講演を終えて(インタビュー)
ASCII.jpでは、オープンキャンパスで熱弁を振るったお2人に、特にネット社会の変遷について、お伺いした。
ASCII.jp 講演の中で、ネットの変遷と攻殻機動隊の物語の変遷が、リンクした形で語られました。
櫻井 個別主義者それぞれがネットの端末にいて、集合的無意識の中でいろいろな事が起きるという社会のイメージが、SACまで来て極限まで行った気がしました。SACという形で社会を進めていくようなイメージが、ちょっと難しい所まで来てしまっているのではないか。あれ以降を作るとしたら、揺り戻し……全体的な意識が生まれてくるというか、そういう感じにならないと、キツイのではないかと思いました。
以前は「ネットの中で生きている」というリアルな感覚があったわけですが、そういうのも先鋭化の先まで行ってしまっていて、これ以上を個として考えるのは辛いのではないかと、そういう雰囲気がありましたね。
ASCII.jp たとえば、現在のネット社会でも色々と変遷があります。mixiが流行ったり、ニコニコ動画が流行ったり。
櫻井 mixiは5、6年くらい続いていて、“村化”している。mixi八分みたいな言葉が示唆しているように「村」という性質を持っていると思います。そしてニコニコが06、07年に流行りました。あれは、「みんなで乗ろう!」みたいな感じですよね。非同期のメディアだけれども、同期感がある。“弾幕”のようにね。その時には個性も何もないんだけど。「KY」が流行りだしたのも、その頃ですね。
社会全体として、寄らば大樹的な、ナショナリズムの再現というところを含めつつ、みんなで一つの方向を向く快感が、基盤としてあったんじゃないかと思いますね。
ニコニコはそういうところがハマッたんじゃないかと思います。それから、コンテンツを作る側から見て、うける動画が変わってきた。今うけるタイプの作品は、“隙”の多い作品であることが多いですね。ツッコミ待ちのニコニコ想定というか。
瀬名 僕は、「ゆとり教育止めます」と言われた時は衝撃でした。失敗でしたとなった以降は、いっせいに逆の雰囲気がつくられてしまう。あれが数年前ですが、みんなで一斉に変わってしまうのかという。
ASCII.jp 講演の中で、櫻井さんが10年前と今では、インターネットの環境がガラリと変わったというお話をされました。
櫻井 あとはやっぱり、媒体によってコミュニティの思想が違っていくだろうと思います。たまたま迷い込んだときに、“お呼びでない世界に入った感”が強い。はてブとかもそうですが、その論調って、その中で、空気読んで書いている人たちがいる。「俺は別の意見を持っている」という人が入るときに、お呼びじゃないなと。
ASCII.jp さいごに、オープンキャンパスはどのような主旨で開催されたのですか?
瀬名 やはり東北大学に、関心を持ってもらうことが一番の目的ですね。そこで、私が尊敬する櫻井さんに声をかけさせてもらって、来ていただいたというわけです。
ASCII.jp 本日はありがとうございました。