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2009年02月10日更新

最新技術を追いながらも「精度へのこだわりを捨てる」

ビジネスの発想を身につければ研究者は即戦力になる

文●秋山文野

 ブログやレビューサイトなど、口語体で書かれた文章を解析するクチコミ解析エンジン「SHOOTI(シューティ)」を持ち、ネットの声をプロモーションに活かすサービスを提供してきた「ブログウォッチャー」。東京工業大学の協力を受け、国産の自然言語解析研究とその分野の人材をビジネスに取り込んできた。高度なスキルを持って研究に携わってきた人材が、ビジネスの場に出て行くとき求められるものはなにか? 羽野仁彦社長に聞いてみた

羽野氏

羽野仁彦氏プロフィール


株式会社ブログウォッチャー 代表取締役社社長。大学在学中から、学生ベンチャーへの参画、コミュニティサイトの構築などを行なう。2003年にリクルートに入社。SEOを担当する一方、検索技術の研究機関の設立などに携わり、2007年4月からは現職。2008年3月より東京大学情報学環特任研究員を兼任。


日本では大学で学んだ知識を活かしにくい言語解析

―― まず、ブログウォッチャーで提供している、CGM解析エンジンを使ったブログ解析サービスとはどういったものですか?

SHOOTI
ブログウォッチャーが提供するSHOOTIでは、あらゆる事柄について、それがブログ内でどういう感想を持たれているかなどを検索して表示できる

 法人向けのサービスとしては、数多あるブログの内容を解析して、「インターネット上での感想」をプロモーションの効果測定レポートにする分析事業と、キャンペーンサイトのコンテンツに利用する販売促進事業の二つですね。現在は映画広告や食品関連などの業界が主なクライアントです。

 そこからさらに「体験談や感想がちゃんと書いてあるブログは増えたのか?」「性別、年齢別ではどのくらい増えたか」といったことも分析します。たとえばクチコミを発生させるような作りのプロモーション計画に対して、「実際にクチコミは発生したのか?」といった内容を検証し、さらにクチコミの発生を加速させるような新たなプロモーションを提案します。

 ブログを解析していくと、そのブログの著者が何に興味があるかがわかりますから、その興味・嗜好の情報を利用したレコメンデーション(推薦)を行なうサービスも開始しました。たとえばラーメンについてのブログを書いている人にはラーメンの情報が届く、化粧品ブログを書いていると化粧品のサンプルが届く、といったようにブログの内容に関連した情報を送るわけです。情報を発信する人は情報を受け入れる能力も高い傾向があり、販売促進に効果的です。

―― ブログの内容を分析するようなサービスの土台として、自然言語の研究や口語体の文章解析といった高度な研究が必要になると思います。そのジャンルで高い知識と技術を持っているエンジニアは引く手あまたで、海外の企業に高給で誘われていると聞いたことがあるのですが現状はいかがですか。

 確かに外資系企業と技術者の取り合いになってしまいますね。自然言語解析でビジネスを進めている企業というと、グーグル、ヤフー、IBM、マイクロソフトなどを挙げることができます。外資系企業に比べて自然言語技術者を日本の大企業で受け入れるのは受け皿がなく、国内企業で自然言語分野での就職は難しいでしょう。

 日本では(大学の)研究室に残るか、外資系企業かベンチャー企業に就職するかということになります。私としては国産技術にこだわっています。外資系企業が日本市場に参入するには言語の壁がありますから、日本の企業や技術者にはチャンスがあるはずです。それなのに技術者が流出してしまうと言語の壁は超えられてしまう。もったいないと思います。

―― 逆に学生側にも問題は無いのでしょうか?

 シリコンバレーなどでは学生が事業と研究を両立させているのに比べて、日本では実践的な研究が弱い面があると思います。日本の大学の気質かもしれませんが、技術を広く役立てようと汎用性を重視するばかりに、、特定の事業に活用しようとすると、使えないということが起きる傾向があります。

 たとえば(新しいWebサービスであれば)「ホテルを探す、レストランを探す」といった具体的なサービス内容に、開発のターゲットを絞ることが重要なのに、学術分野ではどんなものにも活用できる汎用性が重んじられるように思います。そういう技術者が作ったサービスは、何でもできる(汎用性はある)けど何にも使えない、といったものになりがちですね。

 コンピュータサイエンスの分野は、(旧来型の)メーカーの基礎研究のように新たな素材を開発しているわけではなく、最初から利用用途があって始めるものが多いと感じています。汎用性を重視し過ぎた研究は、用途がないのに素材だけ作っているような状態だと思います。

「自分の技術・知識を世に出したいという人に来てほしい」に続く

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