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ロスレスEthernetは標準技術へ

シスコ標準化担当者が語るFCoEとI/O統合化の夢

2009年11月09日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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11月6日、シスコシステムズはI/Oの統合化(コンソリデーション)に関するラウンドテーブルを開催した。広島で開催されるIETFに参加するために来日したクラウディオ・デサンティ氏が、おもにFCoEのメリットや標準化動向について説明した。

FCoEでI/O統合化の悲願は達成されるのか?

 データセンターで増え続けるサーバやストレージでそれぞれ異なるI/Oを統合するために注目されているのが、FCoE(FC over Ethernet)である。FCoEを用いることで「ストレージ、LAN、IPC(プロセッサ間通信)など3つのI/Oを統合し、配線を簡素化し、消費電力の低減を実現。管理の手間も軽減される」(クラウディオ氏)というものだ。

FCoEを中心に標準化動向について説明したクラウディオ・デサンティ氏

 過去においてもiSCSIやInfinibandなどI/O統合化の試みがあったが、大きな成功は収めていない。これに対して、FCoEは帯域幅が広く、コスト面でも良好なEthernetをベースにすることで、効率的なI/Oの統合を実現できるという。「FCoEはFCが直接Ethernetに載るのでオーバーヘッドが低く、イニシエータからターゲットまで直接セッションを張れるので、iSCSIのようにゲートウェイがいらない。高い帯域を利用できるので、複数のユーザーから共用できる」などのFCoEのメリットが語られた。

データセンターにおけるI/O統合化の試み

FCをロスレスEthernet上に載せるFCoE

 FCoEのうち、特に重要なのがロスレス(フレームを損失しない)Ethernetである。「Ethernetのふくそう損失には、コリジョン、リンクエラー、ふくそうといった3つの原因があるが、このうちコリジョン、リンクのエラーはすでにあまり起こらない。そのため、最後のふくそうによるフレーム損失を防ぐため、優先度を付けるフローコントロール(PFC:Priority Flow Control)を追加した」という。具体的にはEthernetのPAUSE機能をIEEE802.1Qの優先度ごとに有効にすることが可能になる。

 FCoEは2007年1月にワーキンググループが設立され、2008年の10月から技術的にフィックス。2009年6月にFC-BB-5としてANSIで標準化が完了した。クラウディオ氏は「技術的な議論より、政治的な議論が多かったかもしれません。シスコが提案したフレームフォーマットをひっくり返そうとしたところもありましたし、アドレッシングや名称自体に関しても多くの議論がありました」と標準化作業について振り返った。今後、標準化により製品化は進むだろうが、現在の経済状況が移行への障壁になるだろうという見通しも語られた。

 その他、次のバージョンであるFC-BB-6や、いくつかの案が提出されている仮想マシンのトラフィックのタグ付けに関しての、標準化動向も説明された。

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