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アイスペイ、KDDIなど6社、携帯電話を使った少額決済サービスを11月から実証実験

2001年08月22日 23時31分更新

文● 編集部 佐々木千之

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アイスペイジャパン(株)(icePay Japan)(※1)、ケイディーディーアイ(株)(KDDI)、イーバンク銀行(株)、伊藤忠テクノサイエンス(株)(CTC)、(株)プロシード、韓国のWoori Technology(ウーリテクノロジー)社の6社は22日、携帯電話を使って決済を行なう、ネットバンク決済連動型モバイルコマースサービス“icePay(アイスペイ)”を、2002年春をめどに開始すると発表した。本サービスに先駆けて、11月~2002年1月の3ヵ月間に1万人規模の実証実験を行なう。

※1 icePay Japanは、プロシードとWoori Technologyが、8月に設立した会社。本社は東京都港区、資本金は3000万円。代表取締役会長はWoori TechnologyのCEO出もあるキム・トウ・ウ(Kim Deok Woo)氏、代表取締役社長はプロシードの斎藤良弘氏が務める。icePayサービス事業の商用化準備と実証実験の事務局としての役割を持つ。

アイスペイジャパン代表取締役社長の斎藤良弘氏
アイスペイジャパン代表取締役社長の斎藤良弘氏

icePayでは、韓国のWooriが開発した暗号アルゴリズムを、小型のモジュール“icePayモジュール”に実装し、このモジュールを携帯電話に装着して安全性の高い通信を行ない、SSLなどの暗号通信機能を持たない携帯電話においても決済を伴ったモバイルコマースを可能にする。モジュールのコストは現在1000円ほどだが、量産すれば数百円程度になるという。商用サービス開始時にモジュールを無償配布するかどうかは未定。

“icePayモジュール”
“icePayモジュール”。モジュールには2つのボタンがあり、特定のURLを割り付けることで、店舗などが自社サイトへの誘導に利用できる仕組み

決済の際に行なうユーザー認証には、携帯電話識別番号とユーザーが指定する暗証番号、icePayモジュール内で生成される文字列を組み合わせ、ワンタイムパスワード(使い捨てパスワード)方式を使用する。3つの要素を利用しているため、他人のicePayモジュールを手に入れてユーザーになりすますといったことは難しいとしている。

icePayの利用者はイーバンク銀行の口座を開設する必要がある。利用の際は、携帯電話のインターネットアクセス機能を使ってicePayのポータルサイトに接続し、ユーザー認証を行なった後、オンラインショッピングで商品の購入が行なえる。購入代金は、イーバンク銀行口座から決済される。icePayは、オンライン店舗だけでなく実店舗でも利用できる。実店舗の場合は、icePayモジュールを店舗に置いたKDDIの端末に接続し、店員が操作をした後で、ユーザーが金額を確認して暗証番号を入力することで支払いが成立する仕組み。また、イーバンク銀行がサービスを予定している、メールアドレスを用いて、口座を持つユーザー同士で送金が行なえるサービス“ペイパル”についてもサポートする計画。

icePayのサービス概要
icePayのサービス概要

11月に開始する実証実験は、全国を対象に5000人のモニターユーザーを募るほか、実験に参加する企業(商店など)(※2)の会員や従業員など5000人を含め、合わせて1万人で実施する。一般募集は、icePayのホームページや参加企業店舗などを通じて入手できる申込書によって行なう。実験に参加するには、(株)エーユー(au)の携帯電話(キーボード“イージーパレット”が利用できるもの)の利用者であることが必須。

※2 22日現在の参加企業は、日本電気(株)(BIGLOBE)、(株)翔泳社、キューサイ(株)、東京音楽文化協会(東京音協)、UNITEL(韓国サムソングループ)、フットコール(株)、イードットコム、Java Cafe、日本エンタープライズ(株)、ケイツーリスト(株)、アイテック阪神(株)、(株)チケットパラダイス、(株)アジアン・カルチャー・オーガナイズ、(株)ココデス、(株)ビットウェイブ、沖縄セルラー電話(株)(au ezタウンサイト)、沖縄建国祭通り商店街(以上17社/団体)。今後さらに増加予定。

この実証実験では、ネットレイティングス(株)の協力によって、オンラインサイトの利用状況データなどのマーケティングデータを集め、icePay商用化の判断や商用化時の改善などに役立てるとしている。

icePay事業関連の6社の代表
icePay事業関連の6社の代表。左からCTCの後藤氏、KDDIの原口氏、icePay Japanの斎藤社長、プロシードの西野氏、Woori Technologyのキム氏、イーバンク銀行の河野氏

実証実験においては、icePayモジュールが利用できる端末がauの一部端末に限られているが、2002年春を予定している商用化時には、ほかのキャリアーでも利用できるようにする計画で、商用化後の1年間でicePayモジュール100万個、3年後には500万個の配布を予定している。また、今回の発表は決済システムのみを提供するものだが、決済した商品の配送も含めたサービスを計画中であるという。

発表会で挨拶した、KDDIのau商品企画本部次長の原口英之氏は「icePayでは、携帯電話さえ持っていればクレジットカードを持っていないユーザーでもキャッシュレスで決済できる。EZwebに参加してもらっているすべてのサイトに対して決済サービスを提供できることがメリットだ」と、携帯電話ユーザーなら誰でも使える決済サービスであると強調した。

icePayでは、高校生などの若年層に対してもキャッシュレス決済手段を提供(※3)することでユーザーのすそ野を広げ、またキャリアーとの契約のない非公式店舗サイトでも利用できるオンライン決済手段を提供することで、取り引きの間口を広げようとしている。

※3 イーバンク銀行に口座を開設することは必要。

ただ、それほど大きなものではないとはいえ、携帯電話にモジュールを装着して利用するというスタイルが定着するかどうか。「外付けにしたことで、最新のセキュリティー機能を持たない既存の端末でも利用できる」というが、日本の携帯電話ユーザーの多くが1年以内で端末を新機種に交換している状況では、むしろ新機種にこの機能を積極的に組み込んでいったほうが良いのではないか。また、クレジットカードなどすでに別の決済手段を持っているユーザーに、利用してみようと思わせるほどの利便性があるのかという疑問も残る。11月からの実証実験で、ユーザーがどのような判断をするかが注目される。

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