●マザーボードの準備と保冷について(その1)
マザーボード上のケミコンをハンダ面に移設した。ところが新たな問題が発生 |
冷却装置の準備は順調に進んだが、マザーボードに対していくつかの問題点が浮上してきた。一つは、マザーボード上にある電源回路のコイルやケミカルコンデンサ(以下、ケミコン)が前述の断熱材と干渉して双方の“クリぬいてマス!”を好位置に配置できないのだ。その対策として干渉する部分の断熱材をカットする方法が最も手軽なのだが、本来の冷却効率を損なうだけでなくケミコンの温度を極端に低下させる懸念もある。もしも、ケミコンの周囲温度をマイナス40℃より低い温度に下げてしまうと、本来の静電容量を保てない性質があり起動困難や動作不安定の要因となることは、過去に液化炭酸を使った冷却実験から経験済だ。ここは、手間取るがケミコンをマザーボードのハンダ面に移設することに…。だが、そうすると新たな問題を抱え込む結果となる。移設したケミコンのおかげでマザーボードを支持するシャーシが必要になってきたのだ。どうやら、我がオーバークロック研究室もユニークなPCを開発している「PCなんでも改造総研」の足元にも及ばないが、森本琢司氏を見習って電動ドリルやカナ鋸を駆使しなくてはならないようだ。
マザーボードを支持するシャーシを製作。1.6mm厚のアルミパネルに14本の50mmスペーサーをマザーボードの取付穴に合わせて配置した |
シャーシの設計は、次の通りに考えた。まず、加工が容易なアルミパネルをマザーボードとほぼ同じサイズに切り出す。そしてマザーボードの取付穴に準じたビス穴をあけ、そこにスペーサーを立てる。パネルの厚みは1.6mmもあれば上等だろう。スペーサーの長さは、ケミコンの高さが約30mmであったが余裕をみて50mmとした(必要に応じてケミコンの断熱処理も想定)。それと“クリぬいてマス!MAXX”の重量を考えると単にマザーボードの取付穴に対応するスペーサーだけで支持するとマザーボードが反り返ってしまう。そこでCPUソケットの周りに加工されたCPUクーラーの取付穴を利用し、ここにもスペーサーを立てて支持しようと考えたのである。
近所の食料品店で調達した「リンゴ箱」(近頃は木箱でなくて発泡スチロール製)にEP-8K7Aを置いてみる。なお、壁面の厚みは約25mmほどで強度は十だが少し大きいかもしれない。配線の都合を考えて箱の壁面に穴を開けたりして本番に備える。さらに空冷で起動させてBIOSセットアップから必ず起動できるデフォルトのパラメータでセッティング項目を埋めておく |
そしてもう一つ問題があった。冷却装置の断熱処理はいいとしても、マザーボード全体の周囲温度を下げる必要性がある。冷却装置によってその周辺は極低温となるが、離れる(あるいは、温度的に遠ざかる)にしたがって結露温度がどこかに分布するわけでそこに発生する水滴が動作不安定の原因となることも予想できる。よって室温から何らかの断熱処理を施し、周囲温度を零下に下げた環境下でシステムを動作させるのが望ましい。
この問題の解決策としては、ホームセンターで見かける発泡スチロール製の簡易クーラーBOXや段ボールの空き箱と十分な厚みのある発泡スチロールパネルを組み合わせて作成した小箱などを利用する。つまり、この箱(以下、保冷BOX)の中にマザーボードを配置して本来のCPU冷却を実施するとともに、保冷BOXの空きスペースに適量のドライアイスを置けば上述の問題を回避できるだろう。ちなみに筆者は、発泡スチロール製で外寸410(D)×480(W)×250(H)mmの箱を近所の食料品店で分けてもらった。これは、「リンゴ」を搬送する際のケースで空箱は使い道がなければ処分するとのこと。「簡易クーラーBOXにしたいので分けて欲しい」とご主人に相談すると、使っていない空箱があるとのことで一箱をゲットできた。費用は無料とのことだったが、今後のことも考えて今晩のデザートに「梨」の一盛りを購入した。