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英Picsel Technologies、モバイル機器でMPEG-4やWordファイルを表示できるブラウザーを公開

2000年12月04日 22時00分更新

文● 岡田 靖

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多種多様なフォーマットの文書を表示できる“スーパーブラウザー”

英Picsel Technologies社は1日、都内で報道関係者向けの説明会を開催し、モバイル機器でパソコンで利用されている多様なフォーマットのファイルが閲覧できるブラウザー『ePAGE』のデモンストレーションを行なった。ePAGEは、HTMLだけでなく、PDFやWordなどの各種ファイル(※1)を閲覧、印刷でき、しかも専用のOSを含めた合計のファイルサイズがわずか1MBという小ささを実現したソフトウェアだ。すでに多言語対応も進んでおり、西ヨーロッパ、日本、ハングル、アラビア、キリルの各種文字が利用可能となっている。また、MPEG-4形式の動画であれば、最大16ファイルもの同時再生を行なえるとしている。

※1 Word、WordPerfect、PostScript、PCL、DTD、MPEG-2、MPEG-4、QuickTime、Real Media、Macromedia Flash、PDF、eBook、Windows Media、JPEG、TIFF、HTML、XML、PGML。

デモ機
デモ機はStrongARMベースの開発用マシン。ディスプレーはタッチパネル付きのVGAサイズのもの
デモ機のアップ
デモ機の回路部分のアップ。中央のケーブルコネクターの真下に見えるのがインテル製StrongARM

現在のところ、対応するCPUは英アーム社のARM(StrongARM含む)のみだが、2001年第1四半期にはMIPSアーキテクチャーに対応する予定で、そのほかのCPUに関しても対応を検討中という。また、ePAGEは基本的にOSを含むフルセットで開発されているが、ほかのOSへの移植も進められており、アプリケーションとして動作させることも可能になる。直近の予定では、やはり2001年第1四半期に英シンビアン社の『EPOC OS』対応がなされ、またJavaベースの動作も可能になるという。『μITRON』や『PalmOS』などの移植も検討中としている。

HTMLファイルのブラウジング
ePAGEデモ機で、HTMLファイルをブラウジングしたところ。左側にサムネイルと小さなメニューがある
部分拡大機能のデモ
ePAGEデモ機で、PDFファイルを表示し、部分拡大機能で拡大表示するデモ。倍率も自在に変更できる
PostScriptファイルの表示例
限られたリソースでありながら、高度な処理を必要とするPostScriptファイルでも鮮明に表示する
PostScriptファイルの表示例
全画面表示モードもある。表示スタイルや操作方法などのヒューマンインターフェース部分は、柔軟に変更できるとのことだ

提供形態は組込用のみというビジネススタイル

ePAGEは、非常に興味深いアプリケーションで、ほかのOSやCPUへの対応が期待される。だが、Picsel Technologiesでは、これらを単体のソフトウェアとして発売することはせず、あくまでもOEM用、組込用のソフトウェアとして展開する方針だという。

ePAGEはソフトウェア部品を取捨選択することで、必要な機能だけを最小のメモリー容量で搭載できる仕組みになっており、利用する機器メーカーの自由度が高い。ARMを最初のプラットフォームとしたことからもわかるとおり、主に携帯電話をターゲットとしている。また、印刷機能や編集機能も持っているため、PDAやSTB(SetTop Box)などへの展開も可能だ。

ARMは米クアルコム社のCDMA携帯電話向けチップセットのコアなどとして広く採用されており、第3世代携帯電話での主力CPUコアになると期待されている。第3世代携帯電話での動画機能を、このePAGEベースで実現すれば、高速な通信を生かした各種ファイルのやりとりが可能になることから、まずは電話機メーカーを中心にアプローチしているという。すでに日本電気(株)、沖電気工業(株)と提携関係を結んでおり、2001年には日本メーカーだけで10社のライセンス関係獲得を狙っているという。アリ・アドナン(Ali Adnan)氏によれば、早ければ2001年9月頃には、ePAGE搭載製品が市場に出回るとしている。

アリ・アドナン氏Picsel Technologiesのアリ・アドナン氏。日本語も堪能で、精力的に営業活動を続けている

Picsel Technologiesは'98年設立と新しく、またデモ機も完成品を想像させるには遠いものだが、開発部門の強化を続けており、また日本や米国へのセールス活動も積極的に行なっている。PCや、Windows CEマシンなど、多機能な機器の1アプリケーションとしての展開は考慮していないというが、それは「高価なPCやソフトを買うことなく、もっと安い機器で、しかも各種のデータを永続的に扱う」という開発コンセプトを守っているためだ。安価なメール端末や携帯電話など、一般消費者に最も近い機器をターゲットにすることで、より多くのユーザーが恩恵を受けるようになる。Picsel Technologiesは、テクノロジーだけでなく、戦略的な思想を持った企業といえるだろう。

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