とした。

米マイクロソフト社CEO、スティーブ・バルマー氏

“全国IT推進計画 II”の概要説明に先立ってスピーチを行なったバルマー氏は、日本のIT化に関して「ほかのどの市場よりも高い水準でブロードバンドが普及し、政府もITに対して高い関心を持っている」とその印象を述べ、現状、家庭や大企業を中心に非常に普及しているブロードバンドを含むITを、中小企業や教育、地方行政にも広げていくべきであるとした。また、IT業界の今後10年の見通しを「明るいものだ」とし、テクノロジーの進歩がさまざまなものを実現していくが、そういった中で同社は、「いかに社会に貢献できるか、いかに(ITを使って)ポテンシャルを引き出していけるか」という点に重きを置き、人、企業、自治体、教育機関がポテンシャルを引き出していけるような活動を行ないたいと述べた。

岡山市長、萩原誠司氏全国地域情報産業団体連合会会長、辻正氏(株)大塚商会・取締役社長、大塚裕司氏
説明会にてスピーチを行なった自治体、公的団体、企業の代表者

説明会には、前計画時に協力体制を築いた自治体、公的団体、企業の中から、岡山市長の萩原誠司氏、全国地域情報産業団体連合会会長の辻正氏、(株)大塚商会・取締役社長の大塚裕司氏も出席し、それぞれ挨拶を行なった。

萩原氏はこの中で、“ブロードバンドスクール”について触れ、「IT自体が学習対象になっている現状はまずい」と以前は感じていたとのことだが、導入により「(ITによって)子供たちのセルフティーチングが実現したことの大きさ」を効果として得られたと述べた。これによると、“ブロードバンドスクール”に参加した子供たちは、達成感や成果を得ることにより情緒が安定する傾向が見られ、東京と岡山という地理の違いはITを活用できれば問題にはならず、対等以上に議論などが行なえたという自信も付いたようだとした。また、辻氏は“地方の中小企業の代表”という立場から、「(ITバブル崩壊により)IT化を進めていなかった中小企業の中には、“ITバブルは一過性、導入しなくて正解”という意識もあったが、実際には中小企業にこそITの力が必要だ」として、“全国IT推進計画 II”の推進の必要性を述べた。

また、大塚氏は、自社のIT化推進を例に挙げ、「確信を持ってITを使うことが経営の改善に大きく寄与した」とした。また、マイクロソフトとの一連の活動を「グローバルな企業のピュアな(啓発)活動」と評し、日本を単なる大きな市場のひとつとして見るだけでなく、ITによる革新に積極的に取り組むことで社会に貢献しようとする立場に評価を示した。さらに「これまでは、ITを提供する側と、ITを活用する側との間にスタンスの違いがあった」と述べたが、新しい計画では「ITで何ができ、何が変わるのかをより明確にして、お客様の目線に合った、具体的な提案を行なっていきたい」と抱負を語った。

マイクロソフト(株)代表取締役社長、マイケル・ローディング氏。自身も“全国IT推進計画”の推進のため、社長就任から現在までに全国の全営業所を訪問しているとのこと

説明会の最後には、同社の代表取締役社長、マイケル・ローディング(Micheal Rawding)氏が壇上に立った。ローディング氏は、“全国IT推進計画 II”を「我々にとって非常に重要な活動」とし、実践的な行動と価値にフォーカスし、日本におけるエコシステム構築に努めていると述べた。今後は、新しい行動内容に沿って「今までの努力を強化し、積み上げていく」として、「企業や自治体、教育機関のポテンシャルを引き出すために、私自身もさらに計画にコミットしていきたい」と締めくくった。

なお、質疑応答のセクションでは、この計画の世界規模での展開についての質問が出たが、バルマー氏によると、“全国IT推進計画 II”自体は日本独自の取り組みであり、ほかの地域でもこの計画を適用していくことは可能かもしれないが、日本政府が強く“e-Japan戦略II”を進めており、ITインフラの下地もある日本の独自性が強い計画だとした。

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