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2008年07月04日更新

ワーキングプア~明日の私はひどい目に!?~

忍び寄る正社員クライシス!

文●稲垣章(大空出版)、金山隆一

コンサルタント・インタビュー「経済のグローバル化による賃下げ圧力」

 景気低迷や経済のグローバル化による国際競争の激化により、賃金を上げたくない、あるいは下げたい企業がパートタイマーやアルバイト、契約社員、派遣社員などの非正規社員を増やした結果が、ワーキングプア発生の最大要因の1つである。

 例えば、単純な組立工などは中国やベトナムなど低賃金の国と競争しなくてはならず、日本の同種の労働には賃下げ圧力が働く。また、デジタル家電など技術革新のスピードが速く、消費者のニーズの変化が激しい商品の場合、市場動向やニーズに合わせて生産ラインの人員配置を増減したり、ラインそのものを廃止する場合もある。

 こうした景気の調整弁として、企業が正社員より給与が安く、雇用と解雇がしやすい契約社員や派遣社員を増やす。このような非正社員は90年代初めには5人に1人であったものが、いまや雇用者の3人に1人、約1700万人に達している。こうした非正規雇用の増加に伴って、ワーキングプアも増加したのである。日本では2006年7月に放映された『NHKスペシャル』の「ワーキングプア」が大きな反響を呼び、一般にも認知されるようになった。

日本総合研究所 山田 久氏
山田 久氏
日本総合研究所
調査部 ビジネス戦略研究センター所長 主席研究員
日本総合研究所

 労働問題に詳しい日本総合研究所の山田久主席研究員によれば、晩婚化や非婚化による中高年単身者の増加や母子家庭の増加など「家族機能の低下」もワーキングプアを増加させている要因の1つと指摘する。また、日本の最低賃金は時給673円(2007年)と、主要欧州諸国が1000円を越えていることからすれば、先進国で最も低いグループに属し、これもワーキングプアを生む要因となっている。

日本のIT業界はこれからが深刻

 ワーキングプアが発生する背景には、90年代以降、急速に進んだインターネットの普及などIT化の進展も大きく影響している。このため、米国や欧州でも新しい貧困として問題視されている。端的な例は英語を公用語とするインドにIT関係の仕事を奪われている米国だ。パソコン上でできる仕事であれば、かなり高度な知識を要求される仕事でもインドにアウトソーシングされてしまうのだ。

 一般的にIT系のワーキングプアといえば、ホームページを作成する際にデジタル画像の切り抜き作業などを行なうコーダーとよばれる単純作業などを思い浮かべる人も多いだろう。しかし、「企業の財務諸表をインドにメールしておけば、次の日には分析レポートが出来上がっているといったように、米国ではすでに証券アナリストのような仕事すら賃金水準が数分の一のインドと競争する時代になった」(山田氏)という。こうした事情をレポートした『フラット化する世界』という本も、たいへんな注目を浴びた。

 日本の場合、日本語を公用語とする国が海外にないため、米国ほど海外へのアウトソーシングは進んではいないが、中国の大連などに、コールセンター業務やソフトの開発業務などが徐々にアウトソーシングされている。

 山田氏は、「こうした時代に生き残るには、単に機能のみを求められる仕事ではなく、デザインや発想などで人とは違うユニークさを持つ、強い営業力を養う、対人コミュニケーション能力を高くする、といった能力が問われる時代になる」と指摘する。

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