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会社引っ越し ブレードで仮想化大作戦 第3回

~ ASCII.jpが試したから言える!ブレード&仮想化のホンネ ~

ブレード&仮想化 稼動編「ソフト代まで考えてなかった」

2008年09月24日 06時00分更新

文● 志村 拓

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気持ちはドシドシ、現実はポツポツ仮想化

 すべてのブレードにCentOSとVMwareのインストールを機械になった気分で10回繰り返し、環境を構築した。一応、VMwareをこんな風に使おうとか、パーミッションはこうしようといった事を決めた上で運用にあたりたかったのだが、新社屋に運ばれつつある、PCサーバの筐体の山を排除しなければ、マシンルームが 秋葉原ラジオセンター級の細密充填構造 になってしまう。仮想化を阻害する全ての要因は実力をもって排除、仮想化を最優先事項として、少なくとも気持ち的には「ドシドシ」行うこととした。

VMwareConverter.png

WindowsならNT4 SP4以降から Windows 2003までをカバーして仮想化してくれるVMware Converter

 Windowsサーバ系は、VMwareからリリースされているVMware Converterというツールを使うことで、比較的簡単に仮想マシンのファイルを作成することができる。多少の時間とHDDの空き領域は必要なものの、待っていればできるのはありがたい。作成された仮想マシンのファイル群をホストOSにftpやscpでコピーすれば、一丁上がりだ。こんなことなら、 サーバは全部Windowsにしておけばよかった(ウソ)。

 小社のサーバOSとして大半を占めるFreeBSDとLinuxは、ddコマンドをつかって、ディスクイメージを吸い出し、以下のような手順で仮想マシンを作成した。これも、なかなか時間とHDDの空き領域の必要な作業であったが、やりかたさえ確立してしまえば、難しくはない。

  • 1.対象のマシンをLiveCDで立ち上げる。
  • 2.システムの入ったHDDをddコマンドで標準出力に出し、それをsshやrshで別のマシンにファイルとして保存。
  • 3.VMware Serverで仮想マシンを用意する。
  • 4.用意した仮想マシンをLiveCDで立ち上げる。
  • 5.先に保存したHDDのイメージファイルをsshやrshで読み出し、ddコマンドで仮想マシンの仮想HDDに展開する。
  • 6.仮想マシンをHDDから起動してみる。

 というわけで、実力不足のため排除できない案件に苛まれながら、気持ちとは裏腹に 「ポツポツ」と仮想化を行っていった。

仮想化にあたり、いくつかの問題も勃発した。魔窟と化した旧アスキーのマシンルームにはFreeBSD 3.5などの古く(FreeBSD 3.5は前世紀のリリース)現在商業的にマイナーなOSが現役で使われていた。VMwareToolsのサポート対象から外れていることが判明したが、VMwareの仮想NICも認識し「なんとなーく」動いていおり、絶対絶命の窮地に追い込まれることは無かった。

VMware ESXiも試してみた

 コラムにも書いたとおり、筆者がブレードサーバにVMwareをインストールしていた7月末にVMware ESXiがフリーになった。VMware ESXiのハードウェア互換性ガイドを確認すると、幸いなことに今回導入したブレードサーバ IBM HS21 8853が対応機種になっていたので、早速原稿を書く手を緩め 興味の赴くままに遊んでモトイ評価してみた。

 ご存知のとおり、VMware ESXiはそれ単体で(つまりホストOSを必要とすることなく)仮想化マシン実行環境を提供するソフトである。ハードウェアにVMware ESXiをインストールすると、いきなり仮想マシンを走らせることが可能となる。

 VMware Serverに必要なWindowsやLinuxといったホストOSと違い、VMware ESXiは仮想マシンを実行することに特化しているため、非常にコンパクトでHDDを32MBしか必要とせず(今回筆者がVMware Server用にインストールしたCentOSは2GB程度)、インストールも非常に高速で簡単だ。また、仮想マシンの実行性能についても、通常のOS上で動作するVMware Serverに比べれば、仮想マシンの実行に不要なプロセスが動いていないので、 赤い彗星までは行かずともかなり速そうだ。

 VMware ESXiはWindowsマシン等にVMware Infrastructure Clinet(以下「VI Client」と記す)と呼ばれる独自のソフトをインストールし(それ自体もVMware ESXiをインストールしたマシンにWebブラウザでアクセスするとダウンロードできるようになっている)、VMware ESXi自身や、その上で動作している仮想マシンやホストマシンを管理する。

VMwareESXi-1.png

VI Clientの画面。CPUやメモリの利用率が非常に細かく表示され、どれくらいの数の仮想マシンを走らせることができるか、検討できる

 VI Clientでは、CPUやメモリの利用率が精緻かつグラフィカルに表示されており、仮想マシンがサーバマシンをどれくらい使っているか、また、あとどれくいら仮想マシンを乗せられるか検討し易くなっている。WindowsやLinuxでは他のプロセスも大量に動作しているため、この辺りの情報を細かく正確に知ることが困難だ。

いちからVMware ESXiでやり直し

 ユーザー管理、とくにパーミッションの設定については、VMware ESXiに完全に特化した形で、非常に細かく設定することが可能となっている。また、筆者がVMware Serverで少し悩んだネットワーク周りについても、仮想スイッチといったものが用意されており、サーバマシンに到達したVLANトランクされたパケットを仮想スイッチの仮想ポートVLANに割り付けることがGUIで簡単に設定できる。

VMwareESXi-1.png

仮想スイッチはVLANの設定や、2つの物理ネットワークを束ねて使うチーミングもGUIで簡単に設定ができる他、物理ネットワークを割り当てない純粋にVMware ESXi内の仮想スイッチを用意することも可能

 同社のWebページにはVMware ESXiの日本語のドキュメントも充実しており、インストールや運用にあたっての不安はない。強いて不満というか、筆者にとっての弱点を言えば、勝手知ったるLinuxに比べると、自由が利かない。これは慣れの問題かもしれないが、VMware ESXi上でバッチプログラムを定期的に動かすといったことは出来そうにない。

 また、VMware ESXiは、基本的に1台のマシンで動かすモノであり、VMotion(VMwareのライブマイグレーション機能)やVMware HA、システムのバックアップなどの管理をするには、VirtualCenterを別途購入しなければならない(しかも結構お高い)。しかし、VMware ServerではそもそもVirtualCenterをサポートしておらず、 憧れのVMotionなど夢のまた夢だ。

 ということで、折角インストールしたVMware Serverだが、すべてのブレードをVMware ESXiに全面的に切り替えることにした。既にVMware Serverの仮想マシンに構築したシステムは前述のVMware Converterを使えば、簡単にVMware ESXiにコピーできるので、これまでに行った作業は無駄にならない。

次ページ「さいごに」に続く

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