望遠と広角の使い分け
2つの銅像が並んでいるが、広角レンズ(上)を使うと手前の像に比べて後ろの像がうんと小さくなり2つの距離が離れて見える。望遠を使えば(下)2つの像の大きさが近くなり、奥行き感がなくなる。 |
ビルの作例を見てもお分かりのように、広角と望遠を使い分けることで撮影者は遠近感を操ることができる。カメラから距離の違う2つの被写体がある場合、広角で撮れば2つの距離は離れて見え、望遠を使うと2つの距離が近く感じる。望遠レンズを使ったときに奥行き感がなくなることを「遠近感の圧縮」効果と呼ぶ。
デジタルカメラの場合は最初からズームレンズが搭載されている機種が多く、ほとんどのカメラで広角側は35mmカメラ換算で約35mm相当のレンズになる。単焦点レンズ搭載のデジカメでも大抵の機種がやはり35mm前後の焦点距離だ。35mmはさほど広いレンズではないが、見た目の感覚に近い画角が得られるのでスナップ撮影に向いているとも言える。
最近では高倍率ズーム搭載機が増えているが、普及機クラスのズーム機ではまだ3倍のズームが標準的だ。3倍ズームレンズの望遠側は焦点距離にして100mm前後となるが、望遠といっても銀塩カメラ的には「中望遠」クラスで、いわゆる銀塩カメラの「望遠レンズ」としてはまだ序の口といったあたりだ。
ただし、この100mm前後のレンズは、ポートレート撮影に向いている。人を撮影するときに使用すると自然な遠近感となり、通常見ている感じのままにアップで撮影ができる。広角側で顔を撮影すると遠近感が強く出て、顔が湾曲してしまう。逆に300mmなどの長すぎるレンズで撮影すると、顔は実際よりもフラットに写る。100mm前後の焦点距離が、話をしながらポートレート撮影ができ、ちょうどいい距離が保てる。
また、例えば何か商品を撮影するにも(オークションの出品などでWeb上に掲載するとき)撮影を自然な大きさで写るように撮影できるのもこの100mmクラスのレンズだ。
デジタルカメラの多くが35mm前後からという、あまり広角に強くないレンズを搭載していることを考えれば、28~200mm相当という広角に強いレンズを搭載するミノルタの「DiMAGE 7」は貴重な存在だ。 |
35~100mmあたりの焦点距離は、通常使用するには十分なレンズ域で、これ以上望遠になると手ブレの心配が大きくなって不用意に使うとブレだらけの写真になりがちだ。ちなみに35mmの銀塩カメラの場合、標準ズームとは35~105mmや、やや広角側に寄った28~84mmあたりを指す。
当サイトで過去にレビューしているデジタルカメラでは、
- 光学5倍ズームで190mm相当のソニー「Cyber-shot DSC-F707」
- 光学6倍ズームで228mm相当の富士写真フイルム「FinePix 2800Z」
- 光学10倍ズームで380mm相当のオリンパス「CAMEDIA C-700 UltraZoom」
――などなど、望遠側に強い製品はけっこうある。しかし、広角側が35mm以下という製品は極端に少なく、
- 光学7倍ズームで広角28mm相当のミノルタ「DiMAGE 7」
- 光学3倍ズームで広角28mm相当のニコン「COOLPIX 5000」
- 光学2倍ズームで広角30mm相当のコダック「Kodak EasyShare DX3215 Zoom」
という3製品しかない。
ズーム倍率で望遠撮影に強いというのは初心者にアピールしやすいが、構図の幅を広げることができる広角側に寄ったレンズを搭載する機種が多く出てくることを期待したい。