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著作権ウォッチャー 第1回

2008年・著作権の注目は「動画共有」と「フェアユース」

2008年12月30日 14時00分更新

文● 谷分章優

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 著作権は、ここ数年、インターネットで注目されることが増えたトピックだ。例えば、違法な着うたサイトでタダで音楽が配られたり、動画共有サイトへテレビ番組が勝手にアップロードされたりといった話が、絶えず出続けている。

 ちょっと詳しい人なら、「iPod課金」「ダウンロード違法化」「ダビング10」といったキーワードを聞いただけで、著作権がからんだ話だと分かるだろう。この連載では、そんな著作権関連の話題を掘り下げて解説していく。

 さて、2008年も著作権界隈ではいろいろな話題があったが、今回は「序章」として、筆者が注目した「動画共有サービスが合法化への歩みを見せたこと」と「フェアユースの導入が本格的に検討され始めたこと」という2点について軽く取り上げてみよう。


動画共有サービスの合法化への歩み

 動画共有サイトといえば、日本では「YouTube」と「ニコニコ動画」が有名だ。ただ、これらのサービスは、スタート時から著作権をめぐるトラブルを抱えてきた。

YouTube

YouTube

ニコニコ動画

ニコニコ動画

 よく知られているところでは、話題になったテレビ番組が放送直後に勝手にアップロードされ、それを目当てにしたユーザーが集まってくるという状況があった。権利者から要請があればサイト運営側で削除するが、そうした動画の数がとにかく多いこと、消しても再び同じ動画が投稿されてしまうことから、要請も削除も追いつかなかったのだ。

 また、動画の中で有名な曲を歌ったり演奏したりしても、実は著作権の問題がある。作詞家や作曲家の許可を取って、ほとんどの場合はお金を払わないとならないのだ。

 そうした問題を解決するために、動画共有サービスを提供する企業は、著作権者と歩み寄りを始めた。

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角川アニメチャンネル

 例えば、YouTubeは角川グループと提携を発表して、2月から「角川アニメチャンネル」を設けた(関連記事)。『涼宮ハルヒの憂鬱』『らき☆すた』など、角川グループのコンテンツをユーザーが投稿しても、ある条件を満たせば後から「公認」されて削除されなくなった。両者が提携したことで、こうした柔軟な対応が可能になったのだ。ニコニコ動画でも、12月5日からテレビ局など120社(予定も含む)を集めて「ニコニコチャンネル」を始めている(関連記事)。

ニコニ・コモンズ

ニコニ・コモンズ

 ニコニコ動画でも、組み合わせや改変を認めた上で映像素材を共有する「ニコニ・コモンズ」が8月にスタートした(関連記事)。「公式な黙認」というコンセプトの元、動画の素材をネットから合法的に手に入れようという試みだ。手塚プロダクションが手塚治虫のキャラクターを提供したり、スタジオジブリが「崖の上のポニョ」の主題歌を提供したりと、提携したコンテンツホルダーから素材が追加されている。

 音楽分野でも大きな一歩が踏み出された。音楽著作権の管理をする最大手であるJASRACが、ニコニコ動画とは4月に、YouTubeとは10月に包括契約を結んだ(関連記事)。これによって、JASRACが管理している曲については、自分で曲を演奏しながら解説をする動画を投稿したり、バンドをやってる人がカバー曲を発表したりすることが可能になった。

 一方で、ユーザーがテレビ番組をまるごとYouTubeやニコニコ動画にアップロードするような、これまで無断でされてきたことが一気に合法になるような状況にまでは至っていない。というのも、映像の著作権者だけでなく、出演者や、使われているBGM、写真やイラストなどのたくさんの権利者に話を通さないとならないからだ。しかし、特定のコンテンツホルダーの作品や、音楽といった範囲までなら合法で扱えるものが広がったのは大きい。今後につながる成果とも言えるだろう。


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