このページの本文へ

欧州連合、商談会の“Gateway to Japan”を開催--ヨーロッパの技術を日本に紹介

1999年10月20日 00時00分更新

文● 編集部 鹿毛正之

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

欧州連合(EU)は19日、EU加盟国の対日輸出促進を目的とした商談会、“Gateway to Japan”を開催した。これは、EUが推進する輸出促進プログラム“EXPROM”の一環として催されたもの。

Gateway to Japanでは、9つの産業分野において商談会が開催される。19日には、情報通信技術分野の企業29社が来日し、都内のホテルに設けられた会場においてソフトウェアなどのデモンストレーションを行なった。

※今回の商談会には、以下の11ヵ国から出展企業が参加した
オーストリア、ベルギー、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、イタリア、オランダ、ポルトガル、スウェーデン、イギリス


都内のホテルで開催された“情報通信技術商談会”
都内のホテルで開催された“情報通信技術商談会”



今回来日した企業は、そのほとんどが日本に支社や支店を置いていない。そのため、商談会の目的はおもに、日本における販売代理店を探すことにある。

来日した29社の多くは企業向けのソフトやシステムなどを扱っており、その内容もホテル向けの管理システムや金融機関向けの分析ソフトなど、かなり用途が限定されている。今回は、個人ユーザーにも興味深いと思われる企業を取り上げてみた。

インクジェットプリンターで印刷物の色見本を安価に制作--Best社

ドイツのBest(ベスト)社は、出版社や印刷会社向けのソフトを開発しているベンダー。同社の『BESTColor 4.0』は、印刷物の色校正を、インクジェットプリンターで行なうというパッケージソフトだ。高価な専用プリンターを使う必要を省き、校正プロセスに掛かるコストを削減することができるという。

独BEST社の代表取締役を務めるThorsten Breiding(トァルステン・ブライディング)氏。手前のパッケージはドイツで実際に売られているもの
独BEST社の代表取締役を務めるThorsten Breiding(トァルステン・ブライディング)氏。手前のパッケージはドイツで実際に売られているもの



コンピューター上で出版物のデザインを行なうDTP(デスクトップパブリッシング)では、ディスプレーに表示されるRGB画像と、実際に印刷されるCMYK画像のカラーマッチングを行なう必要がある。この色校正作業には専用のプリンターで出力した色見本を利用するが、この場合、コストが高くなるという欠点がある。また、また、小規模な編集プロダクションでは、色校正の印刷を外部に委託しなければならず、かなりの手間が掛かる。

BESTColorは、この色校正を安価なインクジェットプリンターで可能にするというもの。最初のセッティング時にのみ、専用のハードウェアを利用して、プリンター自体の色バランスを設定/調節する。そうすれば、その後は専用プリンターで出力するのと同様の色合いを、インクジェットプリンターで再現できるようになるという。

また、出版物の印刷では、少し地色がついた用紙を使うことがある(黄色っぽい用紙が多い)。BESTcolorでは、この地色のシミュレーションも行ない、文字や写真が印刷されていない白地の部分に、地色をうっすらと印刷するという機能も持っている。

BESTColorはポストスクリプト(PS1/2)にも対応しており、最終的な仕上がりと同様のイメージを印刷することが可能だ。ドイツでは、表紙を含めた全ページの色校正を、インクジェットプリンターで済ませている週刊誌もあるという。

同社ではすでに、インターフェースの日本語化を済ませている。日本独自の版型(菊版/四六版など)にはまだ対応していないが、近いうちに日本の印刷プロセスにあわせたローカライズを行なう予定だという。

BESTColorのドイツにおける販売価格は2500マルク(約14万7000円)。対応OSはWindows95/98/NT4.0のみだが、ネットワーク越しにMacintoshでBESTColorの機能を利用することもできるという。'97年の発売以来、約1万本を販売しており、アジア地域では香港で販売活動を行なっているとのことだ。

LL教育用のシステムを構築、MP3対応の動画ファイルプレーヤーも提供--Teleste Educational社

フィンランドのTeleste Educational(テレステ・エデュケーショナル)社は、視聴覚教育(LL教育)の分野で30年以上の実績を持つ。'97年からは、マルチメディアを応用したLL教育システムの『Information and Communication Manager』を販売しており、ヨーロッパでは50パーセント、北米では45パーセントのシェアを持つという。また、香港や中国においても納入実績があるとのことだ。

Information and Communication Managerは、教師側のインターフェースと生徒側のインターフェースを含むシステムで構築されている。この生徒用のインターフェースとして利用されるのが、『Divace』(ディバース)というデジタルプレーヤーだ。Divaceにはグループ学習用の『Duo Divace』と、スタンドアローンで使用する『Solo Divace』の2タイプが用意されている。

