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Cyber-shot DSC-F707

Cyber-shot DSC-F707

2001年09月06日 21時17分更新

文● 行正

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まっ暗闇でも撮れるナイトショットモード

暗闇の猫
撮影サンプル3。ナイトショットで撮影した画像。2560×1920ドットを640×480ドットにリサイズ(F2.8、1/8秒)。ナイトショット時にはシャッター速度や絞り、露出補正を行うことはできない。“鼻をつままれてもわからない”くらいの暗闇でもそれなりに撮れるが、瞳孔が開いたところに赤外線を照射するため、正面からのポートレートではフラッシュを焚いて撮ったときのような赤目現象が起きてしまう。

 F707の大きな特徴が「ナイトショット」の搭載だ。これは赤外線での撮影を可能にする機能だ。CCDは、可視光線だけなく赤外線に対しても感度を持つ。このため、デジタルカメラやDVカムコーダでは、レンズとCCDの間に“赤外線カットフィルタ”と呼ばれる透明な樹脂を配置し、そこで赤外線をカットして可視光線のみがCCDに届くようにしている。逆に、この赤外線カットフィルタを取り外せば、赤外線域の撮影が可能となるわけだ(実際には赤外線を通す赤外線カットフィルタを普通の透明樹脂に交換するほか、赤外線のみでの写真を撮るためには赤外線を透過して可視光を遮るフィルタが必要となる)。



ナイトショット
撮影サンプル4。2560×1920ドットを640×480ドットにリサイズ。ナイトショットを用いて主な街道に設置されている自動車ナンバープレート自動読み取り装置(通称Nシステム)を撮影。肉眼(可視光)ではまったくわからないが、赤外線域で見ると非常に明るく発光している。TVのリモコンやノートPCの赤外線通信ポートの点滅もよくわかる。

 F707においては、本体上面のモードスイッチをナイトショットにすると同時にレンズ部の根元付近でカタッという小さな音がして、赤外線カットフィルタが切り換わったことがわかる。シャッターボタンを半押しにすると、レンズ上の2つの丸い窓から赤外線が照射される。赤外線の照射は、CCDが赤外線が撮れるといっても人や建物の放つ放射熱を検出できるわけではなく、撮影するためには赤外線の光源が必要なためだ。なお、赤外線照射窓は、真っ暗な状態ではほんのりと赤く光るものの、ほとんど気づかない程度だ。
 ナイトショットモードの威力は非常に高く、まったくの暗闇においてもポートレートを撮ることが可能だ。ただし、真っ暗の状況で赤外線照射光のみで撮影すると、画像はグレースケールとなる。赤外線照射光以外の光源がある場合には画像に色が載るものの、全体的に緑っぽい色合いになってしまう。



F707正面
F707のフロントビュー。レンズ上部のCarl Zeissのロゴ左右にあるのが赤外線照射器。レンズの右に見える孔がホログラフィックAF用レーザー照射器。

 照射する赤外線の照度はあまり強くなく、被写体が4mより遠いと非常に暗くなる(カタログ上の撮影可能距離は最大4.5m)ため、できればアクセサリシューに装着できる赤外線照射器がオプションであればよいだろう。

 F707には、「ナイトフーレミング」という機能も備わっている。薄暗い場所での記念撮影など、フラッシュを焚いても問題がない場合でも、暗すぎて液晶モニタ上では構図を決めにくい場合に利用できる機能だ。ナイトフレーミングでは、最初はナイトショット同様に赤外線暗視となるが、シャッターを半押しにするとAF補助光が発光し、シャッターを切るとフラッシュを焚いて、赤外線カットフィルタを通した画像が記録される。つまり、構図を決めるフレーミングのときはあたりが暗いままで可能で、実際に撮るときは明るく撮れるわけだ。



ナイトショット昼間風景
撮影サンプル5。ナイトショット機能の活用例。草や木は赤外線を反射し、アスファルトや水面には吸収されることから、風景を撮ると雪景色のようになる。なお、撮影時にはかなり濃いフィルタを用いたが、昼間といっても曇天であり、晴天では風景のほとんどが白とびする。

 さて、赤外線暗視機能といえば、'98年にソニーが発売した「DCR-TRV9」のナイトショット機能における騒動が思い起こされる。赤外線は可視光よりも透過率が高いため、カメラが照射する赤外線よりも強い光(つまり日光)の下で、可視光を通さないフィルタをレンズの前に装着すれば、薄い衣類の下が透けて見えるというものだ。問題となったDCR-TRV9では、明るい昼間にナイトショットモードを使うと画像が白とびする「修正モデル」が発売されたが、F707も同様で、十分な光量下でナイトショットを用いれば、CCDが必要以上の光量を受けて白とびした画像となる。



ナイトショットの活用例
撮影サンプル6。ナイトショット機能の活用例。樹木の葉は赤外線を透過しやすいため半透明となり、枝は赤外線を通さないのでシルエットとなる。

 なお、銀塩カメラにおいても赤外線域の感度の高いフィルムが発売されているが、これらはとくに暗視や透け写真を撮ることを狙ったものではない。研究用や調査用などでの撮影もあるが、コンシューマレベルでは赤外線の透過率の高さを利用し、遠景においてもコントラストが下がらず、ガスやもやの影響を排除してくっきりとした絵が撮れるため、山岳風景写真などで使われている。また、肌のディティールが綺麗に出るため芸術写真などでも利用されている。デジタルカメラにおいてもこれらを効果として用いることができれば非常におもしろいと思うのだが、薄い衣類の下がわずかに透けるということに(メーカー/消費者ともに)過剰に反応し、デジタルカメラの可能性が制限されてしまうことは残念でならない。



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