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開発担当が明かす、LEDの新しい作り方

これは「ムーアの法則」を超える技術革新だ!──遠藤諭が聞く、LEDプリンターの秘密

2008年02月18日 09時00分更新

文● 編集部、撮影●パシャ

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「More than Moore」というトレンド


遠藤 お話しを伺っていると、LEDプリンターのあり方を変えてしまう革新的な技術という印象です。

荻原 そうですね。このエピフィルムボンディングによるメリットは多岐に渡りますが、そのひとつとして部品点数の劇的な削減が挙げられます。

 従来、LEDアレイとドライバーICはそれぞれ26チップ、合計52チップ必要でした。新型LEDヘッドでは、これらを一体化したため26チップだけで済みます。また、LEDとドライバーICをつないでいた金のワイヤーの本数が、3664本から650本と5分の1に減っています。LEDの材料コストが極端な話、桁がひとつ違うくらいまで低減しました。

 また従来のLEDヘッドですと、大量生産のために設備投資をしていましたが、新型LEDヘッドでは組み立て工程が減ったため、既存の設備で2倍以上の生産ができるようになりました。


遠藤 生産が簡単になったことで、ページプリンタの低価格化が実現したわけですね。最初からLEDとドライバーICをくっつけるというイメージがあったんですか?

荻原 半導体の世界では、シリコンと化合物といったような、異種材料をひとつにまとめるという考え方が昔からあります。

 シリコンICの集積密度が1年半から2年で倍になるという経験則「ムーアの法則」に沿って半導体技術を進化させていこうという流れの一方で、異なる材料や機能をもつ半導体素子をひとつにまとめて、新しいものを作り出そうというトレンドも生まれています。

 後者の考え方は「モア・ザン・ムーア」(More than Moore)という呼び方をされていますが、この種の研究が世界中で行なわれているわけです。

 そんな世界的なトレンドの中で、LEDとICチップを一体化し、量産を可能にしたエピフィルムボンディングは重要な技術だと思っています。



環境にも優しい


遠藤 もともとアドバンテージのあるLEDだったけれど、それをこつこつ育ててきて、ニーズが出てきて、ブレイクスルーが必要だったものを乗り越えて……。OKIがここまでLEDにこだわる理由は何でしょうか。

荻原 プリンタに求められる要素は数多くあると思いますが、その中で「キレイに出力される」ことへの要求は大きいのではないでしょうか。これに応えるために高精細化を突き詰めて考えていくと、やっぱりLEDになってしまうと考えています。

 しかも、LEDは環境にもやさしい。通常、LEDにはガリウムヒ素が材料として使われますが、エピフィルムボンディング技術の製造でガリウムヒ素を使うのは基板だけ。基板は繰り返し使えるため、理論上ではガリウムヒ素の使用量が以前の700分の1で済みます。山まで行って材料を掘ってくる際に出るCO2も含めると、環境負荷を相当減らせるわけです。

 プリンターが小さくて部品点数が少ないこと自体も、作ることや運ぶこと、さらには回収することなどを考えると、環境負荷がとても小さいと言えると思います。


遠藤 ナノテク、エコテクと、トレンドの結晶ですね。エピフィルムボンディングは、プリンター以外のところでも活躍できそうです。

荻原 将来的には、液晶などを使ったディスプレーにくらべて薄型化しやすいメリットを生かし、小型ディスプレーやプロジェクターなどに応用できると考えています。


遠藤 将来有望な、面白い技術ですね。今日は長い時間、ありがとうございました。

ディスプレー

LEDを使った小型ディスプレー。向こうが透けて見える

プロジェクター

LEDの光で描いた「C」という文字をレンズで拡大して壁に表示したところ。この原理からプロジェクターが作れる



*協力:OKIデータ

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