このページの本文へ

前へ 1 2 3 4 5 次へ

塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤” 第19回

塩澤一洋の“Creating Reed, Creative Mass.──大公開時代の羅針盤”

創造的Leopard

2008年09月28日 15時00分更新

文● 塩澤一洋 イラスト●たかぎ*のぶこ

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷


 一方スペース1はスティッキーズ、画面上に付せんメモを張るMac標準のアプリケーションだ。メモは単なる備忘録やToDoリストに使われる一方、ブレストのようにアイデアを引き出す大切なプロセスも担う。事務的な業務でも創作的作業でも非常に重要なツールだ。

 しかし従来のMacOSでスティッキーズを使うと、画面が煩雑になって美しくなかった。また必要なメモがほかのドキュメントの下に隠れてしまうこともあるし、逆に、他人に見られてしまうことを心配して大事な内容はメモに書きづらかった。

 その点、Spacesを使えば、問題は一挙に解決。スティッキーズ用のスペースを作れば、画面いっぱいに付せんを張り付けられる。すべてのメモがここで一覧できるのだ。またその画面全体を使って、ブレスト的な作業もできる。ほかのウィンドウの下に隠れてしまうこともないし、ほかのスペースで別の作業をしているときに人に覗かれても付せんの内容を見られる心配もない。ついでに同じスペースにiTunesを置いておけば、適度な頻度でそのスペースを訪れてメモを目にすることになる。

 このようにSpacesを駆使すると、各々の作業に集中できるようになる。中心となるクリエーティブワークに集中することができるのは最大の恩恵だし、それ以外の副次的な業務もそれぞれ別のスペースで集中して行える。すべてのスペースを表示するホットコーナーを設定すれば、全作業の進捗状況を瞬時に俯瞰できるのは従来のExpose´の使い方と同じだ。

 自分の表現を誰もがオンラインに公開できる大公開時代には、創造しやすいツールを使いたい。Leopardではこうして、「閲覧」と「創作」を分け、「クリエーティブな作業」と「付随的な業務」を切り離すことができる。創造のためのすばらしい環境が提供されたのだ。

 既存の情報を閲覧、鑑賞することと、新たに自分で表現したり何かを創造することは、つながった一連の行為である。クオリティーの高いインプットによって創造性がかき立てられるからだ。でも、両者の間には受動と能動という厳然とした差がある。それをきちんと分けて作業できるのがLeopard。その価値は、安心して創作に打ち込めるアトリエのようでもある。


筆者紹介─塩澤一洋


著者近影

「難しいことをやさしくするのが学者の役目、それを面白くするのが教師の役目」がモットーの成蹊大学法学部教授。専門は民法や著作権法などの法律学。表現を追求する過程でMacと出会い、六法全書とともに欠かせぬツールに。2年間、アップルのお膝元であるシリコンバレーに滞在。アップルを生で感じた経験などを生かして、現在の「大公開時代」を説く。



(MacPeople 2008年1月号より転載)


■関連サイト

前へ 1 2 3 4 5 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

ASCII.jp RSS2.0 配信中