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「データセンター3.0」を実現する主力製品

FCもEthernetも統合するシスコ「Nexus 5000」発表

2008年04月17日 19時30分更新

文● 大谷イビサ(ネットワークマガジン編集部)

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4月17日、シスコシステムズは、データセンター向けの最新スイッチ「Cisco Nexus 5000」を発表した。1ヶ月前に発表したハイエンドモデル「Nexus 7000」に続く、高速・低遅延を目指したサーバやストレージ接続専用のスイッチである。

シスコの考えるデータセンターの未来

シスコシステムズは、既存のメインフレーム中心の1.0、サーバ等が分散化した2.0に続く、新しいコンセプトとして「データセンター3.0」という戦略を掲げている。データセンター3.0では、ネットワークを中心に据え、サーバやストレージの統合化や仮想化、管理の自動化などを実現するという構想。現状は、複数存在するインターフェイスやI/O規格を統合したり、ケーブリングを簡素化するといった比較的身近な目的となっている。

しかし、将来的にネットワークの速度がローカルマシンのバスの速度を上回ると、今まで箱の中で閉じていたコンピュータリソースがハードウェアに依存しないで、ネットワークを介して連携することが現実味を帯びてくる。たとえば、ハードディスクに関してはすでにファイバチャネル(FC)によってネットワーク化され、SANという形でサーバからは切り離されて管理可能になっている。これをCPUやメモリなどに拡張し、必要に応じて仮想マシンとして運用するという新しいコンピューティング環境の可能性である。

ネットワークでCPUやメモリまで相互接続し、仮想化を推し進める

ネットワークでCPUやメモリまで相互接続し、仮想化を推し進める

LANだけではなく、SANもサーバ間接続も可能なユニファイドファブリック

こうした構想を実現するためのデータセンター専用のスイッチが「Cisco Nexus(ネクサス)シリーズ」である。Nexusシリーズは、同社と同社が買収したヌーヴァシステムズ(Nuova Systems)の手で共同開発された製品で、すでにシャーシ型の「Nexus 7000」が先月発表されている。

先月発表された「Cisco Nexus 7000シリーズ」

先月発表された「Cisco Nexus 7000シリーズ」

今回、投入されるNexus 5000シリーズは40個の固定Ethernetポート、2つの拡張スロットを搭載するラックマウント型のスイッチ。拡張モジュールは、6ポートの10GbE、4ポートFC+4ポートの10GbE、8ポートのFCの3つが用意されている。データセンターでの利用を想定し、搭載可能な最大56ポートで、ノンブロッキングでのパケット処理を実現する。

Cisco Nexus 5000シリーズ

Cisco Nexus 5000シリーズ

6ポートの10GbEモジュール

6ポートの10GbEモジュール

最大の特徴は、SAN、LAN、サーバ間のクラスタ接続を統合する「ユニファイドファブリック」を搭載する点。Nexus 5000で搭載されるEthernetポートは、10GbE(10Gbps Ethernet)だけではなく、ファイバチャネルをEthernet上に載せるFCoE(FibreChannel over Ethernet)、遅延や信頼性などデータセンターでの要件に特化した専用のEthernet技術をサポートしたDCE(Data Center Ethernet)がサポートされる。

FCoEはフレームロスのなく、オーバーヘッドの少ないFCの伝送をEthernet上で実現する。現在ANSIによる標準化が進められており、2008年後半には標準化が完了する予定。対応のNICもエミュレックス(Emulex)&キューロジック(QLogic)製品が、Nexus 5000とともに発表済みとなっている。

また、Data Center Ethernetはデータセンターでの送受信に特化したEthernet規格の総称。具体的にはフレームロスのないレイヤ2でのQoS技術、同時に2つのリンクを利用可能にするマルチパス、既存のEthernetとのブリッジなどの技術が含まれている。

さらに、Nexus 5000では、フレームのヘッダのみを読み込んで高速・低遅延な転送を行なうカットスルーアーキテクチャを採用し、3.2マイクロ秒の遅延を保証している。これらの技術の導入により、低遅延・高信頼性などデータセンターでの伝送を満たしたうえ、ストレージやサーバなどの統合を実現するという。最新のSFP+モジュールの登場により、10GbEもインターフェイスも、従来に比べて圧倒的に小型化している。

小型化されたSFP+とケーブル

小型化されたSFP+とケーブル

仮想化に関しては、仮想マシンのネットワーク設定をプロファイルとして設定することができるようになっている。

NexusとCatalystシリーズの切り分けは?

Nexusシリーズは、シスコの主力製品であるCatalystとは異なるアーキテクチャやソフトウェアを採用している。10GbEを扱えるCatalystのハイエンド機種を見ると、機能面で同じように見える。

これに対して、同社では「Catalystは基本的にEthernet専用で、ダウンリンクが1Gbps、アップリンクで10Gbpsを提供するスイッチ。L3のルーティング機能を持つほか、ファイアウォールなどの機能をサービスモジュールとして提供する点も異なる」とのこと。これに対してNexusシリーズは、10GbEでサーバやストレージを相互接続する目的に特化しており、サービスモジュールの提供予定も今のところないとのこと。

出荷は5月を予定しており、日本での価格は現状未定。

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