見所を把握せよ!
総火演は、一般の国民が見学できる陸上自衛隊の演習として最大規模で、その内容も多岐にわたる。「総合火力演習」だけあって、陸自だけでなく空自まで参加した総合戦闘演習であり、近代戦の要諦である火力の集中投射を具現化した内容だ。
天候や実施年度によって多少の変更はあるが、例年、山の向こうから侵攻してくる敵を迎撃、その攻勢を阻止して撃退する基本シナリオは同一であり、概ね以下のとおりである。
- 航空自衛隊の支援戦闘機による対地支援攻撃
- 野戦特科(砲兵)及び各種ミサイルによる阻止射撃
- 対戦車ヘリによる阻止攻撃
- 普通科(歩兵)及び機甲科(戦車)による阻止攻撃
- 空挺部隊の降下と偵察行動
- 障害処理支援射撃
- 地雷及び障害処理
- 攻撃前進支援射撃
- 普通科及び機甲科による攻撃
- 突撃支援射撃
- 突撃
- 全部隊による追撃
総火演は、敵の攻勢を阻止し(1~4)、敵の動静と戦力を偵察(5)、敵が設置した地雷原や障害物を排除し(6~7)、入念な支援射撃(8)の後に反撃を開始(9)、頃合いを図って突撃し、敵を撃退する(10~12)、というシナリオだ。 パートごとに状況と内容が説明されるので、場内放送に耳を傾けながら見ていこう。戦車の発砲時には指揮官からの命令を実況中継風に流すこともあるので、そのタイミングで戦車砲射撃シーン撮影を狙うとよいだろう。さらに雑誌やWeb上に掲載されている以前の演習の記事(例:「平成19年度富士総合火力演習を取材せよ!」)を読み、演習の流れを把握しておくと良い。
ついでに、撮影対象として人気の高い戦車と対戦車ヘリ(戦闘ヘリ)の射撃シーンの撮影について触れておく。
戦車は基本的に1個小隊4両が、演習場左手側(例年オーロラビジョンが設置されている側)と右手側からそれぞれ観客席前面に展開してくる。たいていいずれかの側から4両ずつ登場し、観客席前面の広場、あるいは観客席左手側の丘陵地帯に展開し射撃する流れだ。この時、砲塔に赤い旗が出ていると、これから射撃する合図である。緑の旗の場合は、「射撃しない」合図だ。戦車砲などの車両の射撃シーンを狙うなら、「赤い旗」が掲げられている車両を狙うとよい。旗の意味は他の兵器でも共通。大砲や各種車両の射撃時にも、旗の色を見れば射撃の有無を同様に判断できる。
ヘリコプターも登場する。昨年は対戦車ヘリコプターAH-1S「コブラ」と戦闘ヘリコプターAH-64D「アパッチ」が登場したが、射撃シーンを見せたのはAH-1Sのみ。AH-64Dは航過から着陸後の地上展示だけだった。本年はぜひAH-64Dの射撃シーンを見せて欲しいものだ。
90式戦車同様、AH-1Sの射撃も、演習場右手側と左手側から1機ずつ同時に登場し、射撃する。ただし、観客席正面では射撃せず、観客席左右前方に位置する。なお、ヘリコプターは、射撃時に赤い旗や緑の旗を掲示しないので、場内アナウンスで射撃のタイミングを計るとよい。
演習終了後
演習のプログラムが終了すると、参加した車両や装備が展示される。無論人だかりになるので近寄るのもなかなか大変だが、普段間近では見られないので、是非見ておきたい。そばには陸自隊員がいて、いろいろと説明してくれる。質問にも答えてくれるので、迷惑にならない程度に話を聞くのもいいだろう。彼らも普通の若者だと実感できて何だか微笑ましい事もある。
必ずは実施されないが、演習終了後の「居残り特訓」や、撤収する部隊がギャラリーに愛嬌を振りまいたりすることを楽しみに見に来る熱心なマニアもいる。演習終了直後は道路も公共交通機関も非常に混み合うので、時間に余裕があれば、会場に居残って「祭りの後」を楽しんでもよいだろう。
東京方面から車で来た人も、そのまま帰ってしまうのはもったいない。箱根には日帰り温泉も多い。東名高速道路に乗らず、箱根まで足を延ばして優雅に温泉で演習の埃を流すのも一興だ。山中湖や河口湖といった景勝地も近いので、富士山をのんびり眺めて帰るのもよいだろう。ぜひ、年に一度の総火演を堪能して欲しい。