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テレビをネットに流す意味──TOKYO MXに聞く

2008年05月02日 08時00分更新

文● 遠藤諭/アスキー総合研究所

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インタビュー風景

テレビと同じ番組をYouTubeに流す試みを続けている東京MXTV。その狙いを編成局長の本間氏に聞いた

 テレビにとって、インターネットはメディアを活気付ける良薬なのか。それとも使い方を誤ると恐ろしい劇薬なのか。その答えはまだ出ていない。

 そんな中、地上波のテレビ局としては、もっとも前向きにネット配信に取り組んでいるのが東京MXTVだ。同社はテレビ放送と同じ内容の報道番組をYouTube上で展開。4月からは、5分間と短い番組ではあるが、放送より先にネットに配信する「東京ITニュース」関連記事)という実験的な試みを開始している。

 東京ITニュースは毎週月曜日の17:55~18:00に放送中の報道番組。ビデオジャーナリストの神田敏昌氏と、筆者の掛け合いで、ITに関するホットな話題を提供している(内容に関しては、連載「遠藤諭の発言予定 --> Tokyo IT News」も参照のこと」)。

 東京メトロポリタンテレビジョン 取締役 編成局長の本間雅之氏に、ネット時代のテレビ局のあり方について聞いた。



放送とネットは相互交流するか

── ネットでテレビ番組を流すようになった背景は?

本間氏

東京メトロポリタンテレビジョン 取締役 編成局長の本間雅之氏

本間 テレビというのは1回放送すると終わりですよね。その点、ウェブは、本当の意味で見たいときに見られるというメリットがあります。

 そこで、「ウェブから評判にして、逆にテレビに持ってこれないか」と考え、YouTubeに流すようにしたのです。しかも、今回は電波よりも先行して流すということをやっているのですよ。

 テレビは、不特定多数の人が見るメディアです。ニュースも矢継ぎ早にどんどん飛び込んできて、何となくつけていた番組をすべて見てしまうところがある。ところが、同じニュースでもウェブで流すことになったとたんに「今日の裁判のニュースを見よう」とか「この事件は知っているから見ない」とか選ぶようになる。

 ウェブのメリットとしてはもうひとつアーカイブできる点がある。再放送というのはありますが、基本的にテレビは1回放送するとそれで終わりなんです。アーカイブしたものを固まりとして見せたいという欲求がある。ウェブは、本当の意味で見たいときに見られるというメリットがありますよね。


── 放送後ではなく先にウェブに流すというのは?

本間 ウェブでやったものを、テレビというオーソリティーのある媒体でも体験してもらいたい。それで、ユーザーがネットとテレビの間をどう行き来するかを見てみたい。ゆくゆくは、文字も入れたウェブならではのものも提供したいとも思っています。

 例えば、テレビ番組から劇場映画ができることがあるじゃないですか。ふつうは劇場映画をテレビでやりますが、その逆もあるということです。同じように、テレビとネットの間で相互交流があってもよいということです。

TOKYO MXTVチャンネル

YouTube内に設けられた東京MXTVのチャンネル。東京ITニュースの配信も毎週末行なわれている


── ネットの映像品質も上がってきますよね。

本間 映像品質が上がれば、ネットと放送の間にあるのは「単なる伝送路の違い」ということになる。放送と通信が融合していくわけなので、メディアの免許も変えていかなければという議論も出てきているようです。

 放送は、かなり成熟化していて、自分たちのメディアがエクセレントであるとか、放送ジャーナリズムも厳しい報道基準でやっているんですとか言うわけです。でも、なんとなくそういうところは段々ゆるんできているような感じがします。ブログのすぐれた発言とか、ビデオ投稿なんかも影響を与えている部分があると思いますよ。

 デパートだって、三越が流通のトップの座から滑り落ちたのは30年前ですよね。そのときにダイエーに抜かれた。いまは、そのダイエーも……。三越は伊勢丹と合併という話になっている。高コストで品質のいいものは退潮してくるわけですよ。どうしても安くて性能のよいものが出てくるわけです。

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