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Flashと比べないで!――SilverlightがRIAの本命だ (1/3)

2008年08月08日 10時39分更新

文●二瓶 朗、小橋川誠己/ASCII.jp

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Silverlightが狙う業務用Webアプリケーションの開発


「Silverlightは、Flashと直接的に競合する製品ではない」とマイクロソフトは強調する。しかし現時点でのSilverlightはFlashのようなメディアプレーヤーとしての性格が強く、“マイクロソフトが出したFlash対抗ツール”の位置づけで語られることが多い。マイクロソフトが主張する「Flash対抗ではない」の意味は何なのか。Silverlightの特徴から、その意図を探っていこう。

Flash

Silverlightは“Flash対抗”と見られているが……


Silverlightは“Flash対抗”と見られているが……


 Silverlightが力を発揮する場面として特に期待できそうなのが、企業内で使われる業務用Webアプリケーションだ。業務アプリケーションは1990年代以降、クライアント/サーバー型のデスクトップアプリケーションから、Webアプリケーションに置き換えられていったが、UIに関しては今ひとつ洗練されていないことが多い。IMEのオン/オフを細かく制御していなかったり、商品や部署コードを巨大なリストボックスから選ばせたりするなど、デスクトップアプリケーションであれば当然できていたUIの細かな心配りが足りないのだ。「企業内でSilverlightの採用が増えれば、こうした状況は一変する」というのが、Silverlightに込めたマイクロソフトの思いである。

 「Silverlightはデスクトップアプリケーションと同等のユーザーエクスペリエンスをWebで実現する一つの手段」というマイクロソフトの説明は、したがって決して空虚な売り文句ではない。HTML+JavaScriptの制約などから、デスクトップアプリケーションがWebアプリケーションへ移行していく過程で捨て去れてしまったデスクトップアプリケーションの使い勝手を、もう一度Webブラウザー上で再現するのがSilverlightである、ということなのだ。

 しかし、Linux系サーバー上でHTML+JavaScript+PHPといった組み合わせでWebアプリケーションを開発するエンジニアに求められるスキルセットと、Window上でVisual BasicやC++でデスクトップアプリケーションを開発するエンジニアに求められるスキルセットはそもそも異なる。企業によっては、使い慣れたデスクトップアプリケーションをそのままメンテナンスしていたり、機能面で劣るWebアプリケーションを仕方なく使っている場合もあるだろう。マイクロソフトがSilverlightで提案しているのは、マイクロソフトの開発環境に慣れたエンジニアを、最新のWebアプリケーション開発に移行させることでもある。

 .NETテクノロジーをベースとするSilverlightは、Windowsアプリケーションのプログラマーが持つスキルと親和性が高い。しかも年内にリリースされるSilverlight 2では、JavaScriptだけでなく、Visual Basic、C#、Ruby、Python、と対応言語が増える。「RIAのために新たな言語を習得しなければならない」との理由から尻込みしていた旧来のエンジニアが、新時代のRIAエンジニアに衣替えする可能性が十分あるわけだ。マイクロソフト デベロッパー&プラットフォーム統括本部デベロッパービジネス本部 デザイナー製品部の朝岡絵里子シニアプロダクトマネージャーは、「開発者にはSilverlightでアプリケーションのユーザーインターフェース(UI)を作って欲しい」と話す。

 とはいえ、Silverlightの表現力はエンジニアだけでは扱いきれない。そこでSilverlightは、デザインとプログラムを分離しつつ、同じ「XAML」という共通言語を媒介にしてデザイナーと開発者が協業しやすくしている。


(次ページに続く)

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