一眼レフ機さながらのボディーはしっかりとホールドでき、光学式手ぶれ補正もあって望遠側でも安定して撮影できる。各種のボタンを押しながら電子ダイヤルを回転させるタイプの操作性も、慣れればEVF(電子ビューファインダー)を覗き込んだまま設定変更しやすいなど、コンパクトデジタルカメラとは一線を画す操作感はなかなか使いやすい。太い鏡胴部のズームリングとMFリングなど装備も本格的ではあるが、液晶ディスプレーが23万画素、EVF側が20万画素と従来のデジタルカメラと大差のない表示画素数なので細部に至るピントの確認は目視というよりもMF時に画面に表示されるフォーカスバー(ピントの山がバーで表示されるインジケーター)に頼る部分があるのはやや残念だ。
フィルムシミュレーションによる鮮やか/自然/濃い目という色あいの選択ができ、ブラケット撮影した結果から好みの色味の画像を選べるのは、デジカメならではの機能だし、使っていても面白い。もちろん多くのデジタルカメラには発色傾向を選択・調整できる機能が用意されているが、銀塩フィルムのVelviaやPROVIA風に撮れるというのはかなり楽しく使える。
それに対してダイナミックレンジ向上は、画像で見ても一目で違いが分かるわけではないものの、ブラケット撮影してみると確かに暗部が明るくなって明部や暗部で階調が残っている。とはいえ、明暗の差が激しいシーンではどうしても白とび/黒つぶれしてしまうため、従来のデジタルカメラよりも「やや白とび/黒つぶれしにくくなった」という印象に留まっているのは物足りない面もあるかもしれない。
また、ダイナミックレンジの上げると常にISO感度が上がってしまう点が気になった。明暗の差が激しいシーンでの撮影ということは、晴天の強い日射しの下で影になった部分も描写したいときなどで重宝するわけだが、強い日差しの下でISO 400まで上げるとAE側ではシャッター速度と絞りの上限に行ってしまう。本機では絞り優先モードだと絞りが最高F8、シャッター速度は最高1/2000秒、マニュアル露出モードであれば最高F11と1/4000秒となっており、炎天下や強い逆光下でもなければ簡単には上限に行くことこそないだろうが、「開放側で撮りたい」といった絞りの選択肢が狭くなってしまうのは確かだ。大口径レンズと大型撮像素子を持つ本機であれば、一眼レフのようなボケ味を生かした写真を撮りたい人も少なくないので、これは気になる点だろう。
画像に関しては、FinePixシリーズ特有の鮮やかな発色とノイズ感の少ない絵作りとなっていて、特に新開発撮像素子と画像処理の威力による暗部ノイズの少なさは驚くほどだ。今までも画像処理などの技術が進むたびに高感度域でのノイズは減ってきたが、ISO 400が実用域になったといってもノイズが“あまり気にならない”もしくは“ほとんど気にならない”という感じだったのに対し、本機ではISO 100クラスの画像と見分けがつかないレベルなのは驚異的だ。
とはいえ、画像をよく見ると広角側の周辺では色ずれや描写力の低下が顕著で、高倍率ズームレンズの難しさを伺わせられる。レンズ一体型デジタルカメラは1台でさまざまな撮影シーンに対応すべく、高倍率ズームを付けざるを得ないところはあるのだが、無理な高倍率レンズではなく標準ズーム域のレンズを搭載して本機同様の撮像素子や撮影機能を搭載したモデルもラインナップしてほしいところだ。
富士フイルムでは従来、このクラスのレンズ一体型EVF搭載デジタルカメラを“ネオ一眼”と呼んでいたように(本機では使われていない)、比較的手頃な一眼レフ代替機(コンパクトデジカメからのステップアップ)として利用できるだろう。しかし、最近は一眼レフ機のほうも入門機を中心に低価格化が急激に進んだため、レンズ一体型のロングズーム機は、一眼レフで実現しようとすると恐ろしく高価となる超望遠レンズを搭載するなどして“対抗”してきた。それでも手頃さをセールスポイントとするだけに、ロングズーム機の多くはいかにも低価格機という製品が多かった。これに対し、本機は大径レンズ・大型撮像素子、しっかりとした細部の作りに加え、同社としては新機軸となるフィルムシミュレーションやワイドダイナミックレンジなどを盛り込んだハイエンド機であり、各種機能や高級感のあるボディなど使っていて満足のいく製品に仕上がっている。
顔認識やスマイルシャッターなど、電子的な画像処理機能がセールスポイントになっている最近デジタルカメラ市場だが、広いダイナミックレンジというデジタルカメラの弱点を克服する方向性と、フィルム風発色というフィルムメーカーである同社ならではのアプローチは高く評価でき、デジタルカメラが今後進むべき方向のひとつと言えだろう。
FinePix S100fsの主なスペック | |
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製品名 | FinePix S100fs |
撮像素子 | 2/3インチ有効1110万画素スーパーCCDハニカム VIII HR |
レンズ | 光学14.3倍ズーム、f=7.1~101.5mm(35mmフィルムカメラ換算時:28~400mm)、F2.8~5.3 |
静止画撮影 | 最大3840×2880ドット |
ISO感度 | オート、ISO 100/200/400/800/1600/3200/6400/10000(ISO 6400:最大600万画素、ISO 10000:最大300万画素) |
動画撮影 | 640×480ドット、30fps、MotionJPEG圧縮AVI形式 |
液晶ディスプレー | 2.5インチTFT、約23万画素 |
EVF(電子ビューファインダー) | 0.2インチFLC反射型アモルファスシリコンTFT、約23万画素 |
記録メディア | 内蔵約25MBフラッシュメモリー&SDカード(SDHC対応)/xDピクチャーカード |
インターフェース | USB 2.0(Hi-Speed)、AV出力、DC入力 |
電源 | 専用リチウムイオン充電池(NP-140) |
撮影可能枚数 | 約250枚 |
本体サイズ | 幅133.4×奥行き150.4×高さ93.6mm |
重さ | 約918g(本体のみ)/約968g(装備重量) |