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ブロードバンドの屋台骨 「メトロ」を完全解剖

ダークファイバに灯をともせ!─動向編

2001年04月12日 08時21分更新

文● データコントロルズ 島田仁志

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「メトロポリタンエリアネットワーク(MAN)」とは、地域を限定した高速ネットワーク技術の総称であり、LANとWANの中間に位置するネットワークと理解されている。「都市圏丸ごとネットワーク化」ということで、単なる市町村単位のネットワークに比べて伝送範囲は80km~100kmとかなり広い。都市に敷設されている光ファイバ網を駆使して数多くのエンドユーザーからの加入者線(アクセスライン)を集線し、都市圏間をまたがる長距離中継回線(ロングホール)に流すのがメトロの役割である。

 メトロのインフラは新設・敷設済みの光ファイバ網である。構内LANの敷設権はあくまで建物の所有者・利用者にあるわけだが、公衆の町の中を勝手に光ファイバ化するわけにはいかない。当然、今までWAN(Wide Area Network)のサービスを展開してきた通信事業者(キャリア)が、こうした光ファイバ網の敷設を行なっている。日本ではNTTが早くからFTTH(Fiber To The Home)構想を打ち出し、全国各地での光ファイバ網の拡充に力を入れてきた。そして、このファイバ網をベースに高速なネットワークサービスを展開しようとしている。

 しかし現在、メトロのようなネットワークを使ってブロードバンドのサービスを提供する業者は、電話会社だけではない。xDSLのアクセスプロバイダ、ワイヤレスアクセスプロバイダ(WASP:Wireless Access Service Provider)などは、日本でも続々増えている。また、ストリーミングコンテンツを配信する業者や企業のサーバをホスティングするデータセンター業者、あるいはビルやマンションなどをまるごとLAN化し、メトロなどにつなぎこむBLEC(Building Local Exchange Carrier)などといったブロードバンド時代ならではの新種の通信事業者も次々とサービスに参入している。

 こうした業者たちが一からファイバ網を構築するのかといえば、そんなことはない。通信事業者が敷設した未使用の光ファイバ=ダークファイバをさまざまなサービスプロバイダが借り受けることで、個人や企業を対象にさまざまなサービスを提供できるようになる。

 今までNTTは光ファイバで展開されるサービスのシェアが電話サービスに比べて大きくないことを理由に、ダークファイバの開放に難色を示してきた。自前で敷設した光ファイバ網を他の業者に貸し出さなければならないわけだから、反発するのも当然といえば当然である。しかし、競争原理が導入されなければ、「高くて遅い日本のインターネット」という状況はいつまでたっても改善されないだろう。

 1999年の加入者電話回線の開放(ドライカッパ)に続き、昨年は光ファイバ芯線をアンバンドル(分離)して提供する「ダークファイバ開放」の圧力もいよいよ高まってきた。昨年末、郵政相の諮問機関である電気通信審議会は「接続ルールの見直しについて」において、光ファイバの開放を義務化する方針を明らかにした。これを受け2000年の12月、NTT東西はついに光ファイバ網の開放に踏み切り、東京めたりっく通信はダークファイバを利用する最初のプロバイダとして名を残すこととなった。

新世代のMAN図
メトロとはLANとWANの中間にあたる概念。およそ100km範囲内で各地域や役所・ビルなどのネットワークを冗長性の高いリング状ネットワークに集約し、長距離中継回線に流すという役割を果たす

BLEC(Building Local Exchange Carrier)

 オフィスビルのテナントやマンションの住人などを顧客として、ネットワークサービスを提供する新興の通信事業者。「ビーレック」と発音する。メトロの回線をビルに引き込み、ネットワークを構築し、インターネット接続やVoIPによる音声通話などのサービスを提供する。

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