Divaceはシンプルなインターフェースを持つ。下側のボタンは左から、リピート(選択範囲の繰り返し再生)、リキャップ(特定フレーズのみの再生)、スピーチ(フレーズに合わせて生徒が発音などを録音する)、再生ボタンと並んでいる
Divaceはシンプルなインターフェースを持つ。下側のボタンは左から、リピート(選択範囲の繰り返し再生)、リキャップ(特定フレーズのみの再生)、スピーチ(フレーズに合わせて生徒が発音などを録音する)、再生ボタンと並んでいる



タイムライン中央部に見える2つの三角マークをドラッグすることで、挟まれた部分だけを反復再生させることが可能だ
タイムライン中央部に見える2つの三角マークをドラッグすることで、挟まれた部分だけを反復再生させることが可能だ



Divaceは、MPEG/MOV/AVIといった動画ファイルに加え、MP3やWAVといった音声ファイルにも対応する。また、リアルオーディオ/ビデオファイルのRAMファイルにも対応する。そのため、汎用のデジタルプレーヤーとして利用することも可能だ。

MPEGファイルの再生を行なっているところ。画面にあわせて、音声を上書き録音することもできる。また、画面の下にテキストを表示させることもでき、テキストを表示させる時間を設定することも可能だ
MPEGファイルの再生を行なっているところ。画面にあわせて、音声を上書き録音することもできる。また、画面の下にテキストを表示させることもでき、テキストを表示させる時間を設定することも可能だ



Solo Divaceは、同社のサイトから無償ダウンロードすることが可能。対応OSはWindows 95/98のみで、Macintosh版を開発するつもりはないとのことだ。ダウンロードサイトは約3週間前に開設されたばかりだが、すでに30人ほどの日本人がDivaceをダウンロードしたという。

Teleste Educational社で、アジア太平洋地域担当のセールスマネージャーを務めるAri Tikakoski(アリ・ティカコスキー)氏
Teleste Educational社で、アジア太平洋地域担当のセールスマネージャーを務めるAri Tikakoski(アリ・ティカコスキー)氏



動画入りのマルチメディアタイトルを作成--Schima & Scott社

ドイツのSchima & Scott(シーマ・ウント・スコット)社は、“ヴィジュアルコンセプト”を標榜するソフトウェアベンダー。同社が提供する『Visus』(ヴィサス)は、画像/動画/ハイパーリンクを埋め込んだマルチメディアタイトルを作成するためのオーサリングソフトだ。

ディレクターなどのオーサリングソフトと違うのは、タイムラインウインドーなど、複雑な操作を必要とするインターフェースを持たないこと。そのためアニメーションを作成するなど手の込んだ効果を与えることはできないが、手持ちの画像や動画を利用して手軽にマルチメディアタイトルを作ることが可能だ。

基本的には、スライドショー形式のタイトルを作ることができる。画面上の好きな場所に、他の画像や映像へのリンクを置くことが可能だ。また、任意の場所をクリックすることでテキストファイルを表示させたり、URL(ハイパーリンク)を埋め込むこともできる。強力なズーム機能を搭載しているので、建物の俯瞰図などを表示するのに威力を発揮するという。

左側のウインドーで、リンクなどの設定を行なう。これがインターフェースのほとんどすべてという簡単さだ
左側のウインドーで、リンクなどの設定を行なう。これがインターフェースのほとんどすべてという簡単さだ



対応するファイル形式は、BMP/JPEG/AVI/WAV。対応OSはWindows 95/98/NT4.0。作成したタイトルは、1つの実行ファイル(exeファイル)と、ツリー構造のフォルダを持つ。実行ファイルのサイズは平均で1MB以下。フォルダは9つまでを並列に設定することができる。

ドイツではすでに、Visusで作成したCD-ROMタイトルをPRに利用している企業があるという。日本でも、東京・全日空ホテルのプレゼンテーションに利用されている。Schima & Scott社ではソフトのパッケージ販売は行なわず、システムとして法人向けに納入したいという意向を持っているとのことだ。現在のところ日本における代理店はなく、知人のツテを頼って販促活動を行なっている段階だという。

Schima & Scott社の代表を務めるBernd Scott(バーント・スコット)氏。'83年からPeter Schima(ペーター・シーマ) 氏と共同でソフトの開発などを行ない、'98年に同社を設立した。来年からは、2年の予定で日本に滞在するという
Schima & Scott社の代表を務めるBernd Scott(バーント・スコット)氏。'83年からPeter Schima(ペーター・シーマ) 氏と共同でソフトの開発などを行ない、'98年に同社を設立した。来年からは、2年の予定で日本に滞在するという

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン