アップルジャパン(株)は昨年から「Touch the Mac」(関連記事)や「デジタル教材コンテスト」(関連記事)、「学生デジタル作品コンテスト」(関連記事)といった一連の教育プログラムをスタートしている。
これらは、教育の現場にデジタルな環境が導入されることで、教師と学生双方にとっての学習環境がさらに充実するのではないかという、米アップル社の企業理念に基づく教育活動の一環として始まったものだ。
同社は以前から、割り引き価格でソリューションを提供する教育関係者向けの購入窓口「Apple Store for Education」の開設や、各地域のアップルストアで同社製品の活用方法を紹介するワークショップの実施など、あくまで同社製品の普及活動といった格好では取り組んできた。しかし、先に挙げたような、実際に教育現場で同社製品を活用する具体的な施策を提案する試みは初と言える。
そこで、同社にこういったプログラムをスタートさせるに至った背景および、今後の展望について聞いた。
子どもたちはパソコンの使い方を教えてもらう必要がない
──'07年度から、より教育の現場に踏み込んだイベントを一斉にスタートしましたが、その経緯を教えてください。
まず先に、日本のコンピューター教育についてアップルから見た印象をお伝えします。
日本の教育現場では、「スタートボタンをクリックしてワードを開きましょう」「フォントの大きさを変えてみましょう」「キーボードの打ち方はこうです」といった、パソコンの使い方を教えるものばかりが目立ちますが、アップルでは、コンピューター教育はすでにその段階ではないと捉えています。子どもたちは家に帰ればゲーム機を何種類も持っていますし、小学校高学年では携帯電話を持つ子も珍しくありません。子どもたちは、パソコンの使い方を教えてもらう必要がないほど、デジタルにはこなれているのです。
アップルジャパンとしては、授業の一環として子どもたちが何かをつくり、出来上がったものを我々がコンテスト形式で採り上げていくというように、コンピューターを使うことの一歩先をサポートする段階にあると考えます。そこで、教育の現場にこれまでよりも一歩踏み入り、「学生デジタル作品コンテスト」をスタートさせたわけです。
この形式の面白いところは、コンピューター教育そのものは完全に黒子となっている点にあります。家庭科だったり、社会科だったりと、本来あるべき教育の方向に向いているのがポイントです。
例えば、夕張市立幌南小学校が「夕張市についてのドキュメンタリー映像」をiMovieで制作して発表するという授業を行ったのですが、そこでは、映像作品の材料として、写真の代わりに「イラスト」を描かせたり、ナレーションの原稿を書かせたりもしました。社会科に加えて、美術も国語も組み合わされた総合的な授業として、見事に成立しているのです。これには、映像フォーマットを利用した教育という観点から、プロであるテレビ局のディレクターも刺激を受けたと驚いていました。
そして作品は、入賞作品とそうでないものを合わせてアップルのサイトに「Student Gallery」として公開しています。自分たちの作品が学校を飛び出して紹介されている、その点でも子どもたちは刺激を受けているようです。
また今後は、「学生デジタル作品コンテスト」を続けていくほか、新たなコンテストも開催し、子どもたちが見て刺激されるような作品をどんどん集めていきたいと考えています。
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